各銀行が円と等価のJコインによる決済サービスを模索
みずほフィナンシャルグループは2017年7月10日にみずほ銀行とWil LLCと共同して仮想通貨による新しい決済プラットフォームの構築やAIやビッグデータを活用した事務作業の自動化に向けたソフトウェアの開発などを行なう会社としてBlue Lab社を設立することを発表しました。そして2017年9月17日にみずほ銀行やゆうちょ銀行そして横浜銀行や静岡銀行など70行による地銀連合が共同で仮想通貨の仮称Jコインを取り扱うことを発表し、既に海外ではアリババ集団や米アップル社などが決済サービスを提供している中で、東京オリンピックが開催される2020年までには日本の銀行でも連携して決済サービスを提供することになりました。
具体的にJコインは日本円と等価な仮想通貨となり、銀行の預金口座と繋げることで銀行間のやりとりや、個人や企業との決済などに利用していくことが可能となり、例えば個人がレストランなどで飲食を行なった代金の決済代行をJコインで行なったり、ネットで購入した代金などをスマホの専用アプリを使用することで支払ったり、個人間の送金をJコインで行なうことが出来るようになります。また三菱東京UFJ銀行では32社の地銀などと連携して2018年の春頃に一般公開することを目標に、2017年5月から独自の仮想通貨であるMUFGコインの実証実験を行なっていますが、この三菱東京UFJ銀行にもJコインへ参加の打診を行なっています。
既存の決済サービスとJコインとの3つの違い
最近になって人気が高まるにつれてビットコインによる決済サービスは広がりを続けていますが、ビットコイン自身が変動するために日本円との等価性に欠ける面がありましたが、Jコインは円と等価交換を行なうことが出来るため、Jコインが独自に変動することがないということが他の仮想通貨との違いになります。そしてEdy その他の電子マネーのようにスマホアプリを利用して円と等価で交換出来ることによってJコインによる決済を行なうことが出来るのも他の仮想通貨との違いになります。
Edy などの電子マネーとの違いは、例えば飲み会などの幹事がJコインで支払いを割り勘で行なったときに、その代金の支払いを手数料無料で幹事のJコイン口座に送金することが出来ることが電子マネーとの違いになります。そして現金で決済を行なう際、例えばクレジットカードの場合スキミングなどによって詐取される危険性もありますが、ブロックチェーンによって守られたスマホアプリを利用して決済を行なうために詐取などの盗難に合う危険性は限りなく低くなり、現金による決済よりは安全な決済を行なうことが出来る仮想通貨となり得ます。
銀行独自の仮想通貨が普及するには安全性や信頼性を確保出来るかがカギ
三菱東京UFJ銀行が実証実験を行っているMUFGコインや、その三菱東京UFJ銀行にも参加を打診しているみずほ銀行のJコインなど、メガバンクを中心にして各銀行がこのように独自の仮想通貨を発行して新しい決済サービスを提供する動きを行なっている理由には、ビットコインなどの仮想通貨で利用されているブロックチェーン技術の応用にあります。つまりブロックチェーンに決済や送金などの取引情報を記録することで改ざんを防ぐことが出来るため、盗難などの被害を受けるリスクが下がりその結果安全性や信頼性を確保することが出来ますし、1度システムを構築すると他の銀行との連携も楽に行なうことが可能となるためにコストの削減にもなり得ます。
ただメガバンクなどの銀行がブロックチェーンの可能性を感じているのに対して、過去に多量のビットコインが消失して破綻したマウントゴックスの事件が心理的に大きく影響を与えてしまい、一般的にはビットコインは怪しいとかビットコインは危ないというイメージがついてしまっていることも現実と言えます。そのためみずほ銀行や三菱東京UFJ銀行などが取り組んでいる独自の仮想通貨による決済サービスが成功するかは、現金の代用決済として信頼されているEdy などの電子マネーよりも、銀行が感じていると同等かそれ以上にブロックチェーンによる安全性や信頼性を得ることが出来るかにかかっているということが出来ます。