仮想通貨の値動きは株や為替に比べて大きく、現物取引のトレードであっても利益を出しやすいです。為替や株で大きな利益を出すために必要なほど投資資金を必要としないことが仮想通貨取引の魅力になっています。その分、損をするリスクも大きいわけですが、現物取引であれば資産がゼロよりマイナスになることはありません。
仮想通貨の取引に関して、漠然とリスクが高い印象をお持ちの方は、まず現物取引とFX(証拠金取引)の違いから把握してみてください。ありえるリスクとそうでないリスクを正確に把握することで、自分に適した投資方法、あるいはトレード手法を導き出すことが出来るようになります。
各仮想通貨取引所は、現物取引に加えて仮想通貨FX(証拠金取引)も用意しています。この2つの取引を混同することで、仮想通貨投資、あるいはトレードのリスクが不当に高いと感じやすいです。
仮想通貨の現物取引とは
仮想通貨を取引所で購入する際は、事前に口座に入金をする必要があります。その口座に入金した日本円でビットコインなどの仮想通貨を購入することができます。入金した日本円を仮想通貨に両替するわけですが、これを現物取引と呼んでいます。
反対に購入した仮想通貨を売ることも現物取引です。通常の買い物のように、お金と物品・サービスを交換するときと同じです。なぜ、わざわざ現物取引という呼び方をするかというと、仮想通貨取引所には証拠金取引という仕組みがあるからです。証拠金取引は現物取引とは違います。仮想通貨の証拠金取引の仕組みは、いわゆるFXと同じです。
証拠金取引では口座に入金した日本円で直接に仮想通貨を購入しません。口座にある日本円を担保にして取引所から仮想通貨を借り入れる形になります。借入額は、倍・3倍・5倍あるいは15倍などから選ぶことができます。実際の、つまり現物の資産を証拠金として前借りをして、賭け金を増やすわけです。レバレッジをかけるとも言います。かけれるレバレッジの上限は各取引所によって違います。
証拠金取引ではない、通常の購入方法を現物取引と覚えていただければ問題ありません。実際に買える以上の仮想通貨を借り入れることで、利益、あるいは損失が増えていきます。借り入れた仮想通貨を取引所に返済する際に利益や損失が確定します。
仮想通貨の現物取引のおすすめは長期保有
証拠金取引を利用すれば、より多くのお金を動かせるわけですから、現物取引ではなく証拠金取引でレバレッジを効かせた方が良い気がします。実際に仮想通貨FXは投資やトレードの対象として人気があります。しかし、利益を上げる可能性があるということは、その分損をしてしまう可能性もあるということです。トレードの勝率が上がってからレバレッジを効かせましょう。投資やトレードの経験が少ない方は、現物取引から始めることをおすすめします。
また長期保有をする際には必然的に現物取引で購入することになります。証拠金取引で借り入れた仮想通貨はあくまで、借り入れている仮想通貨なので、定められた期間内に返却する必要があるからです(借り入れた仮想通貨を返却することをポジションを解消するといいます)。なお、長期保有を前提に仮想通貨を購入するのならば、オフラインで管理できるペーパーウォレットハードウォレットを用意した方が良いかもしれません。
長期間、仮想通貨のまま資産を取引所に置いておくことはハッキングの可能性などを考えるとリスクが高いからです。現物取引で購入した仮想通貨なら違う仮想通貨取引所に送金したり、自分で用意したウォレットに移動させたりすることが自由にできます。
仮想通貨ならではの現物取引によるメリット
仮想通貨の現物取引をするメリットは、長期的な投資・短期的なトレード双方どちらを選んでもあります。長期的な投資を考えているのなら、そのメリットはより大きいと言えるでしょう。例えばビットコインを何年も前から保有していた人は、今かなりの資産を持っているはずです。2017年の初頭から考えても、ビットコインの値動きは十分に大きく、昨年末の最高額240万円を超えたあたりで売り抜けた人は1年間の保有だけでも資産が10倍以上になっているはずです。
ビットコインに限らず、いくつかの仮想通貨が今後2倍や3倍の値上がりをすることは十分に考えられます。対して、ドルやユーロなどの主要な外貨が、仮想通貨ほどの値上がりをすることは、ありえなくはないですが、考えにくいです。短期的なトレードでも、その値動きの大きさがメリットになります。
証拠金取引によるリスクを避けながら、大きな値動きの差分を狙えるわけです。例えば、ドル円の1円以下の動きに比べて仮想通貨の値動きは非常に大きいです。トレードになれていないにも関わらずレバレッジや証拠金維持率を気にしていては肝心のトレードに集中することは難しいでしょう。
仮想通貨は日本が発行する通貨ではないのでレート(対価格が変動します)が存在します。レートが存在することによって値動きの差分を儲けにできます。この仕組みは現物取引でも証拠金取引でも同じです。
仮想通貨の現物取引でのマイナスとは
仮想通貨を現物で購入したのなら、その仮想通貨が、どれだけ暴落しても持っている仮想通貨の保有量は変わりません。その仮想通貨が値下がりしたとしても、購入した仮想通貨が無くなったり、減ったりすることはないのです。仮想通貨を円換算して、購入時の価格より値下がりしていることはるでしょう。ですが、資産がゼロよりマイナスになることはありません。現物取引をしている限りは借金ができたり、購入した仮想通貨がなくなることはありません。
意外にも、仮想通貨が暴落すると借金ができるのではないかと勘違いしている人もいるようです。そんなことはなく、それはあくまで日本円やドルに対して値下がりしただけです。購入した仮想通貨は使わない限りいつまでもウォレットの中にあります。あくまで、現物取引で購入した仮想通貨は所有者のものであり、価値が下がっても所有権は動きません。やはり、証拠金取引と現物取引の違いを正しく理解しなければ起こる勘違いです。
逆に、証拠金取引を短期的に借金をしている状態と捉えることもできます。状況によっては元々の資産がゼロになり、さらにマイナスの資産、つまり借金ができることもあります。ただ、それを避けるために各仮想通貨取引所には強制ロスカットという制度があります。
仮想通貨の現物取引で強制ロスカットはない
現物取引では強制的にロスカットされることはありません。また、ロスカットの訳は「損切り」ですが、実際に使用される際には違ったニュアンスで使われているようです。「損切り」というのは含み損を抱えたまま、それ以上の損失を抑えるために決済(現物取引の場合は売る)、あるいは証拠金取引のポジションを解消することをいいます。トレードの際にはこの「損切り」が非常に重要なのですが、証拠金取引の場合、先に述べたように「損切り」が強制的に行われることがあります。
証拠金の維持率が、取引所の定める規定数値より下回った場合に自動的にロスカットが発動します。これは、証拠金取引に参加するトレーダーを守るための施策でもあり、取引所が貸し出した資産を確実に回収するための仕組みでもあります。
この強制的な「損切り」のことを「ロスカット」と呼ぶ人が多いため、通常の「ロスカット」つまり、自主的な「ロスカット」のことを「損切り」と呼び分けていることがあります。海外のトレード情報サイトなどでは自主的な損切りのことをロスカットと呼びます。
定義を一応明確にしておくと、ロスカットとは損切りのことであり、証拠金取引の場合は強制的にロスカットされることがある、となります。現物取引の場合は自分でロスカット(損切り)の設定をして損失を拡大させないことが重要になってきます。