小さな暴落を繰り返しながらも全体としては大成長を見せた2017年とは打って変わって、年始の大暴落から、小規模な上下動を繰り返しながらも全体としては低迷しているのが2018年の仮想通貨全体の市況です。このような相場だと、長期的に積み立てて「ガチホ」するよりも、ある程度短期的なスパンでの相場に乗るような、短期売買を行った方が利益を取ることができるのではないかという考え方ができるかと思います。そんな仮想通貨の短期売買について、メリットやデメリット・リスク、更には市場に与える影響について考察し、その上で、仮想通貨売買とどうか関わろうかというスタンスが曖昧な方にとっては一つの仮想通貨売買の判断材料を提供しようと思います。
仮想通貨の短期売買とは
短期売買とは、買った仮想通貨を少しの値動きで手放すこと、もしくは、「空売り」を行った少しの値動きで買い戻すことを指します。期間としては、最短でその日のうちです。最小のスタンスは人によって異なりますが、仮想通貨の売買は長くても数週間程度です。株で言うと、デイトレードからスイングトレードといった手法にあたります。仮想通貨取引所によっては、FXや株と同様にレバレッジ取引で売買を行うことができます。
仮想通貨の短期売買におけるメリット
まず、仮想通貨の短期売買を行うことのメリットを解説していきます。単純に言えば、「資金効率」が良いという点に集約されます。
① 短期的に莫大な資金を稼げる可能性がある
長期的に保有している場合、その評価額は上がったり下がったりしながら現在は低迷、といったところですが短期での売買が上手くいった場合は突発的な上昇、下落を利用して利益を得るだけでなく小さな上下動でも少しずつ売買して勝ちを積み重ねていくことができるので、短期的に資産を増やすことができます。
② 小資本でも、大きなリターンを得られる可能性がある
仮想通貨トレードでは大きなレバレッジをかけて売買を行うことができます。そのため原資があまりなくても、一度の売買で成功すれば大きなリターンを得ることができます。仮想通貨は時に大きな動きをするため、タイミングよくレバレッジ取引をすると、その時のリターンはかなり大きなものになります。
仮想通貨の短期売買におけるデメリット
次に、仮想通貨短期売買のデメリットを解説します。結論を先取りすると、メリットにあったリターンの大きさを逆から見たリスクの大きさに加え、「税金」の問題がでてきます。
① 短期的に莫大な資金を失う可能性がある
短期的な売買で大きなリターンが得られるということは、逆から言うと短期的に資金を失う可能性があるということです。とりわけ、短期的な売買は勝っている人がいる一方で同じ金額負けている人がいるゼロサムゲームなので、自分が負けている側に回る可能性も常に存在します。
② レバレッジをかけすぎていると、一度の負けが致命的になる可能性がある
こちらも、レバレッジ取引で大きなリターンを得られること真逆なのですが、高いレバレッジで行った取引で思惑と真逆に大きく動いた場合、その損失は計り知れないものとなります。とりわけ、仮想通貨は暴騰、暴落するときの値動きが時には非常に大きいため、高いレバレッジをかけることはリスクになりえます。
③ 売買益すべてが課税対象になる
仮想通貨は、2017年、課税対象として明確に規定されました。現在は雑所得に分類され、利益確定した金額によりますが、最大で45%というとてつもなく高い税率での課税対象です。売買で得た利益とは仮想通貨と法定通貨をやりとりして得た利益だけでなく、仮想通貨同士の売買であっても、そこで利益を確定していると、課税対象となってしまいます。
取引所のアカウントは厳格な本人確認のもとに、個人にしっかりと紐づいているため、国税は個人の仮想通貨の利益確定額をしっかりと把握しているため、「知らなかった」で済ますわけには行きません。放っておけば、じきに他国のような税率にさがるかもしれないですが、現在短期売買で得た仮想通貨の利益というのは即座に高額の課税対象として積みあがっていきます。常に勝って仮想通貨の保有量を大きく増やし続けられるのであれば、短期売買も悪くはないかもしれませんが、必ずしも大きく増えているわけでなければ、将来的な仮想通貨の税率次第にはなりますが、放置しておくのと最終的には結果はかわならないかもしれません。
仮想通貨の短期売買が市場全体に与える影響
個人にとってのメリット、デメリットを上げてみましたが、改めて仮想通貨市場全体に対して与える影響についても考察していきます。結論としては
① 短期的に異常な値動きを起こしやすい
② 「上値」が重くなる
といったことが言えます。
①についてですが、2017年末、ビットコインの価格がついに100万円を超えた、という段階から100万円台後半、さらには200万円台といった水準に到達するまでの期間はそれまでの上昇率と比較すると異常ともいえるものでした。その要因の一つが、ハイレバレッジでの大きな資金の取引が行われた結果としての暴騰であったとの見方があります。市場に投入される資金量が実際の元本に比べて大きくなるため、価格変動が起こりやすくなります。
その結果として②の現象が生じてきます。200万円、240万円といった価格がつくということは、誰かがその金額で買ったということです。既に損切している可能性もありますが、投資経験の浅い投資家の取りがちな行動として買った値段まで戻ってきたら売る、というものがあります。とりわけ、仮想通貨から投資の世界に入ってきたというプレーヤーも少なくありませんから、その傾向は強いと言えるでしょう。
結果として、ある程度価格が戻ったところで、その水準で高値掴みし、塩漬けにしていた投資家たちが自分の買った値段で一斉に売り始めるため、その水準を超えて上昇するのが難しくなりがちです。この現象は短期的に暴騰すればするだけ、起こりやすくなります。現在、大きく下落した後、100万円を超えたのは4月中旬の一時期だけですので、大量の「塩漬け」ホルダーが回復を待っていることが予測されます。
あまりに短期的に上がりすぎた場合、その水準を超えて上昇していくのはかえって難しくなりがちです。年末の大暴騰の中で、このペースで上がり続けることを夢見ている、バブル状態であったプレーヤーも少なくないかもしれませんが、あのペースでの上昇が起きた結果が現在の長い低迷であるとも言えます。長期的な上昇を望むのであれば、短期的な過度の上昇は逆にその成長の妨げになりうることは念頭に置いた方がよいでしょう。
仮想通貨の短期売買を長期で投資を行いたい場合
仮想通貨とどう付き合うか、「投資」対象とみるか、「投機」対象とみるかは人によってそれぞれです。どちらが良い、悪い、ということではないですが、大切なのはご自身のスタンスがどちらなのかということを明確にしておくということです。
投機対象とみるのであれば、短期売買を繰り返すのも、そのリスクや制約を理解した上でやるのであれば、何も否定できるものではありません。それによって、短期的に莫大な資産を手にできる可能性もあります。
しかし、もし長期投資の対象として仮想通貨を考えているのであれば、短期売買の世界に参入するのはかえってご自身の未来の利益をひっ迫することになりかねません。仮想通貨の価格の上値を押さえつけ、成長スピードを落とすのは、短期売買による暴騰に他なりません。今一度、仮想通貨がどのようなものなのか、それに対して自身がどのように付き合いたいのか、ということを見直した上で、改めてスタンスを見つめなおしてみるのもよいかもしれません。