10月や11月にもビットコインの高騰に関連した記事が多数散見され、これをバブルと評するジャーナリストも少なくありませんでした。
2017年スタート時からBTCのレートは12月初旬でも15、6倍に
そして12月も引き続きは相変わらずの高騰ぶりを博したビットコイン。この活況をバブルだとする向きは少ないようです。現在12月某日(前半)では少し落ち着きを取り戻していますが、何しろ12月9日には対円レートで200万円越えを経験しています。現在でも160万円前後で推移しているのですが、冷静に見たら2017年スタート時点から考えると15、6倍にもなっています。とても「少し落ち着きを取り戻して」いるというレベルではありません。
怒られるかもしれませんが、ビットコインが2017年に好調に推移しているのは、仮想通貨の発展途上国の日本でも、ようやくビットコインが認知されてきたことを、身近なところでまず触れなければなりません。法整備という面では、昨年の5月に仮想通貨法が国会で可決され、2017年4月に法律が施行。これでようやく我が国でも、仮想通貨が一般の人々にも受け入られる下地が整います。またこれまでビットコインに懐疑的だったネット利用者にも「遅れ気味の」ビットコインフリークが現れ、さらビットコインFXに参加する者も確実に増えました。
ただバブルの要因はそれが全てとは言いませんし、もちろん仮想通貨は日本だけのものでもありません。同時期を振り返ると、米国をはじめ英国やフランスなどでも国のトップが立て続けに入れ替わり、新たなところで北朝鮮問題や中東やエルサレム問題が常に緊張状態を強いています。こうした世界的な情勢不安は結果的に、仮想通貨にとってはプラスに働きます。しかし何故これだけの投機マネーがビットコインに集まったのかは分かりません。ただ少なくとも言えることは、2016年から2017年に掛けて、これまでくすぶり続けた問題が、ひとつひとつ明らかになってきたのは確かです。
バブルと判断するにはBTCが選んだ方向性が正しいか確かめるのが早い
仮に今現在のビットコインがバブルだとすれば、こうした活況は何ら実態を伴わないことが分かるはずです。ビットコインの盛況ぶりをバブルと受け止めるか否かは、BTC自体が選択した方向性が正しいか、それとも誤りだったかをまず確かめる必要があります。
2017年にBTCが行なったイベントに、8月と11月の分裂問題があります。これは8月に本家と暖簾分けを果たしたビットコインキャッシュ(BCH)に関する記事(【ブロックサイズを8MBまで広げたビットコインキャッシュ】マイナーが生かされる仕様を詰め込んだ仮想通貨とは?)でも触れていますが、「ブロックサイズ問題」にどのような決着をつけるかが争点でした。「ブロックサイズ問題」はビットコインの中でも懸案で、従来の1MBという容量では小さすぎることから、サイズアップに踏み切る決断をマイナーを中心とする「アンリミテッド派」から迫られていました。しかし「コア派」であるBTCの開発者はSegwitという新しい技術を付加する方向性を提案します。
結果的に8月1日に「コア派」はSegwitを選択。そして24日には早くもビットコインのシステムにSegwitの実装を完了させます。同じく8月1日には、中国の新興マイニングプール「ViaBTC」が中心となって、ビットコインキャッシュをビットコインからハードフォークすると発表。なお「コア派」が選択したSegwitとは、署名を省くことで取引に関する記述スペースを増やす技術のこと。これでビットコインが抱える「ブロックサイズ問題」に一応の解を与えると踏んだのです。
「ブロックサイズ問題」以外に抱えるビットコインの問題って何?
ただビットコインが抱えていたのは「ブロックサイズ問題」だけではありません。決済手段としてBTCのメリットと言われてきた安い送金手数料。この高騰も喫緊に解決が迫られていること。ビットコインは少なくとも2016年初頭まで、安価に海外送金できる仮想通貨でした。今では銀行で送金するより値が高くなってしまいましたが、その原因はビットコイン自体の値上がりにあります。
BTC自体の値上がりが原因である以上、手数料の高騰はある意味では仕方ないのですが、海外送金が安く行えるのがBTCの魅力であることを経験している人にとっては、BTC離れを引き起こす要因でもあり、高騰の回避は重要な懸案です。
ビットコインは本来ユーザーが手数料を決めており、時間がかかっても構わない送金は、極端に言うと手数料をゼロにしても送れていた時代もありました。ところが送金が増えてくると、マイナーは手数料の高い事案にばかり集まります。そしてビットコインの送金にも混雑が生じはじめ、処理能力が手数料を決めるようになっていきました。これも広い意味で「ブロックサイズの問題」です。
ビットコインはSegwitを選択している
しかしこの解決にもSegwitの技術がどうしても外せないことが分かっています。ただ、その説明の前にライトニングネットワーク(Lightnig Network)について簡単に触れさせてください。
ライトニングネットワークとは、ビットコインのブロックサイズに関係なく取引を可能にする技術で、手数料を安くしたり、送金スピードを上げたり、あるいは少額送金にも応用できるなど、様々なメリットもたらします。ただし、ライトニングネットワークは今まさに開発中の技術ということもあり、本格的な運用はこれからなのです。また、ライトニングネットワークはブロックの外で行われる技術という側面があります。そのため、この技術を応用しても、ブロックチェーンを採掘するマイナーに手数料が入らなくなり、ビットコインの数が減りマイナーが減少することも考えられます。
ライトニングネットワークの明るい面と暗い面を一気に紹介しましたが、ライトニングネットワークはこれからの技術であり、何もビットコインに拘って展開していくことはないかもしれません。またマイナーの手数料を考えるより、もっと明るい面に期待して育てたい技術でもあります。なお冒頭でも触れたとおり、ライトニングネットワークはSegwitの技術が必要なことが分かっています。BTCはSegwitを選んでいるため、2017年に選択した方向性は間違ってはいなかったことになります。現在ビットコインが呈している活況は、バブルと決めつけなくても良さそうです。
ライトニングネットワークについてもう少し
ライトニングネットワーク(Lightnig Network)についてはまた別の機会に改めて言及しますが、その展望について付け加えるなら、この技術はウェブコンテンツの有料配信などにも使えるなど非常に多彩なものです。ライトニングネットワークとは違うのですが、似たような技術を用いて「少額頻度取引」を実現している試みがあります(SatoshiPay)。もちろんSegwitの導入でこれらは可能ですが、前項で「何もビットコインに拘って展開していくことはない」と言ったのは、まさに「SatoshiPay」のことを言ったわけです。
ライトニングネットワークを用いてマイクロペイメントが使えるようになると、ウェブコンテンツの有料配信がワードプレス(Wordpress)で行えます(すでにSatoshiPayでは行われています)。そうなると広告に左右されない高品質なコンテンツを作れますし、本格的な小説や音楽コンテンツも、今まで以上自在に扱える世界が目の前に広がっています。ただ先ほども言いましたが、ライトニングネットワーク開発中であり実験中の技術で、ビットコインで使えるようになるかはまだ不透明な部分もあります。とにかく今は短絡的にならず、ビットコインを育て、見守り続ける必要があるでしょう。