ビットコインゴールド(BTG)はビットコインキャッシュに次いでリリースされたフォークコインです。はじめの告知では10月25日に分岐され、11月1日に正式に稼働する予定でしたが、約2週間遅れで日本時間では11月13日の午前4時に正式にリリースされました。

スタートダッシュにも出遅れたビットコインゴールド

プレマインが気懸りなビットコインゴールドの行方2017年はビットコインが分裂に揺れた年でもありました。

まず8月の分裂騒動ではビットコインキャッシュが分裂しながらも、ニューヨーク合意でSegwit2xの成立があり、結局Segwitをビットコインに実装することで騒動は収束します。しかし11月に分裂するとみられていたSegwit2xのハードフォークは中止を発表することに。Segwit2xのハードフォークとは、Segwitを実装させた後、ブロックサイズを大きくしていこうというもの。このハードフォークは、Segwit機能を実装後、ある意味段階的に進められると「アンリミテッド派(マイナーを中心に形成されたグループ)」は思っていたかもしれません。

しかし「コア派(ビットコインの運営・開発を担うグループ)」のメンバーがそう簡単にSegwit2xのハードフォークを認めるわけもありません。なぜなら、安易にブロックサイズの大きくすることが、サトシ・ナカモトが手がけたビットコインの世界観を守ることにはならないからです。むしろSegwit2xのハードフォークは最初からないと決まっていたとの見方もあります。12月のビットコインのレートがバブルと見間違うほどの勢いをみせているのは、このハードフォークを中止したからに他ならないとも言われています。

ただそれはともかくとして、新たなフォークコインとしてビットコインゴールドが誕生したのは、BCHとは違うニュアンスを感じます。ビットコインゴールドはビットコインを取り巻くブロックサイズ問題とも、全く関係ないと考えるほどです。

ビットコインゴールドの誕生の理由

そもそもビットコインゴールドが生まれたのは、どのような経緯からなのでしょう? ビットコインゴールドは、香港のマイニンググループであるLightningASICが主導したようです。そしてビットコインゴールドではマイニングに特徴があります。BTGはGPUマイニングを目指しています。そのためBTGは、ビットコインで使われる「SHA26」を止め、一般人もマイニングに参加できる「Equihash」をアルゴリズムに使っています。実は現在のビットコインのマイニングは、ASIC(エーシック)というマイニング専用の用デバイスを使い、個人ではなくプールと呼ばれるグループに参加しないと収益を上げることは事実上不可能になっています。つまり、マイニングにはASICは欠かせないツールなのです。

しかしLightningASICがビットコインゴールドで目指す世界は、ASICの利用を禁じ、それ以前に使われていたGPUマイニングを使用するというもの。GPUは3Dの画像描画処理に使われていた技術で、身近なものではゲームなどで欠かせないものとして有名です。GPUマイニングは複数のスレッドを立て同時に計算処理を進めるのですが、ASICほど特定用途に作らてはいないものの、それ以前のCPUマイニングより計算を効率的に行えます。

ただビットコインゴールドで目指すのは、膨大な資金力が特定のマイニングプールに集中しない世界観があります。ASICマイニングでは、とかく資金がある者だけに権限が集まり、ビットコインが本来避けたい中央主権的な力に管理される姿に近づきます。現実にそれに近い世界が展開されているとしたら、それは言い過ぎでしょうか?

ビットコインゴールドはブロックサイズも選べる

アルゴリズムにEquihashを採用し、GPUマイニングがウリのBTGとはまた、さらにこの状態が進むと考えてみてください。そこには、権力が集中することで生じるマイニング力を利用した攻撃が起こり得るはずです。最近では、取り立て心配されなくなりましたが「51%攻撃」もそのひとつです。「51%攻撃」は、過半数以上の演算能力を悪意のある特定のグループが所有することで、そのグループはマイニングをコントロールできるようになるというもの。確かにひとつのマイニングプールが過半数を占めることは不可能ですが、複数のプールが連立で結託し、そして過半数を握ることは十分可能です。

ところで、マイニングによる収益の集中化を避けるという世界観を持って作られたビットコインゴールドですが、このフォークコインはブロックサイズを自由に選べるUAHF(User-Activated Hard Fork)も実装しています。BTGは一般人のマイニングに参加を促すだけにとどまらず、ビットコインの最大の問題点でもあったブロック問題にも道をつけました。

ただビットコインゴールドは、ある意味でとても有望な展望も見せながら、BTGは結局ビットコインキャッシュほどのコミュニティを形成できませんでした。その要因のひとつに開発者によるプレマインがあると言われています。

ビットコインゴールドに潜むプレマインの謎

プレマインとはプレマイニングとも言われるもので、別に取り立てて悪いことではありません。どのような仕組みを持つのかと言うと、プレマインは仮想通貨のマイニングが公開される前に、開発者自身やデベロッパーに当たる人たちが、新規発行通貨を受け取ります。

これまで新規発行された仮想通貨は、開発者自身やデベロッパーらが優先的にプレマインを受け取ってきました。またアーリーアダプターらに紹介を受け、早期に通貨を受け取ることも仮想通貨ではよく行われます。これは一種のインセンティブに該当し、仮想通貨を広める手段も担うものです。ただしプレマインが目的になると、正直あまり良い見方はされません。特に仮想通貨のように、非中央集権的な思想が根底にある場合はなおさらでしょう。

ビットコインゴールドは、16,000ブロックのプレマインがあり、その結果20万ものBTGが開発者の手元に渡ると分かっていましたが、この場合はビットコインゴールドの運営・開発が、お金儲けのために行われていると疑われても仕方がありません。少なくとも、ビットコインゴールドはそのように思われているフシがあり、なんのためのハードフォークだったのか、いまひとつ釈然としない部分が確かにありました。たとえば、出だしで見せた肩透かしを誘うような無意味なスタートアップや取引所の対応、どっちに転ぶかわからない付与予定等々、挙げていけばキリがありません。

互いに足を引っ張るアルトコインだけにはならないようにしたい

ただ結論を出すのは早すぎるかもしれません。正式リリースから1か月も経ってはいないからです。しかし同じ分家コインのビットコインキャッシュと比較すると、期待値はかなり少なく見積もらなければなりません。それでも同じビットコインから派生したフォークコインですから、別物であったとしてもお互いの足を引っ張るアルトコインと呼ばれたくはありませんし、本家のオリジナルのほうでも同じ気持ちのはずです。

例えばビットコインゴールドで問題が起きた場合は、ビットコインのレートに影響を及ぼすことが考えられます。足を引っ張るとはそういうことです。しかし2つのコインにハードフォークされても、結果的にビットコインのレートは順調すぎるほど順調です。今年は果たしていくらで終わるか、じっくり見届けてみるつもりです。