価格・人気が高まっているビットコインキャッシュとは?

ビットコインキャッシュの価格上昇ビットコインキャッシュ(BCH)は、2017年8月1日にビットコイン(BTC)が初めてハードフォーク(分岐)して生まれたオルトコインです。仮想通貨はビットコインとその他のオルトコインに大きく分けられますが、オルトコインの中でもビットコインキャッシュ(BCH)の人気と価値は非常に高くなっています。

ビットコインキャッシュは11月時点の時価総額においても、圧倒的トップのビットコイン(約16兆円以上)に続く第二位(約3兆円以上)の仮想通貨であり、長らくオルトコインの王者であったイーサリアム(ETH)を抜き去ったことでも話題になりました。ビットコインキャッシュの価格は11~12月に最高20万円超にまで高騰しましたが、現在17~19万円前後で推移していて、8~9月の3倍近くまで値上がりしたことになります。

ビットコインから分岐したビットコインキャッシュがどのような仮想通貨であるのか、具体的にはよく知らない人も多いと思います。簡単に説明すれば、ビットコインキャッシュとはビットコインの長年の懸念である「スケーラビリティー問題(ブロックサイズ問題)」を解決したブロックサイズが大きな仮想通貨なのです。

ビットコインの「ブロックチェーン(取引記録の分散台帳システム)」が、ハードフォーク(互換性のない分岐)しなければならなかったそもそもの理由が、「ビットコインの1ブロックの容量(1MB)」が小さすぎて、送金など取引処理の能力が追いつかなくなってきたというスケーラビリティー問題でした。ビットコインは、1ブロック形成の約10分間で「数千件程度」の取引処理能力しかなく、利用者急増によって「取引時間(送金時間)の遅さ・送金手数料の高さ」の問題がでてきました。

この解決策として出てきたのが「開発陣営のSegWit(ブロック内のデータ量削減)」と「マイナー陣営のビッグブロックサイズ(ブロック容量の拡張)」であり、ブロックサイズが大容量(8MB)のビットコインキャッシュは後者の解決策を取ったオルトコインなのです。

仮想通貨市場の基軸通貨ビットコインとオルトコイン

現時点ではビットコイン(BTC)こそが仮想通貨市場の基軸通貨であり、すべての仮想通貨の取引が「ビットコイン換算(BCH/BTC、ETH/BTC、XRP/BTCなど)」を前提にして行われているといっても過言ではありません。ビットコインは為替市場における「米ドル」以上に、仮想通貨市場における影響力と占有率が大きいのです。日本の大手仮想通貨取引所でも、ビットコインでオルトコインを買ったり、オルトコインでビットコインを買ったりするためのアプリやサイトの仕様が組み込まれていますが、「オルトコイン同士の売買」が初期の仕様でスムーズにできるようになっている仮想通貨取引所はほとんどありません。

その理由は、やはりビットコイン(BTC)が「仮想通貨市場の基軸通貨」であることと関係していて、「最終的にビットコインを保有したい仮想通貨投資家・値上がりしたオルトコインで安値のビットコインを買って増やしたい仮想通貨投資家」が圧倒的に多いからなのです。値上がりの利益を期待して、まだ安いオルトコインそのものを増やしたい仮想通貨投資家はもちろんいますが、大半の仮想通貨投資家は最終的には価格の上がったオルトコインを、信用力と汎用性の高いビットコインに交換することを考えているでしょう。

仮想通貨の中で最初に開発されて流通したビットコインの知名度が圧倒的に高いこともありますが、ビットコインには「仮想通貨以外の商品・サービスとも交換できる交換価値」があるというのも大きいです。現実世界の店舗でも、ビットコインでの支払い(決済)を受け付けてくれるお店が増えています。

しかし、仮想通貨としては価値の高いビットコインキャッシュやイーサリアムでも、仮想通貨を決済手段として使える場所・店舗がほとんどないのです。オルトコインは現状では「投機の対象(仮想通貨・法定通貨と交換できる媒体)」以上のものではなく、ビットコインと比べると「使用価値=投機以外の汎用性」の上で見劣りがしてしまいます。

ビットコインキャッシュの11月からの価格高騰とSegWit2X延期の影響

仮想通貨市場の基軸通貨ビットコインを追撃するビットコインキャッシュビットコインキャッシュ(BCH)の価格高騰は、11月半ばのビットコイン(BTC)の「SegWit2Xの実装の延期」によって起こりました。ビットコインにとってSegWit2Xの実装は「ブロックチェーンの正当性」を巡る内部対立の側面があり、非常に重要なハードフォーク(分岐)になってきます。しかし、仮想通貨市場はビットコインから分裂するオルトコイン(B2X)が無償で配布されるメリットの方にばかり注目していたので、SegWit2Xが延期されると分かると途端にビットコインへの投機マネーを引き上げて、BCHを積極的に買い始めたのでした。これが11月半ばの20万円に迫るBCH急騰の一因になったのです。仮想通貨市場の投機マネーに、BTCとBCHの間を行ったり来たりする傾向が見られるようになっています。ビットコインについてハードフォーク(分裂)の予定やCMEのビットコイン先物取引といったポジティブなニュースが流れると、ビットコインに投機マネーが集中しやすくなります。

反対に、SegWit2X延期やBCHのハードフォークのような「ビットコインキャッシュに有利なニュース」が流れると、BCHの方にBTCから投機マネーが逆流しやすいのです。SegWit2Xの実装によって誕生する新仮想通貨「B2X(仮称)」には、イーサリアム(新仮想通貨)がイーサリアムクラシック(旧仮想通貨)からブロックチェーンの正当性を奪い取ったような「新旧交代劇」を引き起こす可能性があるとも伝えられています。そのため、SegWit2Xによるハードフォークが、ビットコイン(BTC)本体の価値を引き上げるかは極めて不透明な状況であると言わざるを得ないのです。

ビットコインキャッシュはビットコインよりも優れた機能を持つ仮想通貨なのか?

ビットコイン(BTC)は利用者の増加によって発生した「スケーラビリティー問題(ブロックサイズ問題)」を解決するために、SegWit2X(B2X)をいずれは導入しようとしています。SegWit2Xの延期によって、BTCのブロックチェーン分裂を巡る混乱は回避されましたが、「取引処理に時間がかかり過ぎる・送金処理に時間がかかり過ぎる・送金手数料が高騰している」というBTCが抱える大元のスケーラビリティー問題は現在も続いているのです。

事業者・マイナー陣営が「ニューヨーク合意(2017年5月23日)」をしたSegWit2Xとは、「SegWit(1ブロック内のデータ量削減)+ブロックサイズ拡大(2MB)」を組み合わせたものですが、8MBのビットコインキャッシュ(BCH)であれば、すでにブロックサイズ拡大を十分な容量の獲得によってやり終えているではないかという意見が多いのも事実です。8MBのビッグブロックサイズであるビットコインキャッシュ(BCH)は、1MBの取引処理能力の低いビットコイン(BTC)よりも機能的に格段に優れているのだから、近い将来、BCHの方がBTCよりも価格が高くなるのが必然の帰結であるという予測も出されています。

仮想通貨の取引処理機能(ブロックサイズ)の比較から、BCHの将来価値に期待する仮想通貨投資家・マイナーは多くいて、積極的にBCHに投資を続けています。しかし実際の価格は機能面の高低だけで決まるわけではなく、「市場の需給+マイナーのマイニング選好(どの仮想通貨を重点的に採掘して取引処理を手伝うか)」によって決まってきます。

ビットコインキャッシュがビットコインに取って代わる可能性

仮想通貨の取引処理能力の高さだけを追求するのであれば、「SegWit8X以上(8MB以上のビッグブロック+SegWitによるデータ量スリム化の組み合わせ)」の実装によって、ビットコインキャッシュ(BCH)以上の「スーパー仮想通貨」を作れるという話にもなりますが、現実には上記したように単なる機能向上だけで仮想通貨の価格が決まるわけではないのが難しい所です。しかしビットコインの「未承認トランザクション」が増えてきており、送金処理に時間とコストがかかるようになっていることは問題で、BCHの持つ無料に近い送金手数料で即座に送金ができるというメリットが目立つようになってきています。

ビットコインキャッシュ開発主導者のジハン・ウー氏(中国の大手マイニング集団ViaBTCの運営者)が、BCHに関する発言の頻度を高めていて、「ビットコインキャッシュが本当のビットコインである」という発言をしたことで、一時的にBCHの価格が急騰しました。世界最大のマイニング集団ViaBTC(Bitmain)は、ビットコインのハッシュレートの約20%を占めており、BTC市場やBTCの送金機能(ブロックチェーンの追記速度)に対して非常に大きな影響力を持っています。

BTCとBCHには採掘難易度(ディフィカルティー)の自動調整機能が付いていますが、大手マイナーがどちらを重点的に採掘して追認するかで、ブロックチェーン形成のスムーズさ(送金機能)が大きく変わってくるのです。11月半ばにはBTCとBCHのハッシュレート(マイニングのためのマシンパワー総量)が一時的に逆転したことが話題になり、BCHのBTCに対するマイニングでの優位性が報じられたりもしました。

ビットコインキャッシュ推進派のマイナーが、ハッシュパワーでビットコインを追撃している図式が浮かび上がってきますが、現状ではまだまだ100~130万円以上の高騰が続いているビットコインをマイニングしているマイナーが大幅に減る事態は考えにくいでしょう。ビットコインキャッシュの値上げ要因として、BCHのハードフォーク(11月14日)によるビットコインキャッシュ・クラシック(仮称)誕生もありましたが、フォーク後の価格上昇は限定的でした。2018年度以降も、「ビットコインキャッシュがビットコインに取って代わる可能性」も含め、「BTCとBCHの価格競争・性能競争」に注目していく必要がありそうです。