Steamでビットコインのサポートが終了

2017年12月6日(米国時間)、PCゲームなどを販売するプラットフォームの「Steam」において、ビットコインでの支払いサポートが終了されました。背景にはビットコインの価格高騰、それに伴う決済処理手数料の高騰があるとされています。さらにSteamを運営するValveは、この高い決済処理手数料が、将来ビットコインの価値が急落した際に問題となることも明言しました。

ビットコインの価格乱高下はSteamでの決済処理を不安定に

Steamでビットコインの支払いサポートが終了された理由の1つ目は、あまりに価値が変動しすぎることによる決済処理の不安定さです。今、仮想通貨が空前の話題となっているのは、ビットコインの価値が急上昇していることが大きな理由です。これで仮想通貨が有名になって取扱店は増えると思われたのですが、むしろこの価格の乱高下は「仮想通貨が決済で使われづらくなる」原因となっています。

例えば、3,000円する品物Aを買おうとした時に1ビットコインを持っていて、価値はちょうど3,000円だったとしましょう。そこで、Aを買うために1ビットコインを支払おうとするのですが、まさに決済している途中でビットコインの価値が2,000円まで急落してしまったとします。すると、3,000円を支払ったつもりが2,000円しか支払われていないことになり、残りの1,000円を追加で請求されることになってしまうのです。

これは現実問題として頻繁に発生しており、追加の支払いを求められるケースは跡を絶ちませんでした。さらには決済処理の際に必要な手数料さえも追加で取られるため、このようなケースでは何度も手数料を取られてしまうという事態が頻発しました。

2017年に入ってビットコインが話題となり、たくさんの人が売買するようになった結果、決済して取引する際の処理が間に合っていないことも、この問題を加速させています。最近では、なんと1つの取引を処理するのに数日かかってしまうケースも報告されています。つまり現在の状況というのは、「決済中にビットコインの価値が落ちて支払えなかった」ということが簡単に起こり得てしまうほど危険なレベルに達しているのです。

ビットコインの利用者が増えて決済処理手数料も急騰

ここ1年ほどのビットコイン急騰は、同時に決済処理手数料の急騰にも繋がりました。Steamでビットコインが使えるようになった2016年4月には20円ほどだった手数料も、最近では2,000円ほどと100倍近く跳ね上がってしまっているのです。

なにもビットコインで支払う時の手数料が高いのは、Steamだけではありません。どの取引所を通して利用するかなどにもよりますが、ビットコインが使えるお店で手数料を数百円ほど取られるのは、今や決して珍しいことでもないのです。

その根本的な原因は、利用者が増えすぎて決済処理が間に合っていないことにあります。先ほども言いましたように、現在では決済処理に数日を要することもあるほどです。このペースでビットコインを利用されると、そのうち処理に1ヶ月以上かかるようになりかねないので、手数料を高くすることで利用される頻度を落とし、決済処理に余裕を持たせようとしているのです。

例えばSteamで販売されているゲームなどの商品は、ほとんどが数百円~数千円ほどの価格となっています。それに対して2,000円の手数料を支払っていたのでは、商品より手数料のほうが高くなる可能性があります。このような状況下で、ビットコインを使ってSteamで買い物をしようとは多くの人が考えないので、ビットコインの利用率は下がっていくわけです。

これら2つの問題が組み合わさってしまうと最悪の事態に

ビットコインの価格乱高下がなぜこの結果を招いたのか最悪なのは、ここまで手数料が高くなった状態で、ビットコインの価値が暴落していったときです。ビットコインの価値が暴落してしまうと、決済の時に必要な金額を支払えなくなることがあります。足りない分の料金は追加で請求されるうえ、その度に手数料を取られることもあるというのは、先ほども書いた通り。そして、何度も取られる可能性のある手数料は跳ね上がっているのです。つまり、たった1つの商品を買うだけで、極端に高い手数料を何度も支払わされる危険性が出てしまいます。

そうなってしまうと、支払い額が足りない→手数料も含めて残額を支払う→支払い額が足りない、といったループに陥りかねません。ついには、持ち合わせのビットコインで支払うことができなくなる可能性もあるでしょう。それを避けるためにも、ValveはSteamでのビットコイン支払いサポート終了を決断したと思われます。

ビットコインが支払い方法として再サポートされる可能性

今回の件を機に、ビットコインが仮想”通貨”としての立場を失っていくのでは、と懸念する声も上がっていますが、まだまだどうなるかは判りません。特に、今起こっている価値の乱高下はどちらかと言えば異常なもので、しばらく月日が経てば安定していくと見られています。市場での価値が安定すれば、いよいよ本格的に通貨として使えるようになってくるはずです。

Valveもこの点については言及していて、将来的にビットコインを支払い方法として、再び採用する可能性が決して0ではないと明言されています。法外とも思える手数料と、異常なまでに時間のかかる決済取引が改善されれば、支払い方法として見なおされることでしょう。

これからビットコインは通貨として場所を問わず使えるようになるか

今回のSteamにかかわる部分だけでなく、まだまだビットコインは仮想通貨として多くの問題を抱えていますが、徐々に解決されつつあるのもまた事実です。例えば最近では、アトミックスワップやライトニングネットワークという技術が注目されています。まずアトミックスワップは、持っている仮想通貨を別の仮想通貨へ自由に交換できる技術のことです。既にビットコイン・イーサリアム間など、いくつかの仮想通貨でアトミックスワップを成功させた例があります。

これができるようになると、先ほど問題として挙げていた高すぎる決済手数料が解決されます。支払う前に、決済手数料が安い仮想通貨へ変えてしまえば良いのです。また、仮想通貨の交換に取引所を介する必要も無くなるため、交換にかかる手数料も0です。取引所を通さないのでセキュリティ的にもより安全になります。さらには、もし持っている仮想通貨に対応していないお店があっても、その場で変えてしまうことができるのですから、通貨としての利便性は大いに向上するでしょう。

一方のライトニングネットワークは、決済にかかる取引のスピードを上げる技術になります。今は何日も待たなければ完了されないような決済も、この技術を利用できるようになれば、当日中どころかかなりリアルタイムに行えるほど高速です。また、取引を承認しなければならない回数が減り、これは手数料が安くなることに繋がります。まさに、Steamで問題視されていた決済の不安定さと手数料の高さ、両方を一挙に解決する可能性がある夢の技術だと言えるでしょう。

さらに、ライトニングネットワークによって0.00000001ビットコインという、非常に細かな単位での支払いができるようになるのも地味な利点です。これから万が一、1ビットコイン=1億円になるようなことがあったとしても、1円ずつ支払うことができますからね。このように、仮想通貨を取り巻く問題が明らかとなる中、それを解決する技術も徐々に形作られつつあります。ビットコインをはじめとした仮想通貨を使って、世界中のあらゆるお店で買い物をできるように、今後なっていくのではないでしょうか。