仮想通貨を「通貨」の視点から考えた時、仮想通貨同士で、もしくは法定通貨と仮想通貨の間で、その「為替」の差を利用することで利益を得ることができるのではないかという発想に至るかと思います。もちろん、通常の取引の中で売買を繰り返すことによっても利益を得ることができるのですが、そういったFX的な面に着目するのであれば、取引所の中には「仮想通貨FX」を行う機能を取りそろえた取引所も存在します。
今回は仮想通貨FXについて、通常のFXとの違いや、仮想通貨の現物取引との違いなども含めて解説しながら、そのメリット、デメリットや、仮想通貨FXが行えるおすすめの取引所についてもまとめてみました。FXの投資手法に興味のある方はぜひご参考にされてください。
FXとは
FXとは通貨同士(「ぺア」と呼びます。)の為替の差を利用して利益を得る投資手法です。広義には長期に保有し、金利(スワップポイント)を受け取るといった手法も含まれるのですが、ここでは短期でのFX取引に限定して考えます。
ドルと円を例にとって考えます。たとえば、2018年8月8日現在のドルと円のレートは1ドル111円です。100ドル購入したとすると必要な金額は11,100円。その後、円安に動き、1ドルが120円になったとすると、そこで100ドルを売却した場合、12,000円の日本円が戻ってきます。もともとの資金は11,100円だったので、為替の変動に合わせて売買を行っただけで900円のFXの利益が得られたということになります。(※簡易化するためにFXの手数料、スプレッドなどはまず考慮していません)
ここでは「円安」を見越して円を「買い」のポジションで入れましたが、「円高」の方を予測するのであればFXでは円を「売り」のポジションから入れることもできます。株の「空売り」と同じ考え方です。ここで1点疑問が出てくるかもしれません。
ドル円の相場が111円から120円まで動くというのは経済に明るい方ならわかるかと思いますがかなり大きな出来事です。原資が1万円ちょっととはいえ、そこでの利益が900円というのはあまりにうまみがありません。そこで出るのがFXの「レバレッジ」(証拠金)取引です。この手法は実際に持っているお金の何倍か(日本のFX業者であれば最大25倍)までの資金を持っていると仮定して取引所でFX取引を行うことができます。そうすることで大きくない原資であっても、小さな為替の動きでも、ある程度の金額の損益が出ます。以上が簡易ではありますが、FXの基本的な仕組みです。
ドルと円で考えましたが、実際はユーロやオーストラリアドルなど様々な通貨同士での組み合わせでFX取引を行うことができます。(扱っている外貨は取引所によって異なります)また、最初の例では省きましたが売買の手数料や、売値と買値の間の差分(スプレッドと言います)についても意識を持っておく必要があります。手数料もスプレッドも仮想通貨投資を行っている方であれば難しい概念ではないと思いますが、初心者の方は外貨の両替所に行ったとき、同じ通貨でもこちらが買う値段と、こちらが売る値段に開きがあるのは見たことがあると思います。
そちらの差分が「スプレッド」であり、業者のキャッシュポイントの一つでもあります。それから、もう一つ仮想通貨FXでも絡んでくる重要なポイントとして、「ロスカット」があります。レバレッジ取引は減ったときのリスクが大きいため、ある程度まで損失が膨らむと元本以上の損失を出さないようにと「強制決済」が行われます。「追証」と言われる追加資金を入れることで回避も出来るのですが、「莫大な損失を出さないための自動強制売却」があることをまず覚えておきましょう。
仮想通貨FXとは
先述のFXは法定通貨同士のペアを取引所で行うFX取引ですが、ほぼ同様のトレードを「仮想通貨と法定通貨」もしくは「仮想通貨同士」ペアで取引所で行うのが仮想通貨FXです。相互の為替を利用し、そのペアの短期的な力関係を予測することで損益が出る点や、原資に対して証拠金取引が行える点については法定通貨で行うFXと同様に考えて差し支えありません。(※わずかながらスワップポイントも発生していますが、手数料やスプレッドの影響の方が大きいため今回は割愛します)
また、現物で仮想通貨を購入する場合との違いは先述の内容のおさらいも含まれますが、3点あります。1点目は、証拠金取引を行うことができるため、持っている資金以上の金額でFX取引が行える点。2点目は「売り」(価格が下がることの予想)から入ることができる点。そして新たに出てくる点として仮想通貨FXの場合、「買い」から入ったとしても、実際にはその通貨を保有していないという点です。
法定通貨のFXでも同じですが、「買い」「売り」はあくまでスタートするポジションを指定するだけとなり、実際にその通貨を保有するわけではありません。そして、「売却」もしくは「買戻し」を行ったタイミングで確定させた損益を、口座に反映させるやり取りになります。したがって、取引所の仮想通貨FXで買いポジションを取った通貨を送金や決済に用いることはできません。長期保有(ガチホ)を行うのであれば、それはそれで現物のトレードで保有する必要があります。
仮想通貨FXのメリットとデメリット
仮想通貨FXのメリットは大きく3つ挙げることができます。
① 小資本、短期でも大きな利益を得ることができる。
② 下落相場でも利益を得ることができる。
③ 仮想通貨同士の上下動でも利益を得ることができる。
の3つです。①は、先ほどから解説している通り、レバレッジ取引を行うことで、少ない資本でも、大きな金額を動かすことができます。これに伴い、正しい読みで投資を行うことができれば、仮想通貨FXで大きな利益を短期的にあげることも出来ます。
また、②については、例えばわかりやすい「日本円とビットコイン」のペアで考えると、2018年は大きな下落を伴った後、小さな上昇と下落を繰り返している状況ですが、FXの感覚で「売り」を行うことで、ビットコインの価格が下落している相場においても利益をあげることができます。さらに、複数のコインに投資を行っている人であれば想像に難くないと思いますが、コインもすべてが上昇、下落することももちろんあるのですが、「ビットコインとアルトコイン」や「特定のアルトコイン」の中でも資金の循環が起きています。仮想通貨同士のペアでFX取引ができる取引所であれば、このような仮想通貨同士での動きのなかですら利益をあげることができます。
一方、仮想通貨FXのデメリットとしては失敗した場合の損失の大きさがあげられます。3つのメリットを挙げましたが、言うまでもなくそれぞれ利益を確定できてこそのメリットです。もちろん投資は負ける場合もあるので、その場合はメリットがそのままデメリットに転換します。かつ、そのリスクはレバレッジをかければかけただけ膨らむことになります。
仮想通貨FXが行えるおすすめ取引所
仮想通貨FXが行える取引所の中で、特におすすめを3つ挙げてみました。他の取引所でもサービスを展開していますが、どこが良いかは実際にやってみないと感覚も分からないと思いますので、まずは大手の取引所でやってみて、その後自身のスタイルに合わせて最適な取引所を選ぶ形でもよいかと思います。
① DMMビットコイン
大手企業DMM傘下で展開している取引所です。最大のポイントはペアの豊富さ。日本円とのペアで言うと、ビットコインだけでなく、イーサリアム、ネムといった主要アルトコイン7種。さらにビットコインと他の銘柄、イーサリアムと他の銘柄といったペアも含め、計14種類のペアでFX取引を行える取引所です。あらゆる相場に対応することができるため、コインの資金の流れを読むことに自信のある方には幅広い選択があります。取引手数料が無料かつ取引所のスマホアプリも対応しているのが嬉しいです。デメリットとしてはスプレッドの高さと、レバレッジが最大5倍なので高いリターンを取りたい方には物足りないかもしれません。
② GMOコイン
こちらも大手のGMOの仮想通貨事業として展開されている取引所です。ここが取り扱う通貨ペアは日本円/ビットコインもしくはアルトコインの5ペアです。DMMと比べスプレッドが狭く、手数料も同様に無料なので、「手数料負け」するリスクは低いと言えるでしょう。通貨ペアこそ少ないものの、取引所のスマホアプリからの操作性もよく、追証なしで強制ロスカットのみ、レバレッジが5倍、もしくは10倍といった形で、まずは仮想通貨FXを始めてみたい初心者に勧められる条件がそろっていると言えるでしょう。
③ Quoinex
上記2つに比べると知名度は落ちますが、Quoinexも仮想通貨FXを行うにあたっては魅力的な要素が揃っている取引所です。まず、トレードできるペアが12通貨と豊富。しかも、中には米ドルやユーロと仮想通貨といった組み合わせも含まれており、海外在住者やFXの世界に明るいプレーヤーにとっても嬉しい環境です。レバレッジが最大25倍と有名な競合と比較しても高く設定されているため、小資本で始めることができ、大きなリターンが狙えます。(反対側でのリスクについても念のため繰り返しておきます)スプレッドが変動するなど、この取引所は初心者にとっては少し使いにくいかもしれない要素もありますが、本格的に仮想通貨FXを行うにあたり有力候補の取引所です。
現物で軸をぶらすよりは仮想通貨FXを
仮想通貨投資を行うにあたり、長期保有するか短期売買するか、軸がぶれているという方も少なくないかもしれません。長期保有を決め込みながら、暴落で狼狽売りをしたり、短期で儲ける目論見が失敗した含み損を「ガチホ」と言い張ったり。短期、長期、どちらが悪いというものではありませんが、その軸を定めないまま、何となく売り買いをしていては、今後の市場で必ずしも勝てるとは限りません。そこで筆者からの提案として、軸が定まらないのであれば、現物は「ガチホ」、短期売買には「仮想通貨FX」と使い分けるということです。
仮想通貨FXでは実際に通貨を保有するわけではないので、混合しようがありませんし、(適正にリスクを取ることができれば)FX用の資金を損失で失ったとしても、長期保有の仮想通貨資産は別に残すことができます。どちらかを決め込んでいるのであればそれを貫けばよいですが、迷うようであれば、はっきりと分けてしまうのも一つの手法です。