個人のPCではビットコインのマイニングで利益を出すのは困難になった

仮想通貨をマイニングで手に入れるビットコインをはじめとする暗号通貨はマイニング(採掘)によって新規発行されますが、2017年現在のビットコインは1ブロックあたりのマイニング報酬は「12.5BTC」に設定されています。1BTCが150~200万円まで高騰している現在の相場に照らし合わせれば、1ブロックあたりのマイニング報酬は「約1,875万円以上」にもなります。高額な報酬金額だけを見ると、マイナー(採掘者)として参加すれば、個人でもかなり儲けられそうに感じますが実際にはどうなのでしょうか?

ビットコインは発行上限数が「2100万BTC」に設定されていて、約4年ごとに新規発行数が半減する「半減期」を迎えるため、希少価値のある有限の貴金属(金・プラチナなど)と同じように、ビットコインの価値はさらに高まっていくという見方もあります。しかし現実には、個人のマイナーが一般的なパソコンのマシンパワーを使って、ビットコインやアルトコインを大量に採掘し「数十万円~数百万円の利益」を得ることは不可能です。

マイニングとはブロックチェーン上の取引記録の正しさを承認するための複雑な計算作業の競争ですが、「マシンパワー(ハッシュパワー)の大小」によって競争の勝ち負けは決まるので、大掛かりなマイニング専用のハードウェア(ASICBoost)を大量に持つ大手マイナー集団(主に中国のマイニング企業)には個人では全く太刀打ちできないからです。

ビットコインのマイニング報酬は12.5BTCと高額ですが、この報酬を一人(単独)で獲得できるほどのハッシュパワーを保有する人・集団はほとんどおらず、1ブロック内の承認作業を分担して12.5BTCのうちのごく僅かなBTC(0.0001BTC以下)を分けてもらえるだけになります。マイニング競争環境の激化があり、日本国内の一般的なパソコンでマイニングを実行しても、24時間フル稼働で10円も稼げないという厳しい現状なのです。

実際にマイニングを行うためにはどのようなコンピューターが必要なのか?

個人での仮想通貨のマイニング難易度の上昇が続く現状一般の個人ではまず儲けられないと分かっていても、実際にマイニングをする方法や道具(コンピューター)に興味のある人は多いと思います。マイニング(採掘)はマイニングのアプリケーションをダウンロードすれば、一般的なパソコンでも実行することはできますが、マイニング可能なコンピューター(計算機能を持つ集積回路)を分類すれば以下のようになります。

○CPU(Central Processing Unit)……一般的なパソコンの中央処理装置となっている集積回路で、採掘効率はもっとも低い。

○GPU(Graphics Processing Unit)……リアルタイムの画像処理に優れた演算装置になっている集積回路で、採掘効率はCPUより高い。

○FPGA(Field Programmable Gate Array)……製造後に回路の書き換えが可能なプログラマブル・ロジック・デバイスの集積回路で、採掘効率はGPUより高い。

○ASIC(Application Specific Integrated Circuit)……特定の用途のために複数機能の回路を1つにまとめた集積回路で、マイニング専用機器として採掘効率がもっとも高くなっている。

マイニングの計算速度(1秒の計算量)は「ハッシュレート」といい、1TH/s(テラハッシュ毎秒)や1MH/s(メガハッシュ毎秒)の単位で記述されますが、ハッシュレートが分かると「マイニング利益の予測」を以下のようなサイトでできます。

https://www.cryptocompare.com/mining/calculator/btc

一般的なパソコンに搭載されているCPUやGPUのハッシュパワー(計算能力)が低いのであれば、マイニングを成功させられるだけの強大なハッシュパワーを持つ専用のASIC機器を購入すれば良いではないかというのは、もっともな意見です。

しかしマイニングに特化したハイスペックなASIC機器は、最低でも数十万円以上(百万円以上のものも多い)で高額であり、消費電力も非常に大きくなるので電気代のコストも考えなくてはなりません。日本のような電気代が割高の国では、機器代・電気代を含めた「費用対効果」を細かく計算してから運用しないと、ASICを利用したマイニングが赤字になる恐れもあるのです。

ビットコインの採掘難易度(mining difficulty)と採掘しやすいアルトコイン

ブロックチェーン上におけるブロック生成量は、マイニング機器の「ハッシュパワー」と各通貨の「採掘難易度(mining difficulty)」によって規定されています。ビットコインであれば、約10分に1回ブロックが生成されるように採掘難易度が定期的(2週間)に調整されており、10分よりも余りに短い時間でブロックが生成されていれば、採掘が簡単すぎると判断して採掘難易度を上げているのです。

マイニング(採掘)そのものは、イーサリアムやビットコインキャッシュ、ライトコイン、モネロなどのアルトコインに対しても行うことができるのですが、どうせコストをかけてマイニングするのであれば、やっぱり王道である高価なビットコインが欲しいという人が多いのではないでしょうか?

しかし、同じように市場価値が上がり続けているビットコインが欲しいという人・企業はあまりに多いので、現在ではすでにビットコインの採掘難易度は非常に高くなっていて、個人が参加してもハッシュパワーの計算競争に打ち勝つことができなくなっています。

そこでおすすめなのが、まだ注目や期待を集めきっていない「伸びしろのありそうなアルトコイン(ライトコインやモネロ、リップルなど)」を採掘して、値上がりした時にビットコインと交換するという方法です。コインチェックで取り扱っているようなある程度メジャーなアルトコインであれば、ビットコインと交換可能なだけではなく、ビットコインよりも採掘難易度が低くなっているからです。

プールマイニングやクラウドマイニングで利益を上げられる可能性

個人で採掘することを「ソロマイニング」といいますが、ソロに対して複数のマイナーで協力して採掘する仕組みとして「プールマイニング」や「クラウドマイニング」というものがあります。

ここまで見てきたように、ビットコインやメジャーなアルトコインの採掘難易度は上がり続けており、すでに個人が所有できるようなコンピューターのハッシュパワーでは電気代が無駄にかかるだけで、十分な量を採掘できなくなっています。大勢の人や機器を集めて協力してマイニングを行うプールマイニングであれば、現時点からでも一定の報酬を得られる可能性がありますが、「自分のマシンの作業量(計算の貢献度)に応じた報酬配分」のケースも多いので、その場合はハッシュパワーのある高性能マシンを持っていないと相当に少ない報酬になります。

複数の人が集まってマイニングするという意味では、プールマイニングとクラウドマイニングは同じなのですが、「クラウドマイニング」は自分でマシン(コンピューター機器)を持ち込まなくても良くて、マシン運用時の電気代もかからないというメリットがあります。クラウドマイニングというのは、「定額のお金(契約期間が長いほど一般に割安になる)」を投資して自分たちの代わりに大掛かりなマイニング専用機器(24時間体制)で、目的の通貨を採掘しつづけてもらえるというサービスなのですが、日本でも「Genesis Mining」などのクラウドマイニングに人気が集まっています。

仮想通貨(ビットコイン)のマイニングは、個人の投資方法としてはハードルが高い

ビットコインをはじめとする暗号通貨を手に入れるための方法として、「マイニング(採掘)」はあまり効率的ではありません。少なくとも個人レベル(個人所有のマシン)で、電気代の割高な日本でマイニングを行って利益を出すことは簡単なことではなく、大規模なマイナー集団が利益を出している国も電気代が安い中国・インド(資源大国ロシアも今後マイニングに注力する)になっています。

個人が自分で採掘して利益を出すのであれば、「ASICのマイニング機器に関する詳細な知識・機器の安価な購入ルート」と「機器代・電気代・採掘難易度・採掘期間・時価を含めた“コスト対利益”のリアルなシミュレーション」が必要になってきますが、一般の人がゼロから学んで運用するのはなかなか難しいでしょう。マイニングで効率的に高価なビットコインを入手できれば良いのにという願望は誰しも持っていますが、現時点でビットコインは人気と価値上昇の期待が集まりすぎているので、採掘難易度も非常に高くなっています。

ビットコインのマイニングのアルゴリズムである“PoW(Proof of Work)”そのものが、最も計算量の多いコンピューターがブロック生成を承認されやすい(報酬を得やすい)というルールなので、どうしてもマイニング機器の性能競争になり、高額なASICのマイニング専用機器を大量に持つ大手マイナー集団が有利になってしまいます。個人の投資方法としてマイニング(採掘)を考えるのであれば、採掘難易度の低いアルトコインをまず採掘してみてビットコインと交換するか、詐欺商法ではない信頼できるクラウドマイニングのプランに申し込んで長期投資の利益を狙ってみるかというのが現実的でしょう。

一般論として、個人の投資方法として自前のコンピューターによるマイニングのハードルは高いです。もっとも簡単かつ安全にビットコインなどを手に入れたいのであれば、やはり取引所(販売所)で購入するのが一番良いということになります。ビットコインとアルトコインの値動きは非常に激しいので、1~2週間程度、取引所のレートを眺めているだけでも相対的な安値を拾えるタイミングは見つかりやすいからです。