市場の拡大の一方で、実用化に関して疑問の声
日本国内でのビットコインの取引量は、2017年11月の時点で約451万ビットコインで、8月の186万ビットコインから2倍以上の数値を記録しています。日本はいち早く仮想通貨に関する法律を整備したので、個人投資家が参入しやすくなったことも追い風になっています。中国が取引所を停止したこともあり、仮想通貨市場の主役が日本に移ったとの見方もあります。将来的には全世界の通貨の10%程度にはなると見込まれており、日本円にすると1000兆円です。
ビットコインは2017年12月現在で200万円前後を推移しています。昨年比で2,000%の上昇を見せたことや、著名人がテレビCM位出演していることでも話題になっています。ビットコインの知名度が上がったおかげで、他のアルトコインの市場も広がりを見せています。ビットコインの取引量は来年末までに3億に達する見込みです。仮想通貨市場に参入しようとしている方や、すでに所持している方にとっては朗報なのではないでしょうか。
21日には、ビットバンク社長の広末紀之氏がテレビ番組でビットコインバブルに言及しました。投資としての仮想通貨を株と比較して「株には理論価格があるが仮想通貨にはない」と発言しました。遅かれ早かれバブルは弾けるだろうと述べました。21日はビットコインの価格が190万円台にまで落ち込みましたが、氏の発言も影響しているのかもしれません。
ビットコインの実用性を疑問視する声も上がっています。仮想通貨を保持する人の9割が投資目的で、送金や決済といった実用的な利用されていないのが現実です。一部の国では実用が普及していますが、通貨への信頼性がない新興国がほとんどです。法定通貨が浸透している国々で、仮想通貨の将来はどのように変わっていくのでしょうか。仮想通貨の実用に関する例を見てみましょう。
給与、両替機など実用に向けた動き
まだ普及しているとは言い難い仮想通貨ですが、少しずつ実用に向けた動きが始まっています。ビットコインを担保にした融資には、新興企業が参入してきています。ソルト・レンディングやネベウス、コインローン、イースレンドといった新興企業がビットコインを担保にローンを組めるサービスを導入、あるいは検討しています。大手の銀行が二の足を踏む中では画期的な動きと言えるでしょう。仮想通貨で家を買う時代も間近ですね。
ビットコインを保有する個人が基金を設立して、非営利団体に仮想通貨での寄付を行った例もあります。「パイナップル基金」という名称で、設立者は5,058BTCを保持しています。すでに8つの非営利団体に仮想通貨での寄付が行われ、その総額は日本円で2億円を超えています。設立者は早い時期からビットコインのマイニングを始め、余ったお金で社会に貢献したいと考えているのです。投資のイメージが強い仮想通貨ですが、このような使い方もあるのです。
日本円と仮想通貨の両替機も登場しています。ビットコイン、イーサリアム、リップルなどに対応し、24時間利用可能です。希望する円価格を入力すると、当日のレートで換算してくれます。仮想通貨の送金も可能です。日本では2018年3月10日から大阪市に設置される予定で、導入されれば知名度と実用性の向上に貢献してくれそうですね。
12月18日には、スイス銀行グループSwissquoteが4種類のアルトコインを自身のオンライン取引プラットフォームに追加しました。4種類は消費者需要と流動性の観点から、仮想通貨の導入に踏み切りました。ビットコインとユーロおよび米ドルの両替を可能にしたところ、需要が予想をはるかに超えたので、本格的な取り組みを開始したとのことです。
各国の仮想通貨への姿勢は消極的
仮想通貨の実用性が向上しない理由は、各国の態度にあります。シンガポールは「仮想通貨に魅力を感じる国民がいることを懸念している」と表明。「すべてを失う危険があるので、極めて慎重に取り組むように」と消極的な姿勢を見せている。デンマーク中央銀行は「命がけの投資」と揶揄し、損失が出ても規制当局を批判するべきでないと明言。12月19日には、韓国の仮想通貨取引所がハッキングにあって破産申請に追い込まれました。こういった危険性があることも否めません。
欧州エコノミストの大半が規制強化に賛成しており、租税回避や犯罪への利用を懸念しています。EUと欧州議会は、12月15日にビットコインへの規制強化に合意しました。海外では仮想通貨の利用を制限する風潮があるのも、実用化が進まない原因です。実際に保持している個人投資家も、実用化に関心をいだいておらず、利益を挙げられればいいという考えでいます。
手数料と取引時間の問題も大きいでしょう。2017年末にはビットコインのネットワークが混雑し、手数料が高騰しました。12月20日15字前後の時点で4000円も手数料がかかります。取引時間も長くなる傾向にあります。ブロックチェーンに記録できる取引数に限界があることが理由だと考えられています。こういった要因は資産の流動性を低くしてしまい、実用性が疑問視されるのも仕方ないといえます。
手数料の問題は、長期的には解決されると思われます。Lightning Networkなどの技術が開発され、2018年に向けて実用の敷居は下がっていくと見られます。モナコインはすでに決済で使えるシステムがあります。イーサリアムはスマートコントラクトという機能を搭載していることで話題を呼び、時価総額はビットコインに次ぐ2位を記録しています。値段だけではなく、実用性も考慮して購入するといいでしょう。
GMOインターネット株式会社の動き
GMOインターネット株式会社はマイニング事業を開始しました。来年からスタートする予定でしたが、マイニング機器の試験稼働を行い、利益を挙げられると確信したので前倒ししました。
GMO社は複数のマイニング事業を展開しています。マイニングボードの発売も控えており、大手が製造している商品と比べて数倍の性能があるとされ、実現すれば仮想通貨業界の発展に貢献するでしょう。同社は希望者に限り給与の一部をビットコインで支払う取り組みも開始しました。
クラウドマイニングという事業にも力を入れています。これは、個人では難しいマイニングを、大手のマイニングプールを貸し出すことで投資を行うサービスです。仮想通貨の別の側面で投資ができるとして注目を集めています。自社の取引所にマイニングで得た仮想通貨を直接供給することを検討しています。マイニングを自社で手がければ取引の流動性が高まり、利用しやすくなります。
仮想通貨が実用化しないのは、規制当局が消費者保護を怠っているからだという声も上がっています。仮想通貨は中央に依存しない通貨なので保護を期待すべきではないという意見もありますが、法整備が進めば庶民の関心も高まるはずです。所有している人が増えれば、企業も仮想通貨による決済などのサービスを導入していくでしょう。
仮想通貨業界の動きは混沌としています。国家や規制当局が消極的な姿勢を見せている一方で、事業を展開する企業もあります。個人レベルでは増々浸透していくと見られ、保有している人が増えれば流れも変わってくるはずです。値動きや新しいテクノロジーなど、日進月歩で変化していく仮想通貨から今後も目が離せません。