現在、仮想通貨が非常に注目されています。12月8日にシカゴ・ボード・オプション取引所(CBOE)でビットコインの先物取引が開始されました。先物価格は1,5000ドルで取引開始してから急騰し4時間後には3,000ドル以上上昇しました。CBOEには実際のビットコインの取引は含まれず、ニュージャージー州のビットコイン取引所であるジェミニ取引所のビットコイン価格を追跡する取引所です。
午後5時に取引が開始され、アクセスが集中したためCBOEのウェブサイトでは一時的に利用できない恐れがあります。と表示されていましたが、先物取引自体には問題はないとのことです。さらに、一週間後の12月18日には、シカゴ・マーカンタイル取引所でもビットコインの先物取引が開始される予定なのですが、そちらも同じようにアクセスが集中する恐れがありますので注意が必要です。
先物取引とビットコイン
そもそも先物取引とは将来、いつ、何を、いくらの価格で売買するという未来の取引を約束する取引のことです。先物取引は、ほぼすべての証券取引に利用可能ですが、一般的には小麦・大豆・金・石油などが有名です。今回はついにビットコインという仮想通貨の市場でも先物取引が開始されました。
先物市場の登場でビットコインの現物市場の方にも資金が集まることが予測され、またビットコインの価格が下がることにより利益を得る空売りも可能になります。それにより取引の幅が広がり市場への影響も少なからずあることが予想されます。先物の場合は限月という期限が定められており短期間での下落による差額で利益をとる形になります。したがって長期的な暴落を狙っての取引には今現在は向いていません。
仮想通貨投資を主流にするための試み
ビットコイン先物取引の開始を受け、ビットコインを大量に所有する双子の兄弟、タイラーとキャメロン・ウィンクルボスはビットコイン取引ファンドを設立しようとしましたが。連邦規制当局はその申請を拒否しました。これらのビットコイン先物取引が実際の投資家にとってどれほどの関心があるかは、はっきりしていませんが、ゴールドマン・サックスやJPモルガン・チェースなど多くのウォールストリートの仲介業者は、ビットコインの先物取引は顧客判断で選択された方のみにしか許可をだしていいません。ほかの証券会社はトレーダーが取引に利用できる金額に制限を設けるなどの対策をとっています。
仮想通貨は専門家の間でも意見が分かれおり今後、どう発展していくのか正確なことは誰もわかっていません。大きな可能性を秘めていますが、それは完全に把握できるものではないのです。ビットコインが世間に認知され始めたころ、JPモルガン・チェースのCEOジェイミー・ディモン氏がビットコインは「詐欺だ」と主張していました。またインタラクティブブローカーグループの会長トーマス・ピタフィ氏も先月ビットコインの先物取引についてある懸念を表明されています。その懸念とはビットコインをはじめとした仮想通貨は、評価の基準となるものがなく、いつでも価格を引き上げることができることです。
また、ピタフィ氏は「ビットコインで先物取引がされる場合、最近のボラティリティから見ても10パーセントから20パーセントの変動は珍しくないため、意図的に価格の引き上げ繰り返し行われる可能性が高いと指摘されました。」
仮想通貨の普及に伴い犯罪利用のリスク
ビットコインは世界でも最も人気の高い仮想通貨ですが、仮想通貨は銀行や政府と結びついておらず、利用者は匿名で通貨を使うことができます。ブロックチェーン技術により取引は記録されますが、暗号化されて記録されますのでそれが第三者に盗み見られることはありません。
仮想通貨のメリット・デメリットについては議論が激しさを増しています。ある人は、仮想通貨は単にマネーロンダリングと振り込め詐欺や架空請求といった犯罪行為の役に立っているだけと主張しています。また、ある人は、国の通貨が崩壊した危機的状況では、有益な支払い方法になる可能性があると主張しています。それぞれの主張には理にかなったものであるでしょう。確かに仮想通貨はその仕組みができてからの歴史が浅く、今後様々なトラブルを抱える可能性があります。
そもそも仮想通貨とは中本聡氏が通貨として成り立つかの実験としてインターネット上に公開したのが始まりでした。つまり、その当時の開発者でさえその実験が成功するかどうかわからなかったのです。一寸先は闇といい、完全に手探り状態で始まった仮想通貨の運用ですが結果としては、通貨として急成長を遂げ現在の時価総額は30兆円を超えています。日本が誇るトヨタ自動車の時価総額が18兆円なのでかなりの成長ぶりです。2009年にビットコインの運用が開始されてから現在まで順調に成長してきました。今の爆発的な価格上昇が長期的なものなのかあるいは、バブル期の日本のように一時的なものかは疑問が残ります。
先物取引に投機家が注目
冒頭で触れましたが、ビットコインの先物取引が開始され、開始直後から価格は急上昇しています。多くの投資家が先物取引で得られる利益を逃さぬよう注目しているのは間違いありません。さらにビットコインの下落時に空売りをすることにより差額を得ることができるようにもなっています。長期的な投資には向いていませんが日中に取引をするデイトレーダーなどの短期間で売買をする投資家にとっては非常に魅力的な市場になっています。
先物市場の大きなボラティリティにより利益を得る投資家もいますが、その価格変動のあまりの大きさにファイナンシャルタイムズの編集者であるマイルズ・ジョンソン氏は「あなたが何かを買いに食料雑貨店に行くとします。家を出てからあなたが食料品を買うまでにポケットの中のドルの価値が50パーセント変動したようなものです」と警告されています。買い物に出かけるわずかな時間にそれだけの変動があるというのは、非常に不安定であり、安心して投資できる対象にはなりません。ボラティリティの高い市場というのは短期間で大きな利益を期待できますが、それゆえにリスクも大きくなります。損益比率をしっかり把握し、リスクに見合ったリターンがあるのかをしっかり検証して投資すべきでしょう。
また、ボラティリティの高い市場の本来の魅力は別にあります。投資をする際に考えるべきことは、この投資により将来どれだけのリターンを得られるかです。それはインカムゲイン・キャピタルゲイン両方に言えます。安定した市場では極端に大きな変動は見込めず、数パーセントの資産を増加させるのにある程度の期間と資金が必要です。それに足してボラティリティの高い市場では、より少ない投資額で同様の成果を得ることができることにあります。それは投資金額であり投資期間にも同じことが言えます。むやみに利益を得ようとせず冷静に今の資産を増やすにあたって、より少ない投資でそれが叶うという利点に目を向けるべきでしょう。
私はリスクをコントロールできるようになり初めて投資をすべきだと考えています。しかし世の中の天才投資家のように莫大な利益を得ようと思うなら、徹底的に調べ上げ自身の納得する独自の理論で資産をつぎ込む必要があります。これは世界に名だたる著名な投資家すべてに当てはまることです。しかし、デイトレーダーで生活しているような相場に慣れ親しんだ投資家ではない初心者のうちは、価格変動がある程度収まるまで様子をみることをおすすめします。
ビットコインの時価総額
様々な理由で買われるビットコインですが。12月8日の最高値更新により時価総額は40兆円を超えており、日本の通貨、(円)の時価総額が約98兆円なのでビットコインは半分近くにまで時価総額が上昇しているのです。2017年初頭の時価総額が2兆ほどでしたので、わずか一年間で20倍近くまで上昇したことになります。通常では考えられない規模で価格が上昇していますね。ちなみに日本の通貨(円)を超えるには560万を超える必要があります。仮想通貨の行く末は誰も把握できていないといわれているので、もしかしたらあっさり超えてしまう日が来るかもしれません。