イーサリアムはビットコインに次ぐ市場価値2位の人気を誇る仮想通貨ですが、2016年7月20日に枝分かれしたフォークコインにイーサリアムクラシック(ETC)があります。

本体に比べ地味な印象が拭えないイーサリアムクラシック

早くも半減期を迎えるイーサリアムクラシックイーサリアムクラシックが誕生したのは、いわゆるTHE DAOのハッキング事件が契機となっています(これについては後ほど詳しく説明します)が、他のアルトコインの中で比較的良く健闘しているコインだというのが全体的な評価でしょう。

2017年末はこのままベスト10に入るのは難しそうですが、イーサリアムクラシックは来年2018年には半減期を迎え、その影響もあって大きな価格変動が予想されており、再びベスト10圏内に返り咲くことも囁かれています。

ただ冷静にイーサリアムクラシックをみた場合、開発の面で枝分かれしたイーサリアムに比べ、どうしても後れを取ってしまうのではという不安があります。イーサリアム本体の方は、若き天才ヴィタリク・ブテリンを中心に分散型の決済プラットフォーム「OmiseGO」を展開するなど、2017年も新しいチャレンジに何かと大忙しです。こうしたスマート・コントラクト絡みのイベントもありながら、ライデン・ネットワークへの取り組みにも一歩先んじている印象がイーサリアム本体にはあります。

ところがイーサリアムクラシックには、本体のような脆弱性をつく攻撃もない代わりに、新しい取り組みを始めるなどのニュースが見当たりません。確かにイーサリアムクラシックは誕生してから1年が経過したばかりの新しいアルトコインですが、かのイーサの流れを汲むアルトコインということで、スマート・コントラクトについても何か新しい取り組みが必要ではないでしょうか。

2018年は2年目を迎えるイーサリアムクラシックですが、something-newと言える何かに期待したいところです。

イーサリアムクラシックの誕生の契機となったTHE DAOハッキング事件

イーサリアムクラシックの誕生には、THE DAOの事件が契機となっていることはすでに言及した通りです。THE DAOとはイーサリアム のネットワークを使って動かす分散投資のプロジェクトの名称です。

事件が起きたのは2016年6月17日のこと。あるハッカーがTHE DAOのコードの脆弱性を狙い360万ETH(イーサ)という大金を分離させました。THE DAOにはファンドマネージャーに当たる人物は存在していません。THE DAOに集まった資金をどこに投資するかは、民主的プロセスを経て、投資家の賛成を得ながら行われます。THE DAOの新しい仕組みは投資プロジェクトの斬新さに注目が集まり、投資家らの賛同を獲得しました。

幸いTHE DAOを通じて集まった資金は、28日間は動かせないものとしてルールが決められていました。これにより不正送金が行われてから28日間の猶予のなかで、不正送金にどのような対処を行うかが話し合われたようです。メンバーはTHE DAOのプロジェクトチームのほか、イーサリアムの開発コミュニティ全体が含まれていたと言います。

最終的に取られたのは3つの案で、ひとつはイーサリアムの取引履歴を不正送金される以前の状態に戻す案で、具体的にはハードフォークを使うというもの。二つ目はハッカーが資金を移動させたプールを永久に使えなくする案で、具体的にはソフトフォークを使うというもの。そして3つ目の案は、何も手を加えないといものです。この時事件発生から3週間が経過していましたが、過半数の賛成を得て第一案のハードフォークを用いる案が採用されたました。

「Code is low」を提唱するイーサリアムクラシック

気になる2018年のイーサリアムクラシックの動向は?こうした決議によって、イーサリアムは取引履歴を不正送金される前の状態に戻し、ハッカーに資金が盗まれる最悪の事態を招かずに済みます。この選択はある意味で正しい選択でしたが、コミュニティの一部からは、取引履歴から不正送金の事実を消すことが非中央集権的な扱いではないと反論するメンバーも出てきました。このように、イーサリアム が選んだ決議を非中央集権的姿勢に反するとする勢力によって作られたのがイーサリアムクラシックです。

こうした経緯を持つイーサリアムクラシックは「Code is low」という考えが根底にあります。イーサリアムクラシックが提唱する「Code is low」とはTHE DAOのような事件が起きても、イーサリアム がとった多数決によらず(ということはハードフォークを選択せず)、あくまで書かれたコードに従うというもの。

コードに従うべきかコミュニティに従うべきかは、技術者の中でも意見が分かれるところです。しかし「Code is low」を提唱するイーサリアムクラシックなら、THE DAO事件にどのような対処を選んだかは聞いてみたいところです。それがはっきりするまで、「Code is low」は宙に浮いたままではないでしょうか。

なお、「Code is low」を堅持したイーサリアムクラシックはイーサリアムよりも拡張性を制限し、安全性を向上させる方向をとっています。こうした傾向を支持する方はイーサリアムクラシックを選びますが、イーサリアムの良さは拡張性の豊かさにあります。その意味では何となく物足らなさをイーサリアムクラシックに感じてしまうことは否めないでしょう。

イーサリアムクラシックに半減期が

イーサリアムクラシックの発行上限枚数はこれまで限度を設けていませんでしたが、12月12日に半減期を実施するニュースが届いています。半減期とは、発行するコイン数を制限することでマイニング報酬を抑える手続きのこと。具体的には、イーサリアムクラシックの最大発行枚数を2億1,000万~最大2億3,000万に設定し、マイニング報酬を2割カットしますので正確にはコイン数や報酬が半減するわけではありません。

また仮想通貨の半減期には当該通貨の高騰がよく起きます。ただしこれを執筆している現在はすでに12日を過ぎていますが、たとえばモナコインほどの暴騰はイーサリアムクラシックには見られません。ただ今後どのような動きを見せるか、まだ目が離せない状況です。

これ以前の11月末までは、イーサリアムクラシックもじりじりと値を上げていました。そのため半減期を目前にした価格変動に関しては、すでに折り込み済みのことと考えられます。ただどうして今、イーサリアムクラシックが半減期を迎えるに至ったのか、経緯のほうが気になるところです。

今回イーサリアムクラシックの半減期はハードフォークによるものですが、アップデート要素のニュアンスが強いハードフォークといった感じです。イーサリアムクラシックの来年に良い影響があることを望むばかりです。

2018年のイーサリアムクラシックはどうなる?

イーサリアムクラシックは比較的好調か、それとも不調なのか読めない傾向がありますが、ベスト10圏内にいつでも戻れる力を持ったアルトコインということを考えると、おそらくこのまま他の主要なアルトコイン同様に堅調に推移しそうです。

考えてみればスタート時のレートは1ETC=100円前後を彷徨っていました。それが2017年3月から上昇し、5月には1ETC=2000円台を超えるところまで成長しています。半年や1年で20倍まで伸ばしたのですから、イーサリアムクラシックはまだ伸ばせる要素が大きい仮想通貨ではないでしょうか。

それにはイーサリアム直系の拡張性とイーサリアムクラシックが持つ安定感が、バランスよく融合された様をもっとうまく伝えるべきです。とはいっても国内では今でも仮想通貨のニュースと言えば、やはりビットコインが主体でイーサリアム ですら日本語で読めるものは数は限られ、クラシックに至るとその数はもっと少なくなります。その意味では関連メディアの力が、このクラスの展望を握っているとも言えます。何にしても、2018年もイーサリアムクラシックの動きには注目していきましょう。