ベネズエラ政府が独自仮想通貨「Petro」を発行

ベネズエラ政府は米国のトランプ政権による金融政策への対抗処置として、独自の仮想通貨「petro(ペトロ)」を発行する法令を発しました。ペトロは国家が発行する初めての仮想通貨です。52億バレルの原油を支えにペトロを発行し、マイニングする仕組みです。

ベネズエラ政府発行の仮想通貨ペテロとは

新たに登場する仮想通貨として注目を集めているペテロとは、ベネズエラ大統領マドゥロ氏が2018年に新たに発行する仮想通貨であり、政府が発行する唯一の仮想通貨です。その価値はベネズエラ産の原油1バレルに相当するといわれています。ベネズエラ石油省のホームページによると1月1日~5日の石油平均価格は1バレルあたり約6700円になります。マドゥロ大統領はペテロの一億単位の発行を命じたと発表がありましたので、その発行額は6000億円を超える規模になります。

アメリカのトランプ政権への対応策として生まれた仮想通貨であり、幅広く普及し仮想通貨として発展していくことでベネズエラが受けている金融政策を打開する事ができます。国際通貨基金(IMF)によればベネズエラ経済の縮小率は12パーセントに達し年間インフレ率は2018年に2300パーセントを超える見通しです。スーパーインフレにより信頼を失いつつある自国の通貨に代わり、新たな通貨としての期待も高まりを見せています。その反面でその信用性に疑問の声も上がっています。ペテロはベネズエラにとって重要な仮想通貨であることは間違いありませんが今後の発展には注意が必要でしょう。

発行理由と大統領の思惑

ベネズエラの大統領、ニコラス・マドゥロ氏はペトロを支えるために53億バレルの原油を割り当てる文書にサインしました。これは2670億ドルに相当します。ニコラス・マドゥロ氏は2017年12月にペテロの創設を発表しており、その際に米国のトランプ政権の金融処置に対する対抗処置だと強調しています。トランプ政権はマドゥロ大統領を独裁者と指定して、厳しい経済制裁を課してきました。それにより急速にインフレが進むベネズエラ通貨に代わり仮想通貨によって経済を維持する狙いがあります。

マドゥロ大統領はペテロの支援のために国内の油田、ダイヤモンド鉱床などの他にアルコ・ミネロ金鉱も割り当てており、官報で発表された法令は13章にも上ります。その半分が仮想通貨であるペテロの運用に対して詳細に記されているとのことです。金融政策に対す対抗処置だとする一方、野党幹部は「マドゥロ大統領の目的として、ベネズエラが他国に負う借金を仮想通貨の発行により得た資金を調達し、返済に充てる可能性がある」としています。

また自国の通貨が信用を失いつつあるとしての2700パーセントを超えるインフレに悩まされていたベネズエラは、仮想通貨を発行することによって新たな資金の入手ルートを手に入れる狙いがあります。マドゥロ大統領によると「官製仮想通貨は金融主権の問題、金融取引の実施、金融封鎖を克服する上での進展」としており、金融制裁に対する対抗策であると強調しています。

ペテロの利用価値と方法

トランプ政権の金融制裁に対抗するための仮想通貨「Petro」ベネズエラ政府が発行する仮想通貨ペテロを所持するにあたって、その仮想通貨の利便性などのメリットとデメリットを理解する必要があります。ペテロは法令の第4章に「OPECバスケット価格あるいは金・ダイヤモンド・コルタン・ガスを含むその他の商品で引用されるベネズエラ産原油に他ならない」と定義されています。さらに物理的な支援として、ペテロは1バレルの原油バスケットもしくは国家の規定する商品に対する購買契約を保有すると規定されています。国家を上げて仮想通貨に対して大きな支援をしていることが伺えます。

このペテロは、その他の仮想通貨やベネズエラの通貨であるボリバルと交換することが出来ます。ただし、第5章で「仮想通貨ペテロの所有は自己責任でウォレットを所有すること」と規定されているので、国家がその価値を保証するものではありません。ペテロの仮想通貨市場への公開は2018年1月を予定しており近日中に公表される可能性が高いでしょう。

ですが原油価格と仮想通貨の価格を合わせことは技術的に非常にハードルが高く、複雑になります。その問題をクリアすることができれば、原油などをはじめとした資源を担保にした新たな通貨として多くの取引所で取引される日も遠くありません。メジャーな取引所で取引が始まれば、その取引量は格段に増え、一気にペテロの持つ資産価値を上昇させるでしょう。日本でもコインチェックやビットフライヤーなど大手取引所で取引可能になれば認知度は一機に高まるでしょう。

ペテロ発行は大統領選への布石

ベネズエラで窮地を乗り切るために今年後半とされていた大統領選を前倒し、4月危機の前にマドゥロ氏の再選を目指すとの情報もありましたが、ここ最近の原油価格上昇により、その案は見送りとなった状態です。またベネズエラでは最高裁判事も与党側でほとんどを占めており、着々と権力基盤を固めています。仮想通貨ペテロにより、金融対策を施し自身も大統領選にて再選する考えであり、さらに野党が多数を占める国会からの権限をはく奪することにより独裁を確立しています。現地の外交関係の方は「制憲議会が権力を握り、何でもできるようになった。選挙を急ぐ必要もなくなり、すべてはルールを突然変えられるマドゥロ氏次第だ」と述べており、政権交代への希望は無くなりつつあります。

こうした独裁政治ととれる大統領の政策に対抗する手段として、これまでアメリカのトランプ政権は金融制裁を課してきました。国内としては膨れる借金に、信用を失いつつある自国の通貨、そのインフレ率は2700パーセントと言われ経済状況は極めて深刻な状態です。そのため同国民の3割は1日の食事量が2回以下いで約75パーセントの人がその体重を8キロ程度減らしたとのデータもあります。

その危機的状況の中、生まれる仮想通貨は危機を打開する新たな試みとして、喚起の声も上がっています。ただし、仮想通貨発行までには野党は議会での承認を必要としており、本当に実施されるかは不透明な状態にあります。

ペテロの世間の評判

この度、新たに発行される仮想通貨は世界から見るとどう映るのでしょうか。ペテロはベネズエラ政府が発行するとあって、政府が発行する新たな仮想通貨だと前の章で記述しましたが、仮想通貨の魅力は政府などの中央局が存在しない通貨という意味合いが強いものです。ペテロは原油価格1バレルに相当するとベネズエラ大統領が述べたことから1ペテロあたりの金額がある程度予測できます。ですが上記で述べたように既存の価格帯のものに仮想通貨を連動させるというのは非常に難しく、それを実現し維持できるのかについては疑問の声が上がっています。

また仮想通貨を一政府が管理する事自体が間違っているという考え方もあり、魅力が少なく投機対象にならない可能性もあります。ですがベネズエラにとって、外貨の獲得は非常に重要な問題になっています。さらに自国の通貨より信用できるものであるならばそちらに資金が動き、バブルが起こる可能性も捨てきれません。

しかし、よくも悪くも保有する原油などを割り当てることにより、価格が安定してしまい投資家からはあまり大きな注目は集められないでしょう。また、ベネズエラ政府自体の信用が低下してしまっている現在、その政府が発行する仮想通貨が、どれだけの信用を勝ち取れるのかが懸念されています。仮想通貨自体の信用度もまだ十分だとは言えない状況です。そこに不安定な政府が新たに発行する仮想通貨が登場してどれだけの資金を集められるのか、またどれだけの価値を維持できるのかそこが注目すべき点ではないでしょうか。