2018月1月8日、時価総額トップ10のうちイーサリアムのみを除く9つの仮想通貨が、揃って前日比でその価値を落としました。ビットコインは11%、そして最も暴落したリップルは24時間でマイナス28%近く落ち込み、結果的には持ち直したイーサリアムでさえ一時的にマイナス3%を出しました。2017年末から度重なっている仮想通貨の暴落で揺れ動く市場。なぜ、ここにきて暴落を起こしているのでしょうか。
年末年始という時期的な問題
年末年始にあたる時期は、もとより仮想通貨の暴落が起こりやすいタイミングです。1年のうちに仮想通貨で利益を得た人は税金を支払わなければならず、それに伴い多くの売りが発生するからです。特に、1年間の利益を確定するため売る人が多くなり、年末には売りが集中します。
さらに、年末に集中する大量の売り注文によって価値が暴落するのを恐れる投資家は、そういった理由で売る人よりも先に売ろうとしますし、納税資金を確保するために早期から換金する人もいます。そうして余計に価値が落ちてしまうと、変動に慌てた投資家たちがパニック売りをしてしまうこともあるわけです。他にも、損している仮想通貨がある投資家は、節税のためにその仮想通貨を損切りする可能性もあります。とにかく年末は売りの連鎖が起きやすい時期で、価値は暴落しやすいのです。
年末が終わっても油断はできません。何らかの理由で年内の利益確定を見送った人は、年始に持ち越し売りをするからです。ここでも、やはり売りの連鎖は起きてしまう可能性が高くなります。実際、2017年には年始にビットコインの価値が半減するほどの暴落が起きています。このような理由で、年末年始には必ずと言っていいほど仮想通貨が価値を落としやすいのです。
中国・韓国・アメリカで相次ぐ規制の強化
中国や韓国が、投機対象として仮想通貨を利用することや、マイニング事業が拡大を見せていることに警戒して、ここ数年は規制の強化が続いています。アメリカの取引委員会でも、ICOでのトークン発行を一部取り締まろうという動きが出ています。これらの規制を懸念して、新規の投資家や投資対象は生まれにくくなったほか、すでに投資している人も少なからず、仮想通貨から離れる向きを見せています。
特に中国で、ビットコインのマイニングを行っている採掘者による電力消費を制限する、という計画がなされていることは重大な要因です。2018年1月3日には、中国人民銀行の会合でも話し合われたとされており、この計画が現実となる日も遠くはないと考えられます。仮想通貨のマイニングには大量の電力が必要になるため、この電力消費を何らかの形で解決するのか、そもそも事業から撤退するのかという決断が迫られているのです。
もし中国のビットコイン採掘者がこの件で減ってしまうと、ただでさえ遅い決済がさらに遅くなることは避けられず、様々な点で不便になるためビットコインから離れる投資家が増えるでしょう。投資家が離れて仮想通貨が売られると価値は当然落ちるので、それを予測する投資家が今から先売りしたであろうことも、年末年始暴落の一因となっています。
また、韓国の金融当局は、仮想通貨を投機対象として取引することを抑えるために動いていますが、その協力を日本と中国に仰いでいることも問題と言えます。2017年12月には、アジア諸国の副財務官クラスを集めた意見交換も行われており、アジア全体に規制の動きが広がることを予想しているからです。そうなれば、今以上に投資家が離れることは避けられず、再び暴落することになると思われます。
除外された韓国の売買価格データ
2018年1月8日に突然起こった仮想通貨の暴落は、この件が最も大きな原因になっています。仮想通貨の価格を発信する情報サイトである「コインマーケットキャプ」が、価格の指標を計算する際に韓国の売買価格データを一切除外したのです。
仮想通貨ブームが発生している韓国では、他の国よりも高い値段で仮想通貨が取引されています。その値段があまりにも高く、取引の量も十分に多いことから、取引価格の平均値を不自然なほど引き上げてしまっているのが現状です。そこで、より正確な取引価格の平均値を取るため、韓国の売買データを除外する判断に至ったという経緯があります。
さて、取引価格の平均値を大きく引き上げていた韓国のデータを除外するとどうなるでしょうか?当然、仮想通貨の指標価格は急激に下がることとなります。すると、投資家は突然の大きな下げ指標に驚き、損しないために慌てて売ろうとします。このパニック売りが誘発されたことこそ、暴落につながった最大の理由なのです。
ただ、この暴落が仮想通貨そのものに起因するものではないと知った投資家は、すぐに買い戻す動きを見せました。全ての仮想通貨はおおむね落とした価値に近い分をV字回復させ、わずか数時間ほどで暴落前に近い数字まで戻ってきています。2018年1月8日の夜から9日の未明にかけてチャートを見れば、きれいなV字を描いていることがお解りいただけるかと思います。
円取引量の減少も一因と言われているが・・・
年末年始に仮想通貨が急落した原因の1つとして、円での取引量が減ったことも挙げられています。2017年の後半は日本円でのビットコイン取引額が全体の6割近くを占めるなど、世界一の取引量を長らく保ってきましたが、2017年12月だけで大きく落ち込んで2割程度にまでなったのです。そして年末にはビットコインの価値も大きく下がったことから、日本円での取引額が減ったことが価値暴落の一因になっている、という説が生まれてきました。
ただ、ここまで紹介してきた3つの理由に比べると、果たしてそこまで大きな影響があったのかどうかは疑問ですね。日本円での取引額は2017年12月の間ずっと落ち続けていましたが、ビットコインは12月末になるまでむしろ上がっていたからです。
これから仮想通貨の価値はどうなるか
この年末年始、相次ぐ暴落騒ぎで慣れない新規投資家の方は特に戸惑ったかと思います。が、仮想通貨は暴落したあとに反発して急騰するのが定番です。目を疑うほどの暴落が起きても、基本的には暴落する前の値段まで戻ってきます。なぜなら、仮想通貨に期待しているものの持っていない人などが、可能な限り安いタイミングで大量に買いたいと考えているからです。
こういった人々は、仮想通貨の価値が暴落したときに買い注文をしてくれます。なので、何か仮想通貨の信頼を決定的に失うなどして、彼らの期待を0にするようなことが無ければ、価値が暴落しても支え戻してくれる流れになるのです。つまり、仮想通貨に期待して欲しいと思う人が一定数いる限りは、短期的に暴落したとしても長期的には成長し続けることになります。
しかし、そういった期待が今年中に無くなってしまうことも十分考えられます。最もたる問題はマイニングが追い付いていないことで、どの仮想通貨も決済処理が非常に遅いなどの問題を抱えている点がネックなのです。セキュリティ上の懸念点も多いので、そうした不安や被害から廃れていく可能性もあります。逆に、これらの問題が解決されて便利になれば、今以上の高騰を見せるかもしれません。2018年、仮想通貨の価値を左右するのは「期待度の高さ」だと言えるでしょう。