あらゆる場所で相次ぐ仮想通貨の規制国のみならず銀行でも始まった全面規制がもたらす影響とは

仮想通貨というものが登場してから今に至るまで、その取引やマイニング等を規制する動きは各国で見られていましたが、その動きは近年さらに加速しています。特に中国は早くから規制を推進していましたし、最近だと韓国の規制が頻繁に強化されているのはご存知でしょう。しかし、今や国だけではなく銀行が主導して行う規制も徐々に加速してきており、あらゆる場所や場面で仮想通貨が規制されることは、もはや当たり前になってきています。このような規制の連続で、仮想通貨にはどのような影響が懸念されているのかを調べました。

銀行が主導して行う規制の数々

このごろ世界各国の銀行において、内外問わず仮想通貨の取引を規制する動きが見られます。例えばスウェーデンにある北欧最大規模の銀行、ノルデア銀行では、ビットコインをはじめとした仮想通貨の取引を全面的に禁じると、全ての職員に通知しました。仮想通貨のハイリスクな性質に対して、職員や銀行そのものを守る施策が十分でないことを理由に挙げています。ノルデア銀行からすれば、仮想通貨を安全に運用できるような環境づくりを国が担ってくれないので、やむなく禁止するに至ったという具合でしょう。

この規制は2018年2月28日から適用され、既に仮想通貨を所持している職員に向けては、その売却を義務付けることこそ無いものの、歓迎するスタンスを取っています。一部例外も認められるとはいえ、ノルデア銀行の従業員数は3万人以上にのぼるため、この中の投資家たちが一斉に売却するようなことでもあれば、仮想通貨の価格に少なからず影響を与えると考えられます。銀行による規制は、他にもアメリカのメリルリンチ銀行やインドの主要銀行によっても行われていますが、インドの主要銀行が揃って行う規制の影響は行員だけに留まりません。

というのも、インドの主要銀行は行員の取引を規制するだけでなく、なんと一般の取引用口座にまで規制をかけ始めたからです。何らかの機能的制限がかかってしまう場合もあれば、最悪の場合は口座の封鎖にまで発展しており、投資家および取引所に与えるダメージは計り知れません。

ここまで強固な規制に至った要因は2つあると言われています。まず1つ目は、インド政府の財務省が「仮想通貨には多大なリスクがある」とする警告文を発表したこと。もう1つは、カルカッタ市のある弁護士が「ビットコイン使用禁止を求める」公益訴訟を起こしたことです。結果、インド国内では仮想通貨規制のムードが急激に強まる形となりました。

常に強化され続ける政府主導の規制

政府主導で行われる仮想通貨の規制も、近年どんどん加速しています。2018年に入ってからでも、既にそういったニュースは後を絶ちません。韓国は、1月30日から無記名預金口座を仮想通貨の取引に使えないよう制限し、口座の名義と仮想通貨取引に使ったアカウントの名前が一致しない入金は認めない方針を示しました。これには、高い匿名性を利用したマネーロンダリングに対応する狙いがあります。また、ブラジル政府は国内の資産が海外へ流れることを危惧してか、仮想通貨への直接的な投資を禁止。あわせて同国の証券取引委員会は、仮想通貨を金融資産とは認めないことを決定しました。

1月14日には、アメリカの財務省長官がマネーロンダリング取り締まりに向け、G20でも緊密に協力していくとの方針を示したこともあり、政府主導の仮想通貨規制はますます進んでいくことでしょう。

仮想通貨の規制は全世界で協調して行われるべきとの論調

国のみならず銀行でも始まった全面規制がもたらす影響とは仮想通貨の規制は、現時点だと一部の国だけでどんどん推し進めている格好になっていて、日本を含む多くの国はほとんど規制を入れていないというのが現状です。ただ、仮想通貨は既に世界規模で取引されているものである以上、全世界が足並みを揃えて規制・監視に乗り出すべきとの論調が出ています。特に、不正な手段で得た金の出所を判り辛くする資金洗浄が容易にできてしまうという点は、仮想通貨を規制する最大の理由でしょう。しかし、ブロックチェーンをはじめとする画期的な技術に加え、そこから応用して作られる様々な技術や、ICOを利用した企業の資金調達など、仮想通貨には魅力的な点が多くあるのも事実。

特に金融機関とこういったIT技術の連携は、新たな産業の形成や経済活動の効率化にも繋がるメリットがあり、現在の規制強化一辺倒なムードを快く思わない人も多くいます。また、一部の国では仮想通貨をデジタル法定通貨として認める動きもあります。これを取り入れることで大きなメリットのある国があるからです。例えば銀行システムがあまり発展していないアフリカでは、現金をそのまま持ち歩くのではなく、仮想通貨で資産を管理すればより安全です。一方、経済危機に見舞われるベネズエラでは、現行通貨のハイパーインフレから脱却する手段として、仮想通貨の発行を提案しました。

このように、今までの通貨では解決が難しかった数々の問題が、仮想通貨によって解決できる可能性があるというメリットを考えると、やはり一概に規制を強めるだけではいけません。規制は最低限必要な分だけに止め、利便性とのバランスを取ってほしいものですね。

今や規制ニュースの常連となった韓国の投資家たちは

仮想通貨への規制が各地で行われ始めている昨今においても、韓国の規制に次ぐ規制は特別な注目を浴びています。1月18日、なんと韓国は仮想通貨そのものを禁止する可能性を示唆したのです。取引所の閉鎖や一部役職に就く人の取引禁止など、部分的な規制は今までも世界各地でされてきましたが、ついにその全てを規制することに乗り出してきたため、韓国にいる投資家の多くは恐怖のあまり手を引くと見られています。

一方、これまで長期間取引を行ってきたベテランたちは、「いくら韓国で規制が進んでも規制の緩い外国で取引できる」と楽観視しています。規制の緩い国でアカウントを開設すれば韓国人でも取引は可能であり、匿名で行われる取引にまで踏み込んで規制するのは無理があります。VPNを使ってIPアドレスを隠すなどの手段なら、政府の目を盗んで取引することも容易ですし、ハードウェアウォレットを使えばオフラインで仮想通貨を保管することも可能です。

結局、ベテラン投資家たちは国単位の規制を大事とは思っておらず、いとも簡単に対策してしまいます。いくつかの国が規制しただけだと抜け穴だらけで意味があまりないため、ドイツなどの国が前述したような「全世界で同じ規制を取り入れるべき」とのスタンスなのです。

仮想通貨の規制が与える影響

政府主導か銀行主導かに関係なく、何か新しい規制がなされたら大きく価格を下げるというのは、もはや仮想通貨が暴落する理由の定番となりつつあります。こういったニュースに敏感すぎる投資家は規制が発表されるとすぐ売りますし、それで値段が下がろうものなら、新規の投資家たちは「売り時を逃すまい」と次々に売り続き、近年よく見られるような暴落につながっていくのです。しかし、実際には全世界がまとめて規制に乗り出さない限り効果は大きくなく、取引を続ける古参投資家たちの動きなどで徐々に値段は戻っていきます。

短期的・中期的に見れば、国・銀行といった単位で行われる規制にも、仮想通貨の価値に対する影響は確かにかなり大きくなりますが、長期的に見れば下げた分は戻ってきているのです。それどころか、例えば中国が国内の取引所を規制した時には、いったん値を下げてから8倍ほどまで反発で跳ね上がりました。規制ニュースで値を下げているときは、投機目的で仮想通貨を買う人にとって買い時、と言っても過言ではないかもしれません。

仮想通貨そのものに対する影響という観点で見れば、計り知れないものがあると考えられます。ブロックチェーン・ICOなどといった画期的な技術が埋もれてしまうリスクや、人々の関心が離れていくにつれ仮想通貨産業が衰退するリスク。どちらも現実になってほしくはありませんが、その可能性は十二分に有り得ます。

どんどん強まっていく仮想通貨の規制は、普段から投機目的で購入している人には大した影響がないものの、将来的に決済利用がどこでもできる正真正銘の「通貨」になることを期待する人々や団体にすれば、あまりにも大きな影響が出ることになりかねません。