仮想通貨は「カネ」の扱いとなるので税金はかからない
仮想通貨には、目に見える、手で触れるようなお札もコインもありません。では、仮想通貨はモノだと思いますか? それともカネだと思いますか? 「仮想通貨も通貨として通用しているからカネでしょう。どうしてそんな当たり前なことを質問するの?」と思うかもしれませんが、これは大事な大事な問題です。というのは、日本ではお金を払ってモノを買うと、現在税金として税率8%の消費税を上乗せして払わなければならないからです。1万円のモノを買うと、税金(消費税)を加えて1万800円を支払います。一方、お金を別のカネに交換する時は、税金はかかりません。たとえば日本のお札、コインを米ドルやユーロのお札に交換する時、8%の税金(消費税)はかかりません。1米ドル=113円の為替レートの時に10ドル札10枚がほしければ1万1300円を出せばよく、税金(消費税)分の904円を余計に支払う必要はありません。それと別に交換手数料を支払えば、米ドルのお札10枚が手に入ります。つまり、モノを買うには税金(消費税)が必要でも、カネには税金は不要なのです。
ところが、仮想通貨が正式に法律で「モノではなくカネ」とされ、税金がかからないとされたのは、ごく最近でした。昨年2016年5月25日、国会で「資金決済に関する法律(資金決済法)」の改正案が可決・成立して今年2017年の4月1日から施行されています。この法律で、仮想通貨は「財産的価値がある」と認められて、円や米ドルやユーロなど一般の「通貨」と同じであると、正式に認められました。モノではなくカネなので税金はかからないことになりました。
仮想通貨を使うと税金が発生する
正式に税金がかからないことが決まった仮想通貨ですが、別の税金がかかる可能性が出てきました。それは「所得税」です。所得税というと、サラリーマンの人は毎月の給料から差し引かれている税金だと思っているかもしれません。学生さんは、アルバイト代から税金(所得税)が差し引かれて渡されることもあります。でもそれは、所得税の中の一部で、それが全てなのではありません。給料、ボーナス、アルバイト代などは「給与所得」と言います。天引きは「源泉徴収」という方法で、会社が全員分をまとめて、税務署に納めています。しかし、サラリーマン以外の人、たとえば農家の人は収穫した野菜を売ったお金、八百屋さんは野菜を店に置いて売れて得たお金に税金(所得税)がかかります。実際は、農家の人は肥料代や出荷用の軽トラックのガソリン代など、八百屋さんは野菜の仕入れ代や店の電気代などを差し引いて残った「所得」に、税金(所得税)がかかります。農家の人も八百屋さんも1年分の税金(所得税)を自分で計算して、3月15日までに税務署に「確定申告」して納めます。
税金(所得税)には、そうしたもの以外に「雑所得」という税金があります。たとえばサラリーマンが文章を書いて雑誌に載って原稿料をもらったり、講演会でしゃべって講演料をもらったりしたら、原稿料や講演料は「雑所得」という税金です。実は、円を仮想通貨に交換すると、この雑所得という税金が発生したとみなされて、所得税という税金が課税される可能性があるのです。その場合、給料のように税金は源泉徴収(天引き)はされないので、自分で税務署に確定申告を行って税金を納める必要があります。なぜ税金がかかるのかというと、仮想通貨は「カネ」で、日本円との交換レートが変動しているから税金がかかるのです。
仮想通貨と円を交換することで税金はかかる
日本は円、アメリカは米ドル、ヨーロッパの多くの国はユーロ、英国はポンド、中国は元というように、国が違えばその通貨も違います。輸入、輸出をする時や旅行で国境を越える時は、銀行や空港の両替所で通貨を交換します。その交換レートは24時間、動いています。そのため、タイミングによってはわずかではあっても得をしたり、損をしたりします。たとえば、ハワイに旅行する前に、交換レート1米ドル=110円の時に10万円を909米ドルに交換して、帰国の際に300米ドル余ったのでそれを円に交換した時、交換レートが1米ドル=115円(円安)に変わっていたら、3万4500円です。交換レートがもし1米ドル=110円のままだったら、3万3000円です。交換レートが変わったおかげで、1500円得をした、というわけです。逆に、交換レートがもし1米ドル=105円(円高)に変わったら、3万1500円で1500円損します。実際は、通貨を交換する際には銀行や両替所に支払う手数料が必要なので、旅行中に円安になったことによる1500円程度のお得分は手数料で消えてしまうのですが、外貨に交換すると、交換レートの変動で得をすることも、損をすることもあると、覚えておいてください。
仮想通貨で税金の支払いは出来ない
仮想通貨は、税務署など税金を取るほうから見れば、外貨と同じとみなされています。なぜなら、円と仮想通貨の間の交換レートは、たえず動いているから税金が発生するのです。たとえば、仮想通貨の代表選手「ビットコイン(単位:BTC)」は、一般の通貨との交換レートが動いています。今年9月は、月の初めに1BTC=5000米ドルを超えたかと思えば、1BTC=3000米ドルを割り込んだこともあり、米ドルとの交換レートは同じ月で40%以上も動きました。円との交換レートも、ほぼ同様に大きく動きました。そのため、仮想通貨を持つと、外貨と同様に、交換レートの変動によって税金が得することも、税金が損することもあるのです。
税務署など税金を取る方は、損をしていたら何も言いません。儲けが出ていなければ「ない袖は振れない」ので税金は取りません。しかし、仮想通貨の交換レートの変動で得をしていたら、目をつけられ税金を取ることがあります。儲けから税金が取れるからです。もし交換レートで得をしたら、その後、仮想通貨を買物の支払いに使ってしまい、手元に残っていなくても、言い訳はできません。ビットコインなど仮想通貨で買物の支払いができるお店が増えていますが、たとえば仮想通貨でお菓子の詰め合わせを買った場合、円から仮想通貨に交換した時には「15個入り」しか買えない金額だったのが、その後の交換レートの変動によって「20個入り」を買うことができたら、お菓子5個分が「儲かった」とみなされて、「雑所得」という名前の税金がかかることがあります。その税金はお菓子や仮想通貨ではなく、円で支払います。日本の法律では「税金は円の現金で支払う」と、決められているからです。法律が変わらない限り、外貨や仮想通貨は税金の支払いに使えません。
仮想通貨の税金には確定申告が必要
国税庁は「タックスアンサー」という、税金についての「Q&A集」をネットで公開しています。税金についての問い合わせと回答に9月、「ビットコイン」という言葉が初めて登場し、話題になりました。それには「ビットコインを使用することで生じた利益は、所得税という名の課税対象となります」「ビットコインを使用することにより生じる損益は、原則として、雑所得という税金に区分されます」と書いてあります。その「損益」とは、「邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益」と、カッコ書きされています。やさしく言えば、円など一般の通貨と仮想通貨の交換レートの変動で生じる利益には税金がかかります、ということです。国税庁は「ビットコイン」と言っていますが、ビットコインに限らず、他の仮想通貨にもそのまま適用されることでしょう。
ただし、仮想通貨で得た利益には税金がかかると言っても、「雑所得」という税金は年間20万まではかかりません。仮想通貨で得た利益に、FX(外国為替証拠金取引)のような外貨で得た利益、ネットオークションで得た利益、サイトやブロクに掲載した広告で得た利益、原稿料や講演料などを合算します。合計額が年間20万を超えたら税金がかかるので、確定申告をします。その場合、税金は合計額ではなく、20万を超えた部分に税金がかけられます。その20万を税金の「控除額」と言います。実際の所得税の金額は、確定申告で雑所得と給与所得など他の所得を全て税金を合算して、計算します。所得税という税金の税率は5%~45%の間で変動します。
仮想通貨の交換レートの変動が激しいと言っても、個人が年間20万以上の利益をあげられるようなケースは、100万単位の資金を用意して、交換レートの変動を利用して仮想通貨を買ったり売ったりして利ざやを稼ぐ「仮想通貨投資」を行った場合がほとんどでしょう。投資の一種で、外貨を売り買いして利益をあげるFX(外国為替証拠金取引)を、外貨の代わりに仮想通貨でやっているような投資家です。円を仮想通貨に交換して、個人が日常の買物に使う程度では、交換レートが大きく変動しても、それで得る利益は年間20万にはなかなか達しないでしょう。ただ、給料やボーナスを仮想通貨で受け取ったら、金額が大きくなるので、円に交換して支払いに使うまでの間の交換レートの変動による利益が年間20万を超える可能性は大きくなりそうです。はたして今後、そんな会社は現れるでしょうか? もし現れたとしても、あなたは給料を円ではなく、仮想通貨で受け取ってみたいですか?