ビットコインのような仮想通貨は、ドルなど外貨と同じように日本円と対比した場合の価値が変動するため、価値が上がれば儲けることができます。収入を得た場合、基本的にはそれに対して税金を納める必要があり、その手続きとして確定申告を行います。ただビットコインのような仮想通貨は歴史が非常に浅く、税金計算上の扱いがはっきりしていませんでした。
平成29年9月に国税庁は雑所得と回答 多くのビットコイン投資家は悲観的に
ビットコインの投資家や、税のプロである税理士がこうではないか?という想定はしていましたが、平成29年9月に国税庁はHP上の「タックスアンサー」で、ビットコインの使用による利益は雑所得に該当すると発表しました。「使用」によるとありますので、ビットコインで物を買った時でも確定申告が必要になる場合があります。
例えば10万円をビットコインに換えたケースを考えます。そのビットコイン全部を円に換えて40万円になった場合、30万円分が儲けになりますのでこれは雑所得に該当し、確定申告の対象です。ビットコインから円に換えるかわりに、ビックカメラなどで40万円分の商品を買った場合にも、30万円が雑所得となります。
所得には、サラリーマンやパートタイマーが得ている給与所得や、株式投資家にはおなじみの配当所得、アパートの大家さんが入居者から得ている不動産所得など10種類ありますが、雑所得は9種類の所得に分類されないその他の所得的な色合いが強いと言えます。税金計算上、配当所得・不動産所得などは優遇されています。しかし雑所得はこれから説明するように、優遇されているとは言いがたいためにビットコイン投資家は悲観的です。
損失が出た時、同じ年や将来3年間で発生した他の所得からマイナスできない
雑所得に該当することでメリット・デメリット両方ありますが、悲観している投資家が多いためデメリットから説明します。個人経営のお店の店主が申告する事業所得は、商売に失敗すれば損が生じます。アパートも最近は乱立してしまい空き室が増えているため、不動産所得で損が生じるケースも増えています。
これらの所得に関しては、マイナスになれば給与所得など他の所得から差し引けることになっています。給与所得が50万円でアパート貸しの損が30万円であれば差し引き20万円となります。逆に給与所得が30万円でアパート貸しの損が50万円の場合など、差し引いてもなお損が残る場合は、将来3年間にわたり(この例では20万円の)損失を繰り越すことが可能です。ただし繰り越しのほうは、会計ソフトなどを使って上場企業が公表しているような決算書を作成し(上場企業ほど決まりは厳格では無いですが)、青色申告の届出を出していることが条件です。
株式投資やFX投資も損が出やすいものですが、これらの所得は分離課税の所得と決められています。損が出ても他の所得から差し引けませんし、逆に儲けが出ていても事業所得や不動産所得のマイナスで差し引くこともできません。しかしこれらの所得で優遇されているのは、3年間にわたっての損失の繰り越しで、損失の申告は必要ですが青色申告のような届出は必要ありません。株式投資において平成26年に30万円の損、平成27年・28年は0円で、平成29年に50万円の所得があれば、平成29年では20万円の所得になります。
ただし例えば株式投資のマイナスとFX投資のプラスの差し引きはできませんし、株式投資のプラスとFX投資のマイナスも同様で、またがっての差し引きができません。ビットコインは雑所得扱いされましたが、給与所得が50万円でビットコインの損が30万円でも、20万円でなく50万円に対して課税されます。同じ年に他の所得から差し引くことも、将来3年間にわたって損失を繰り越すこともできないのです。損が出やすい投資にしては冷遇されているというのが悲観の原因です。
最高税率が50%を超える場合もある
株式投資やFX投資の儲け(所得)に対しては、所得税率15.315%、住民税率5%と一律で決まっており、それ以上納める必要はありません。不動産を売却した場合の所得に対しても同様です。しかしそれ以外の所得に対しては、住民税率は10%(一部の地域では若干の増減もあり)ではあるものの、所得税率は所得が増えるほど高くなります。
最も低い税率は5.105%ですが、最高税率は45,945%で住民税率とあわせると50%を超えることになります。課税所得4,000万円を超えればの話ですが、儲けの半分以上を税金として納めなければいけないというのはかなりの負担です。これは20%ちょっと納める株式投資やFX投資の倍以上です。
同じ年であれば差し引ける所得も一部ではある
雑所得扱いはデメリットが大きいのですが、限られた範囲ではメリットもあります。同じ雑所得内に限っては、プラスマイナスができるということです。雑所得に分類されるもので代表的なのは、下記のものです。
A.副業で雇用契約によらないもの(ネットビジネスなど)
B.年金収入
C.外貨預金の為替差損益
Aは自営業者が携わっている場合は事業所得になりますが、サラリーマンが副業でやるものは雑所得扱いです。ライターやシステム開発などクラウドーソーシングで請け負ったり、メルカリやオークションサイトで転売したりしていて250万円の所得が発生していても、ビットコインで100万円損している場合は、雑所得は差し引き150万円になります。なお雇用契約による副業(アルバイトなど)は給与所得になるので、ビットコインの損を差し引きすることはできません。
Bの年金はほぼ高齢者のみが受けられる恩恵ですが、公的年金の場合はもらう段階で所得税が差し引かれて手取りが低くなっています。ビットコインの損が生じて公的年金の所得から差し引くと、引かれていた所得税が還付されることが多いです。公的年金を年間200万円もらっていて、そこから所得税5万円が引かれているとします。65歳以上でこの年間収入の場合は、公的年金にかかる雑所得は収入より120万円低くなって80万円になります。ビットコインの損失が80万円で、他に所得が無ければ雑所得も0円ですから、仮徴収されていた5万円の所得税は還付されます。
Cの外貨預金の為替差損益は、FX投資で得られる為替差損益と扱いが異なり、ビットコインと同じ雑所得です。例えばビットコインでは100万円儲かったけど、円高が進むなどで外貨預金では10万円の為替差損が生じた場合、90万円の雑所得となります。
FXや国債などのように扱いが変わる可能性はある
ビットコインの取り扱いを示したのは、タックスアンサー1ページ数行での公表です。株式投資のように明確な法律上の決まりがあれば、所得の説明だけで何十行にも及びます。金融業界の要望をもとに、政府や政権与党の税制調査会で法律上の取り扱いが明確になった場合は、扱いが変わる可能性は十分にあります。かつてFX投資による所得も現在のビットコインと同じ雑所得であり、所得により所得税率が変わるとともに、損失の繰り越しもできませんでした。法律が変わり平成24年分から先物取引とともに一律所得税率15.315%、住民税率5%に変わり、損失を3年間繰り越すこともできるようになりました。「先物取引に係る雑所得等」という枠ですが、雑所得等になっているのは平成23年分以前からの名残です。
また国債や地方債、社債などの売却益に関しては、従来は非課税であったり雑所得であったりと扱いがまちまちでしたが、平成28年分から売却益・利子ともに、株式投資と同じ枠で差し引きや3年間損失繰り越しができるようになりました。平成28年分の改正は、投資に関わるものの大改正でした。ビットコインなどのような仮想通貨ももっと普及することにより、今後の取り扱いが変わる可能性はあります。国税庁の取り扱いには悲観的で仮想通貨離れが進む観測もありましたが、将来も見すえてあまり悲観的になりすぎないで欲しいものです。