アルトコインはビットコイン以外の仮想通貨
仮想通貨の世界では「アルトコイン(オルトコイン/altcoin)」という言葉が聞かれます。簡単に言えば、それは「ビットコイン以外の仮想通貨」のことです。「アルト」は英語の「オルタナティブ(alternative)」の略で、その最初の3文字です。オルタナティブは「もう一つの」「代替の」「代用の」という意味があります。アートや音楽やファッションの世界では、「オルタナティブ」「オルタナ」というと主流をちょっとずらした感覚の「ニューウェイブ」に近いような意味で使われ、それが好きな人は美術大学の学生などが多く「ちょっと変わっているけど、面白い人」と思われています。
しかし仮想通貨の世界では、アルトコインは「反主流派」でも「ジェネリック」でも「ちょっと面白い存在」でもありません。それどころか将来、今は仮想通貨の代名詞になっているビットコインを押しのけて「仮想通貨の主流」にのし上がる可能性さえ、秘めています。そう言える理由として「一番最初に生まれた仮想通貨であるビットコインは有名になりすぎた」ということがあります。「有名税」という言葉がありますが、ビットコインは仮想通貨の代表として、世界のメディアから、欧米日の金融当局から、経済評論家から、ネット上の批判勢力から、仮想通貨を批判する矢で狙う的にされました。特に中国政府には「仮想通貨のせいで、中国元が軽視される可能性がある」として目のかたきにされて、中国国内ではビットコインをはじめとする仮想通貨の取引ができなくなってしまいました。新しい世界に一番乗りしてそれを切りひらく草分け、パイオニアは、風当たりもまたきついのです。そのため「何をされるかわからないから、こわくてビットコインなどの仮想通貨には手を出しにくい」と思う人が出てきます。
2018年、ビットコインという「神」は死ぬ?
仮想通貨の代表ともいえるビットコインは別の方向からも逆風が吹きそうです。それは「値動きが、それまでよりもおとなしくなる」ことで起こります。2017年、仮想通貨の知名度があがり、仮想通貨市場へ大きな資金が流入したことで、仮想通貨の代表ともいえるビットコインのドルに対する交換レートが年初から年末にかけて10倍以上にもなりました。しかし、2018年はさまざまな理由で、仮想通貨ブームの火付け役ともいわれたビットコインの高騰はもう二度と起こらないだろうと言われています。理由の一つは2017年12月にアメリカ・シカゴの2ヵ所の取引所でビットコイン先物の取引市場が設立されたことで、もう一つはビットコインに投資するETF(上場投資信託)が2018年中にもニューヨーク証券取引所に上場しそうなことです。そのどちらも、ビットコインの「仮想通貨らしい」とも言える大幅な値動きの上下動を抑えて、安定させる方向に働きます。たとえば先物市場では値動きが行きすぎると「サーキットブレーカー」が発動して取引が止まります。値動きが安定するのは投資の対象として成熟した証拠で、本来は良いことなのですが、ビットコインという仮想通貨を、投資の対象というより、それに「一攫千金」を夢見ていた人たちは、「チェッ、面白くない」と舌打ちするでしょう。ビットコインの交換レートの相場がこの先、10倍になりそうならともかく、2倍や3倍程度なら「ビットコインなんか、もう終わりだね」と冷たく見放すような人たちです。仮想通貨に投資をしている人達は、その大きな値動きを好んで取引をする人が多いので、株であれば「すごい値上がりだ」となるところが、仮想通貨だと「値動きが少なくておもしろくない」ということになってしまうのです。
このように、株の世界なら、株価が2倍、3倍になるのはめったにない、すごいことですが、「濡れ手にアワの大儲けをして、“貧乏”に一気にバイバイ」したいような人たちは「仮想通貨の値上がりが10倍」ぐらいでないと反応しません。2017年、交換レートが激動したビットコインは、仮想通貨で大きな利益を狙う人々にとっては、まさに「神」でしたが、良くて2倍や3倍程度にとどまれば「神」は死にます。そんなことで、「ビットコインはこわい」「ビットコインでは、もう一攫千金のドリームは見られない」と思った人たちが、ビットコイン以外の仮想通貨「アルトコイン」に向かう流れができます。「第二の仮想通貨代表のコイン」とも言える「第二のビットコイン」探しは、すでにもう始まっています。
「第二のビットコイン」になれる条件は?
アルトコインは、世界に1,000種類以上あるといわれています。それがつくられた目的は大きく分けて二つあり、「ビットコインより技術的に優れた仮想通貨をつくろう」「ビットコインより手軽に使える仮想通貨をつくろう」など、多少なりともビットコインを意識したものと、ある地域だけ、ある分野だけ、あるいは期間限定で使われるような「ローカルな仮想通貨をつくろう」があります。第二、第三のビットコイン候補はもちろん前者ですが、日本でそうなれる条件は何なのでしょうか?
まず必要な条件は「英語ができない日本人が楽に買えること」でしょう。日本の仮想通貨取引所ですでに取り扱っている仮想通貨なら、その条件を十分に満たしています。「近く取り扱い開始予定」でもいいと思います。しかし海外の取引所でしか取り扱わない仮想通貨では、取引所に口座を開く時も、くわしい情報を得る時も、実際に売買する時も、英語ができなければなりません。英語が、専門用語も含めて「だいたいわかる」程度では、手を出すのは危険です。仮想通貨についてネット上で情報発信している人の中には、「英語力はあって当たり前」という前提で「○○はいいですよ」と話をしている人がいます。その人に責任はありませんが、自分の英語力に自信がない人はくれぐれも注意してください。
次に必要な条件は、ドルや円との交換レートが「まだ安いこと」です。短期間で10倍以上の「爆発」に期待したいなら、それは絶対の条件でしょう。2倍、3倍程度でよければ選択肢はもっとひろがります。過去1年ぐらいの値動きは必ずチェックしてください。それまでずっと高かったのが一時的に安くなっているようなら買うチャンスです。逆に、2017年後半からどんどん高くなっている仮想通貨は、様子を見たほうがいいでしょう。それ以外に、発行量の上限が少なく抑えられている仮想通貨は、需要が増えた時でも供給に限界があるために需要と供給のバランスが崩れて高騰しやすく、「第二のビットコイン」候補になりやすいと言えます。
なお、2017年にビットコイン(BTC)から「ハードフォーク(分岐)」して誕生した「ビットコインキャッシュ(BCH)」や「ビットコインゴールド(BTG)」、2016年に「イーサリアム(ETH)」から分岐した「イーサリアム・クラシック(ETC)」などは、ブロックチェーンの仕様や通貨としての特徴がビットコインやイーサリアムと「双子」のように似通っていて、値動きの連動性もあるので、仕様を大きく変えるようなよほどの出来事でもない限り、「第二のビットコイン」になれる可能性は薄いでしょう。
「第二のビットコイン」候補おすすめ7種類
世界の仮想通貨の時価総額ランキングの上位10種は、次のようになっています(2018年1月3日現在)。
1 ビットコイン(BTC)
2 リップル(XRP)
3 イーサリアム(ETH)
4 ビットコインキャッシュ(BCH)
5 Cardano(ADA)
6 ネム(XEM)
7 Stellar(XLM)
8 ライトコイン(LTC)
9 IOTA(MIOTA)
10 TRON(TRX)
このうち5位のCardano、7位のStellar、9位のIOTA、10位のTRONは、日本の大手仮想通貨取引所(コインチェック、ビットフライヤー、ザイフ)ではどこも取り扱いがありません。いくら有望でも、英語が得意でない方にはおすすめしかねます。2位のリップル(XRP)と3位のイーサリアム(ETH)は、すでに「準ビットコイン」とも言えるような地位を占めています。オリンピックなら表彰台で銀メダル、銅メダルを受けるような仮想通貨で、ビットコインに代わって金メダルを受けても全くおかしくない実力と人気を持っています。
それに続くグループがネム(XEM)、ライトコイン(LTC)、モネロ(XMR)、ファクトム(FCT)、ダッシュ(DASH)などです。ネムとモネロは発行量が少ないために高騰しやすく、ライトコイン、ファクトム、ダッシュは取引のスピードではビットコインよりも優れています。
●リップル(Ripple/XRP)
円とユーロなど、異なる2つの通貨の交換や送金を円滑に行うことを目的に開発された仮想通貨で、システムの信頼性が高く、海外でも日本でも多くの金融機関に利用されています。処理のスピードや通貨交換時の手数料の安さが売り物です。
●イーサリアム(Ethereum/ETH)
ビットコインの基本技術のブロックチェーンに、契約文をつけられる「スマートコントラクト」という機能を持たせているのが売り物です。貸し借りなど法律上の契約がからんだ複雑な取引にも対応できます。
●ネム(NEM/XEM)
発行量の上限が約90億枚と決まっていますが、すでに上限いっぱいまで発行ずみでこれ以上は増えません。「スマートコントラクト」と、使えば使うほど取引手数料が報酬として支払われれるPOI(Proof of Importance)という機能が特徴です。
●ライトコイン(Litecoin/LTC)
発行量の上限はビットコインの4倍もあり高騰しにくいですが、ブロックチェーン上での処理時間がビットコインの約5分の1と、スピードには優れています。
●モネロ(Monero/XMR)
発行量の上限がビットコインより少ないだけでなく、「匿名性」というビットコインにはない特徴が売り物です。複雑な秘密鍵暗号によるセキュリティも優秀です。
●ファクトム(Factom/FCT)
技術的にはリップルの進化型で、記録や契約の文書を保管できる「スマートコントラクト」は、書類の閲覧がより簡単にできるようになっています。
●ダッシュ(Dash/DASH)
名前の通りにライトコインよりも速い処理スピードと、モネロのような匿名性が売り物になっています。
アルトコインもブロックチェーンの技術を利用するものがほとんどですが、決して「ビットコインのコピー」なのではありません。それぞれにビットコインにない技術的特徴と、処理スピードや匿名性などの売り物があり、お互いに競っています。はたして2018年以降、どの仮想通貨が人気を得てその交換レートが高騰するのでしょうか? 変化が非常に激しい世界ですから、全くノーマークのダークホースや「驚異の新人」が現れて主役の座につく可能性も、ないとは言えません。