2018年1月24日、主に金融機関の格付けを行うワイスレーティングが、いよいよ仮想通貨の格付けを行って公開しました。様々な点を評価してA~Eにランク付けされることとなる格は、その企業の株を買うかどうかなど投資家の動きも左右することがあるため、仮想通貨への格付けがどんな影響を及ぼすのかにも注目されてきたものです。今回は、それぞれの仮想通貨に付けられた格と、それらがどのような意味を持って影響を与えるのか調査しました。
格付けを行ったワイスレーティングとはどんな会社なのか
今回、この仮想通貨格付けを行って公開した「Weiss Ratings」は、企業の信頼性や経済的な安定性などを評価する、いわゆる格付け会社です。このような会社は他にもいくつかあるのですが、ワイスレーティングの出す結果は信頼性が高く、独立性も高いとして特段人気のものになっています。独立性が高いとはどういうことかと言うと、実はこの格付け会社は評価する対象の企業から報酬をもらっていないのです。
本来、第三者の目線で公平に行われるべきである格付けに報酬を与えている時点でおかしいのですが、残念ながらムーディーズやS&Pといった格付け会社は報酬を受け取っていました。当然、報酬を多く渡してくれる企業の評価は適正なものより高く付けられることとなります。アメリカで住宅バブルが崩壊してリーマンショックが発生したときにも、信頼性の低いサブプライムローン関連会社に対して、これらの格付け会社は明らかに不当な高評価を与えていました。
このような件もあって、評価する企業から一切の報酬を受け取らないワイスレーティングが、信用できる格付け会社として広く認知されるようになります。また、現時点で既に55,000を超える企業や投資商品の格付けを行ってきたことは、付ける評価の信頼性・正確性という点で安心できるでしょう。
ちなみに、なぜ仮想通貨の格付けに踏み切ったかという理由は、「多くの仮想通貨は過大評価されすぎている」と考えたからだそうです。仮想通貨の市場規模は目に見えてどんどん拡大しているのに、法整備や適切な規制は完全に出遅れている。にもかかわらず投資家たちは、仮想通貨がさも安全で将来性のあるものだと思っている現状を懸念しての公表だという見方がなされています。
あのビットコインですら高くない評価
価値や時価総額では長らく1位をひた走っているビットコインですが、ワイスレーティングによる格付けの結果は良いと言えるものではありませんでした。ランクはC+で、平均よりも少し上といったポジションになっています。ビットコインを今持っているなら持っておくに値するレベルではあるものの、購入を勧められるレベルではないことを意味するランクです。これには格付けを見た投資家からも、「なぜビットコインの評価がAではないのか」という質問が寄せられていました。
それに対しワイスレーティング社は、ビットコインにもAランクを付けた評価項目はあったものの、リスク・技術という大事な2つの項目で全くダメだったと述べています。まず良かった点についてはセキュリティ上の安全性と普及率、そして仮想通貨のジャンルを切り開く先駆者として成功した点を挙げています。
その一方、頻発するネットワークの障害や遅延による決済処理の遅さや、ネットワークコスト増大にかかる取引手数料の暴騰など、通信の面では散々な評価を受けました。価値の暴騰や急落も頻発することから、投資対象としてはリスクが高すぎることもマイナス材料です。さらには先駆者としてジャンルを切り開きながらも、発生した問題に対処するアップグレードが即時適応できないなど、更新性の低さも指摘されました。
良い点だけを見れば十分Aランクを取れる内容はあるが、それと同じくらい多くの悪い点も見られるため、今回のC+という評価に落ち着いたのでしょう。実際ワイスレーティングは、これから問題点が解消されていけば評価も上がるだろうとの見解を示しています。
ビットコインを格で上回ったイーサリアムなどの仮想通貨
このようにビットコインでさえも厳しい評価を下される中、それを上回った仮想通貨が5つもありました。イーサリアム・Steem・NEO・Cardano・EOSです。このうちEOSとイーサリアムは、格付けされた仮想通貨74種類の中でも最高評価のBランクを得ており、他の3つはB-となっていました。Bランクは、この仮想通貨が買いに値するものであるという評価の位置付けです。
中でも知名度の高いイーサリアムは、普及率が高いことや取引のスピードが十分速いことに加え、技術的な進歩の速さを評価されてのBランクとなりました。特に、ビットコインの評価が下がる要因となった更新性の点で、素早くアップグレードできるイーサリアムの技術へ軍配が上がった形です。
普及率という点では間違いなくトップと言えるビットコインですが、投機対象としても通貨としても全く安定していないことや、スピード感に劣ることなど欠点も数多いため、それらを総合して判断する格付けでは苦い結果が出てしまいましたね。
その他の仮想通貨には売りを推奨されるDランクも
これら以外にも、ワイスレーティングはたくさんの仮想通貨を評価しています。時価総額ランキングトップ10に入っている仮想通貨は軒並みC-以上を獲得しているものの、全体の2割弱は売りを推奨されるD~D+が付いてしまいました。
ちなみに、最近注目を浴びているリップルはCランク評価です。こちらも普及率やセキュリティの面ではAランク相当のものがあった一方で、度重なる価値の乱高下がリスク面でマイナス要素になったと説明されています。不特定多数のブロックチェーンを信用する分散型の仮想通貨と異なり、リップルを扱う取引所を信用しなければならない中央集権型である点が、技術面でマイナスとなりました。また、製作者側が行き過ぎた統制をしていることなども、評価の落ちた原因だと説明されています。
格付けされた理由とその影響
今回ワイスレーティングが仮想通貨の格付けへ踏み切った理由としては、投資家が賢明かつ安全に仮想通貨を購入できるようにする為とされています。普通、ここまで値動きの激しすぎる投機対象は敬遠されて廃れるものですが、それでも仮想通貨には多くの投資家が集まるし、将来性もある。なのに、仮想通貨の良し悪しを推し量る指標には乏しく、市場は混乱している。このような状況を打開するために、格付けしたとのことです。
また、この格付けの情報が公開されて以降、仮想通貨の市場にも少なからず影響が及んでいます。例えばBランクを得たイーサリアムは、それが発表されてから若干値上がりする動きを見せました。逆に評価が微妙だったビットコインなどは若干値下げしましたが、そのどちらも暴騰・急落と言えるようなレベルではなく軽微な変化です。じきに元の価格へ戻ったこともあり、今回の格付けが仮想通貨の価値に与えた影響は0に等しいと考えられます。
とはいえ、やはり格付けの結果を不安・不満に感じる人は一定数いるようで、韓国の投資家が格付けの情報を公開前に入手しようと、ワイスレーティング社にサイバー攻撃を仕掛けるまでに至っています。この攻撃は公開後も続いたそうですが、韓国人がSNS上で「ワイスレーティングのサーバーをダウンさせよう」と呼び掛けていたこともあり、低い格付けがなされることを恐れた韓国の投資家による攻撃と見ているようです。
結果、ワイスレーティングによる格付けで仮想通貨の価値が大きく変わることは無かったものの、特に危機感なく仮想通貨を購入していた投資家の方々にも、様々なデメリットがあることを明確に伝える良い機会だったのではないかと思います。これからも更新されるであろう格付けが、仮想通貨の未来を明るいものにすると願って止みません。