仮想通貨の取引を記録するブロックチェーン技術において、決済処理を計算するリソースは欠かせない存在。その計算を、処理リソースの提供という形で手伝ってくれる協力者たちに対し、御礼として新規発行の仮想通貨を分け与える。この流れをマイニングと呼んでいますが、実はこれ、個人でも可能なほど参入が容易なものなんです。それくらい簡単にできて、今や多くの企業も参入しているマイニングについて、現状を調査してみました。

仮想通貨のマイニングは全く素人の個人でも可能

実は誰でも可能な仮想通貨のマイニング今の時代、仮想通貨をマイニングするというのは全くの素人でも可能なことなんです。実際、私もこれを知ってやってみたところ、ものの10分ほどで採掘を開始するまでに至ることができました。近年どんどん仮想通貨が有名になっていくのと同調して、マイニング用のツールなども出始めているのです。特別な知識は殆ど必要とされず、最低限の使っているパソコン等デバイスに対する知識さえあれば、誰でも仮想通貨を採掘できます。

このようにマイニングを始めるうえで知識的なハードルは少なく、かつ道具的なハードルも低くなっています。使用するパソコンの性能に制限が無いのです。もちろん性能の悪いパソコンでは採掘スピードが落ちてしまうものの、そのようなデバイスを仮にマイニングへ使おうとしても問題ありませんよ。何なら現在ではスマートフォンを利用する動きも出ており、スマートフォン用の採掘ツールも既に登場しています。

一方、こうした採掘ツールの殆どにはウィルスが入っているとの情報も多くあります。しかし、アンチウイルスソフトを作るカスペルスキー社の公式ブログでは、採掘ツールの一部が「リスクウェア」であると言及されています。リスクウェアとは、使用者が意図してインストールを行い、使用している限りは全く問題の無い正規ソフトであるものの、他者に悪用されると危険をもたらすソフトのことを言います。つまり、自ら仮想通貨を採掘しようとして入れる分には、全く問題のないソフトということです。

こうしたリスクウェアは、インストールしようとする際にアンチウイルスソフトから「本当にいいですか?」という旨の通知がなされます。第三者から知らないうちにインストールされることを防ぐためです。逆にそれが本当にウイルスである場合は、基本的に確認などなく該当ファイルを削除する動作となります。

個人のマイニングで得られる収益は雀の涙ほど

始めるまでのハードルは極めて低いマイニングですが、実際に始めてどれくらいの収益を得られるのでしょうか。ネット上で調べた情報と自ら試した結果を総合して考えると、残念ながらお金を稼ぐ目的でマイニングを行うのは全くオススメできません。手に入る収益が雀の涙ほどにしかならないからです。私は試しに1時間、全力ではないもののパソコンを稼働させ続けたものの、それで1円ちょっと稼いでいるかどうか、という非常に情けない結果となりました。

ちなみに、マイニングを行う上で重要になるPCパーツはGPU、グラフィックパーツです。もともとはパソコンでゲームをする人が使うものなのですが、最近はマイナーが買い占めるために価格が高騰している、というニュースも話題になりましたね。そのGPUに数十万ほどかけた方の結果を見ても、およそ50円ちょっとしか1時間では稼げていませんでした。それどころか、この金額は全て稼ぎになるわけでもありません。

当然ながら、パソコンを稼働させるための電気代や、GPUだけでなくパソコンを構成するそれぞれのパーツにかけた初期費用などがかかってくるわけです。個人で可能な範囲のマイニングでは、ただでさえ入ってくる金額がショボいのに経費で殆ど0になる、という甲斐の無い結果に終わってしまいます。だから、稼ぐ目的で仮想通貨を採掘する考えは、やめておいた方が良いでしょう。

しかし大きな赤字になることもないため、投機対象としたい仮想通貨を少しでもタダ同然で手に入れる、という目的ならアリな手段だとは思います。今は価値が低いけど将来は上がりそうな仮想通貨を今から少しずつでも掘っておけば、それらが暴騰したときに思わぬ儲けを手に入れられる可能性は確かにあるのです。まあ、あくまでも娯楽のギャンブル程度に受け止めて、無理はしないのが最善ですね。

企業がこぞってマイニングファームを開設

今や多くの企業が参入するマイニングの現在に迫る私たち個人でもここまで簡単に仮想通貨を掘れてしまうわけですから、企業が参加してこない訳もありません。仮想通貨に興味を持っている企業は、最近になってマイニングファームを次々と開設し始めているのです。マイニングファームを簡単に説明すると、仮想通貨を採掘するためだけの処理リソースを大量に用意して集約させ、一括管理して利益を上げる、まさに採掘するための農場です。

例えばDMM.comは、石川県の県庁所在地・金沢市にて1000台にも及ぶほどのマシンを稼働させ、ビットコインやイーサリアムにライトコインなど複数のコインを採掘する、大規模なマイニングファームの運営を2月9日に開始しました。3月にはこのマイニングファームをショールームとし、一般人も見られる場所にする予定とのことです。電力節約のために寒い場所を選んだDMMですが、外国を選べばより寒い地域もある中で日本国内にこだわったのは、各種対応がスピーディーに行えることにありました。

他にもフォーサイドという日本企業が採掘に参加することを発表しましたが、こちらはカナダにマイニングファームを開設する予定です。とはいえ完全な新設ではなく、元々あるDMG社の施設を間借りするような形だとされています。機器冷却に使う電力の節約だけでなく、水力発電を利用することによるコストカットも図った計画も画期的です。

仮想通貨の採掘を行うにあたって、とにかく大事なのは提供する処理リソースを如何に安いコストで製造・維持できるかということ。特にビットコインなど、発行されるにつれ報酬が減ってしまうような仮想通貨では、ここを追求できるかどうかが生き残りには不可欠となるでしょう。

設備の購入・維持が単独では難しい企業に向けたクラウドマイニング

マイニングファームを自ら開設できないような企業に対しては、クラウドマイニングというサービスが始まろうとしています。クラウドマイニングは、利用する側が仮想通貨の採掘に使う設備を一部借り、それを使いマイニングして得られた仮想通貨は自分のものになるというシステムです。借りる側はマイニングに使用する設備の購入や管理など、難しい手間や莫大な初期費用を省くことができ、貸し出す側は設備レンタル料が安定した収入として2年間も入るほか、マイニングの成果によっては追加収入が発生する。といった関係性の生まれる仕組みになっています。

まだ管理手数料の詳しい内訳や契約数、マイニングの対象になる仮想通貨など大半の事項は未定です。しかし、このクラウドマイニングは採掘事業をより活発にし、ひいては仮想通貨の取引が速くなるなど、利便性の向上にも繋がる可能性があるシステムだけに期待は高まりますね。

個人・企業問わずマイニング技術は進化を続けている

仮想通貨の取引や、その過程で発生する決済処理などに必要となるマイナー。彼らの活躍が仮想通貨の利便性へ直結するだけに、そこをサポートする技術や環境にノウハウは常から進化しています。そして、現在マイニングを強く支えているのは企業の面々ではあるものの、個人規模で採掘しているマイナーの存在も決して弱くはありません。むしろ、大企業がまだ見向きもしないような仮想通貨は、彼らによって支えられていると言って過言ではないかもしれません。

先ほど「投機対象の通貨をタダ同然で手に入れる」くらいのメリットしかない、と述べた個人での採掘。しかし、仮想通貨の未来を考える人、仮想通貨が好きな人、僅かでも力になれたらと考えている人は、そういった利益性を度外視しても参入する意義は大いにあると感じます。