アルトコインの「NEO(ネオ)」は現在、コインチェック(Coincheck)など日本の仮想通貨取引所では取り扱っていません。日本語版がある海外の取引所では、香港のバイナンス(Binance)、アメリカのクーコイン(Ku Coin)で取り扱っていますが、日本円から直接交換できません。

NEO(ネオ)最大の売り物「スマートコントラクト機能」

NEO(ネオ)NEO(ネオ)(単位:NEO)は中国生まれの仮想通貨です。2016年10月に「Antshare(アントシェア/単位:ANS)」という名前で誕生し、2017年6月に名前を「NEO」に改めました。リップルと並ぶアルトコインの代表的通貨にちなんで「中国版イーサリアム」と呼ばれることもあります。なぜかと言えば、イーサリアムと同じ「スマートコントラクト機能」を持っているからです。

スマートコントラクト機能とは、仮想通貨の基本システム「ブロックチェーン」の上で取引に伴うコントラクト(契約)の締結をスマートに(賢く、スムーズに)行える機能です。契約条件の確認から履行まで、自動的にスピーディーに実行させることができます。そのため決済の時間短縮、不正の防止、費用の節約が図れるといわれています。このスマートコントラクト機能を売り物にしている代表的な仮想通貨が、イーサリアム(ETH)です。

NEOはイーサリアムと同じスマートコントラクト機能を持っていますが、さらにイーサリアムを超える通貨になることを目指しています。そのため、後発の強みとも言えますが、先に発行された他の仮想通貨からさまざまな優れた機能をどん欲にとりいれて、求められることは何でもできるような「総合力」を身につけています。何でもできるとは、どんな用途でも使える「汎用性」を持った仮想通貨になれるということです。

NEO(ネオ)は何でもできる、教えやすい選手

「何でもできる仮想通貨」を目指すNEOが持っている機能にはスマートコントラクト以外に、「スマートファンド」「ソーシャルネットワーキング」「データ交換」「自動トークンプロバイダー」「知的財産取引」「パブリシティ(広告)」などがありますが、その中で特に注目を集めているのが「未来予測」です。これは何十万回、何百万回もの取引データをもとに未来を正確に予測できるようにしようとする機能で、先行する仮想通貨では「Augur(REP)」が売り物にしていました。

このように、NEO(ネオ)はスポーツ選手にたとえれば、「先輩たちのいい部分をどん欲に吸収して、いろいろな技を繰り出せるように進化した選手」ですが、コーチにとっては「教えやすい選手」でもあります。機能が一番近い先輩通貨のイーサリアムは、イーサリアム専用のプログラム言語を使わないと人間が技を教えられません。コーチ役の開発技術者は、その専用プログラム言語を苦労して一から習得しなければなりません。その分、時間と費用がかかります。

一方、NEOは「C言語」「C++」「Java」など、広く普及しているごくふつうのプログラミング言語を使って人間が技を教えることができます。これまで、そんな言語で開発の仕事を行ってきた技術者にとっては、新しいプログラム言語を覚える必要がないので、楽です。時間がかからず、費用も安くすみます。たとえて言えば、NEOは「日本語を聞いてわかってくれる選手」で、イーサリアムは「アフリカの奥地に住むある部族の言葉しかわからない選手」のようなものです。

技術者にとってNEOは、開発がしやすく、新しい機能を持たせやすい、進化を遂げやすい仮想通貨で、その点では先輩のイーサリアムを超えています。

NEO(ネオ)は「オール中国」の応援団がつく中国代表選手

約1,000倍に高騰した中国版イーサリアム「NEO」スポーツ選手にたとえると、NEO(ネオ)はコーチにとっては「自分の言葉を理解する教えやすい選手」で、「先輩の選手ができる技をどん欲に吸収して自分のものにして、何でもできるようになったオールマイティーな選手」ですが、それだけではありません。

NEOにはバックに「オール中国」の強力な応援団がついています。中国生まれの仮想通貨を、中国のIT業界全体、経済界全体が盛り立てようとしているからです。中国は世界一の約14億の人口がある国ですから、NEOの普及をサポートするそのパワーはあなどれません。中国生まれの仮想通貨には他に「トロン(Tron/TRX)」がありますが、これは動画や音楽やゲームなどエンターテインメント・デジタルコンテンツを扱うための仮想通貨で、用途が限られています。ビットコインやイーサリアムのような幅広い用途で利用できる「汎用性」で選ぶなら、中国の代表選手はやはりNEOだということになるでしょう。

「NEOよ、イーサリアムを追い越せ! ビットコインも追い越せ!」

それが応援団のオール中国の願望です。そこには、仮想通貨の世界でアメリカの覇権を許したくない、中国では中国生まれの仮想通貨がトップになるべきだという思いがあります。人口世界一、GDP世界第2位の国でトップになれば、世界のトップも狙える、というわけです。また、中国は東南アジアにひろがる伝統の華僑ネットワークに加え、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を設立して、さらに「一帯一路政策」で中央アジア、ヨーロッパ方面にも自国中心の経済圏をひろげようという戦略があります。順調にその流れに乗ることができれば、NEOは世界的にみても相当パワフルな仮想通貨になれそうです。

中国政府は仮想通貨技術は高く評価している

「ちょっと待って。中国政府は仮想通貨を厳しく規制しようとしているのではないの?」

それはちょっと違います。2017年後半、中国政府が規制を強化したためにビットコインの相場は乱高下しましたが、中国政府は中国での仮想通貨の未来を閉ざしたいわけではありません。むしろ逆です。IT立国、デジタル化、キャッシュレス社会化を目指して、仮想通貨を生み出したブロックチェーンの技術を高く評価しています。繰り返しますが、仮想通貨の世界でアメリカの覇権を許したくない、中国では中国生まれの仮想通貨がトップになるべきだというのは、民間も含めたオール中国の意志ですが、それは中国政府の意志でもあります。「中国版イーサリアム」と呼ばれるNEO(ネオ)は言ってみれば「中国政府のお気に入りの仮想通貨」です。

たとえばSNSの世界では、中国国内では「グーグル」も「ツイッター」も「フェイスブック」も「ユーチューブ」も「LINE」も利用できません。グーグルの代わりを「百度(バイドゥ)」が、ツイッターの代わりを「微博(ウェイボー)」が、フェイスブックの代わりを「人人网(レンレン)」が、ユーチューブの代わりを「?酷(ユーク)」が、LINEの代わりを「微信(ウェイシン)」が、といったように、中国生まれのSNSが務めています。

ネット通販のアマゾンドットコムは中国でも利用できますが、中国企業であるアリババグループの「淘宝網(タオバオ)」「天猫(Tモール)」のトータルの売上高は中国のアマゾンのそれを大きく超えています。官も民も「世界は世界、中国は中国でやっていく」と独自性にこだわっているのが中国なのです。中国国内でビットコインや、欧米や日本生まれのアルトコイン、中国生まれでも詐欺に近いようなICO(新規に仮想通貨を発行して行う資金調達)が幅をきかせて、投資熱があおられて政府発行の通貨、中国元がそれに吸い上げられ、その価値を下げたりしないよう、厳しい規制を次々と打ち出しました。

その一方で、NEOのような中国生まれで「政府お気に入り」の仮想通貨は中国で、さらに中国を中心とする大きな経済圏でもメインの座を占められるように積極的に保護・育成する--今後、中国政府がそんな政策をとっていく可能性は、十分にあります。

NEO(ネオ)への投資は、中国の将来への投資

NEO(ネオ)は現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていないので、円からの直接の交換はできません。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所に持ち込んで改めてNEOに交換することになります。それでも円に対する交換レートは、2017年は2月の約13円から12月の約12,800円まで1年足らずで985倍と、1,000倍近くも高騰しました。しかしそのNEOも、中国政府の仮想通貨規制の余波を受けて、短期的には交換レートが下がるおそれはあります。

実際、2017年9月に中国当局がICOを規制した時には、ビットコインとともにNEOの交換レートも半分ぐらいまで下がってしまいました。それでも長い目で見れば、「中国政府お気に入り」の仮想通貨で、保護、育成が図られる可能性があることは大きなメリットです。1,000倍になるようなことはもう二度となくても、これから2年、3年と長期保有することでうま味が味わえるような通貨とは言えるでしょう。NEOへの投資は中国の将来への投資である言っても、いいでしょうか。