Stellar(ステラ)アルトコインの「Stellar」は現在、コインチェック(Coincheck)など日本の仮想通貨取引所では取り扱っていません。日本語版がある海外の取引所では、香港のバイナンス(Binance)で取り扱っていますが、日本円から直接交換できません。

生みの親ジェド・マケーレブ氏はどんな人?

Stellar(ステラ/単位:XLM)は2014年7月、アメリカで誕生した仮想通貨です。誕生当時の単位は「STR」でしたが、2015年に正式名称が照明器具の明るさの単位の「ルーメン(lumen)」に改称され、単位もXLMに変わりました。そのため「ルーメン」とか「ステラ・ルーメン」と呼ばれることもありますが、元の名前「Stellar(ステラ)」には英語で「星々の」という意味があって宇宙のロマンが感じられて好まれるのか、いまだに元の呼び名が主流になっています。

Stellarの生みの親はジェド・マケーレブ(Jed McCaleb)という人物です。日本での一般的な知名度は高くありませんが、仮想通貨の世界に少しでも関わっている人にとっては、ビットコインの開発者「サトシ・ナカモト」氏にまさるとも劣らないような「カリスマ」的な人物です。

2009年に「Mt. Gox(マウントゴックス)」を設立。最初はカードゲームの交換所で、後にビットコインの取引所に衣替えしました。2013年には現在、イーサリアムと並ぶアルトコインの代表格である「リップル(単位:XRP)」の立ち上げに関わり、その翌年にStellarを誕生させました。しかし、マウンドゴックスもリップルも、創業者でありながら数年で持っていた株を全て売却して運営から退いているので、2014年に日本でも大々的に報道されたのマウントゴックスの倒産騒ぎには、巻き込まれずにすんでいます。

マケーレブ氏はマウントゴックスの運営に関わって、取引のスピードが遅いなどビットコインの弱点に気づきました。そこで「ビットコインの弱点を克服した新しい仮想通貨をつくろう」と、リップルを誕生させました。リップルを軌道に乗せると、「主に企業間の決済に利用されるリップルとは別に、個人間の決済で利用しやすい新しい仮想通貨をつくろう」と、Stellarを誕生させました。そのため、Stellarは基本的な機能でリップルと共通する部分が多く、「リップルの弟分」とみなされています。

本来は「ブリッジ通貨」として生まれた通貨

Stellarとリップルは、システムも機能も兄弟のように似ていますが、どちらも「ブリッジ通貨(媒介通貨)」になることを想定してつくられています。兄貴分のリップルは「企業間取引のブリッジ通貨」に、弟分のStellarは「個人間取引のブリッジ通貨」になることを目指しています。

ブリッジ通貨とは、円や米ドルやユーロのような「法定通貨」どうしの交換(外国為替)の際、たとえば「ユーロ→ブリッジ通貨→米ドル」「円→ブリッジ通貨→ユーロ」というように、間にはさまる通貨のことです。法定通貨と法定通貨の間の「橋渡し」をすることいから「ブリッジ(橋)」と呼ばれます。

個人で海外送金を経験された方はわかるかもしれませんが、たとえば円を、ニュージーランド・ドルや、タヒチやニューカレドニアで使われる「CFPフラン」のようなマイナー通貨に両替・送金する場合、「円→米ドル→ニュージーランド・ドル」「円→ユーロ→CFPフラン」というように、いったん米ドルやユーロに両替してから改めてマイナー通貨に両替するというように、二段階経由することがよくあります。

その場合、ニュージーランドの現地の銀行で扱いが多い米ドルや、フランスの植民地のタヒチやニューカレドニアの現地の銀行で扱いが多いユーロが、ブリッジ通貨の役割を果たします。また、海外旅行で盗難被害を防ぐために現金の代わりに持っていく米ドルやユーロ建ての「トラベラーズ・チェック」も、現地で米ドル、ユーロ以外の通貨に交換する際はブリッジ通貨の役割を果たしています。どちらも、両替が二段階になるので手数料もその分、高くなります。

その高い手数料を少しでも安くすませたいから、米ドルやユーロやトラベラーズ・チェックの代わりとして、仮想通貨を「ブリッジ通貨」として使えないだろうか、という発想で生まれたのが、リップルであり、Stellarなのです。法定通貨に比べて交換手数料が安くすむ仮想通貨をブリッジ通貨として間にはさめば、海外送金のコストはそれだけ安くすみます。

リップルの〃弟〃は個人向けに小回りがきく

「リップル」の個人版として生まれた「Stellar」は、「ブリッジ通貨」として生まれた通貨Stellarの兄貴分のリップルはすでに、ローコストが評価されて世界の名だたる大企業が海外送金を行う際、ブリッジ通貨として使われています。日本の大手総合商社も大手の自動車や電機のメーカーも利用しています。世界の大手金融機関の決済システムには、リップルの決済システムが接続されています。それは日本の三大メガバンクも同様です。ビットコインを生んだ仮想通貨の基本技術「ブロックチェーン」からさらに進化し、取引のスピードやセキュリティ機能や信頼性が高まった「分散型ハイブリッドブロックチェーン」の技術が、信用の源です。

リップルが使われている企業と企業の間の大口の海外送金は、数は少なくても1件あたりの金額が大きい傾向があります。一方、たとえば海外への仕送りやネットでの個人輸入のような個人発の小口の送金は、1件あたりの金額は小さくても数が多い傾向があります。

その個人のニーズに的を絞り、リップルを改良して生まれたのがStellarです。「SCP(Stellar Consensus Protcol)」というアルゴリズムでリップルの弱点を補強し、取引のスピードでは兄貴分のリップルを上回っています。兄が築いた信用をバックに、小回りがきく弟が、小口・少額の個人の送金ニーズにスピーディーに対応、というイメージです。

企業間の大口の海外送金は主に大手の金融機関が取り扱いますが、個人発の海外送金は両替商などそれを専門に手がける企業や「フィンテック系ベンチャー」が活躍しています。そのインフラとして、ローコストで信頼性の高いStellarが採用されています。

ブリッジ通貨としての評価が高く世界で採用

StellarはIBMと技術提携しています。IBMというと「老大国」というイメージを持っている人もいますが、浮き沈みの激しいIT業界でしぶとく生き残ってきた「古いが、ポンコツではない」企業です。とりわけ世界の金融業界では信頼と実績のあるブランドです。IBMは2017年10月、「IBMブロックチェーン」を活用して、金融機関がローコストで、ほぼリアルタイムで、ネットワーク上で国際間のグローバルな決済を行える新しいバンキング・ソリューションを発表していますが、それにStellarの技術スタッフが関わっています。そんな世界的な大企業とのコラボレーションもStellarに対する信頼感を高めています。

海外送金の専門業者であるフランスのTEMPOは、「ブリッジ通貨」として優れている点を評価して送金業務のインフラにStellarを採用しました。フランス本国の通貨はユーロですが、太平洋の海外植民地はCFPフラン、アフリカの旧植民地諸国はCFAフランという為替レートがユーロと連動する別の法定通貨があり、海外送金の需要は非常に活発です。コストを抑えながら取引のスピードや信頼性も満足できる仮想通貨としてStellarが選ばれました。

ナイジェリアでは、モバイル通信事業を手がけるParkwayが、スマホを使った海外送金サービスのインフラとしてStellarを採用しました。それもスピードが早くローコストで信頼性も高く、「ブリッジ通貨」として優れている点が評価されてのことです。ナイジェリアは人口約1億8,600万人のアフリカ最大の大国です。日本と違って銀行の支店網もATM網も交通網も未整備なアフリカでは「スマホ送金」は個人だけでなく企業でも決済の基本インフラになっています。

これから人口増が見込まれるアフリカ大陸の地域大国で経済のインフラのスタンダードを取ったことには、大きな意味があります。

時価総額ランキングのトップ10に入った

Stellarは現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていないので、円からの直接の交換はできません。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所に持ち込んで改めてStellarに交換することになります。それでも円に対する交換レートは、2017年8月の約0.2円が、2018年1月には100円を超えて約500倍になりました。現在は仮想通貨の時価総額ランキングでトップ10位圏内に入るほどの躍進を遂げています。

これまで、リップルと連動して一緒に上がる傾向がありましたが、将来性を買われて、いつかリップルを追い越して〃兄弟〃のポジションが逆転することも、考えられなくはありません。大きな期待が集まっています。