最近、注目されている仮想通貨とはどんなものなのでしょうか。仮想通貨取引の安全性に関する法案、仮想通貨の性質として、金との類似性、価格の価値、決済市場や資金調達市場における役割について解説していきましょう。
仮想通貨法案による取引の安全性
平成26年2月、仮想通貨の取引所であるマウントゴックスを運営するMTGOXが倒産し、顧客が保有するビットコインおよび預かり金も消失するという事件が発生し、ニュースにもなりました。それから2年後の平成28年5月、仮想通貨法案が参議院の本会議で可決され、仮想通貨の取引業者は登録が義務づけとなり、金融庁は、違法取引を行っている仮想通貨業者に対して業務改善や停止命令が出せるようになりました。
この結果、利用者は仮想通貨の取引を安全に行えるようになり、ビットコイン取引を行う人が増えはじめています。国も、仮想通貨の利用者が増加することを予測し、マウントゴックスのような事件を再度、起こさないように、利用者の損失を無くすような体制を整えようとしていることがいえます。
仮想通貨ビットコインの金との類似性
仮想通貨であるビットコインは新世代の金といわれています。なぜなら、金は長い歴史の中で認知されていますが、ビットコインも金と類似性を持っているからです。具体的にビットコインと金の類似している点について、確認してみましょう。まずは、ビットコインも金もその総量が決まっています。ビットコインの総量は2,100万ビットコインともいわれています。ただし、既にインターネット上で流通しているビットコインは1,100万ビットコインといわれているため、約半数のビットコインが生成されていることになります。これから新たなビットコインを発行するには、さらに100年以上の年数が必要とされています。そして、新たなビットコインの生成が成功しても数ビットコインが手に入る程度です。よって、ビットコインは希少価値があり、注目されているのです。
次に、ビットコインと金は、金融機関や政府から独立した存在であるといわれています。金は金融機関や国の信頼性を得ているものではなく、金そのものとしての価値が認められています。国が発行しているお金や債券の場合はその国の財政が破綻した場合、価値がゼロになってしまいます。過去には、ユーロやドルのお金が暴落した時、金に資金が流れました。北朝鮮からのミサイル発射の時は、金がかなり値上がりしました。ビットコインも金と同様に有事の時に買われる傾向があり、ビットコインは安全資産としての価値があるといえます。
手数料や24時間決済可能という決済市場革命
通常のお金の決済手数料は、日本の銀行間でのケースで300円前後、海外送金のケースで2,000円前後であるといわれています。しかし、ビットコインの場合、5円程度となっています。つまり、ビットコインなど仮想通貨は決済市場において、ビットコインは通常のお金の400分の1という超格安の手数料で機能するという役割を担えるということになります。また、ビットコインは24時間決済可能なコインであり、世界中、数秒から数分で送金可能な機能を持っています。このビットコインの機能は他の金融機関やクレジットカード会社ではできない機能であり、ビットコインは利便性も備えているといます。
最近では、仮想通貨が持つ革新的ともいえる技術に注目して、みずほフィナンシャルグループ、ゆうちょ銀行、その他の地銀が共同で、日本円にペッグした仮想通貨Jコインを扱う新会社を設立すると発表しています。Jコインでは、銀行の預金口座とつなぎ、個人や企業間の決済に利用できるようにする予定となっています。Jコインの狙いはビッグデータの収集とATM関連に関するコストをカットする目的であるといわれています。Jコインの普及で、参加企業は利用者の買い物や送金履歴を獲得でき、ビッグデータを活用して、自社の新たな価格戦略や商品の開発に利用しようという狙いがあると考えられています。
そして、三菱東京UFJ銀行は平成30年春にMUFGコインの発行を予定しており、米国では、アップルによるアップルペイが広がっていて、日本の金融機関連合に対抗しようとしています。よって、世界中において、決済市場に革命をもたらす存在であるといってもいいでしょう。
ビットコインの価値
ビットコインの価格の価値は最近の5年間ほどで、4,000倍にも跳ね上がったといわれています。この影響から、世界中でビットコインの取引により、億万長者が続々と登場しています。フェイスブックのCEOとして有名な双子のウィンクルボス兄弟は、ビットコインが登場した初期のころからビットコインに注目して、ビットコインの投資を行っており、今ではビットコインで10億円以上の資産価値になっているといわれています。このようなことから、次の億万長者を目指して、仮想通貨の取引きを行う人が増えはじめています。
ICOという資金調達革命
通常、株式会社では、株式を投資家に買ってもらうか、銀行からの借り入れにより資金調達を行いますが、仮想通貨を利用した資金調達としてICOが注目されています。ICOは、株式を市場に上場して資金を集める、IPO(新規株式公開)と似た名称となっています。ICOでは、新しく店を立ち上げたいという企業が資金を集めようと、インターネット上で、コイン(=「トークン」)を発行して売り出し、トークンを持っている人は、店の商品を期間に関係なく割り引くという条件をつけます。その店が流行りそうだと思う人が、その店に投資をします。
この投資をする人が増えるほど、トークンの値段が上昇していきます。この仕組みは、クラウドファンディングの仕組みとよく似ています。ICOでは、トークンを買う時に利用するのは、円やドルなどのお金ではなく、ビットコインなどの仮想通貨になります。ICOは今年だけで日本円で1,000億円を超える資金が集まりました。ICOは、資金調達を行う側としては、銀行からの借り入れや株式の上場などより楽であり、インターネット上の仮想通貨を利用するため、世界中から幅広く資金を集めることができるといったメリットがあります。
また、投資する側としては「トークン」の値上がりを期待して、購入します。ICOで発行されたトークンは、インターネット上の取引所を通じて売買ができるため、常に投資家の期待を集めているといえます。この仕組みは、株式市場と同じです。値上がりした仮想通貨を持っている投資家が、有望なICOのトークンを探し回っており、様々なトークンを紹介して、発売日までの期間を公表している海外のサイトも出てきています。
ただし、投資する側から見た場合、ICOのトークンにはリスクがあるといえます。株式市場の場合は、株主は会社のオーナーになります。よって、株主総会では1株でも所有していれば、会社経営者にもの申すことができます。また、インサイダー取引で損失を出さないように国の機関が監視するなど、株主の権利は厳格に守られています。しかし、ICOにはまだ、そのような体制ができていません。今後、ICOを拡大していくには、株式市場のように、投資家を守る体制が必要とされるでしょう。
仮想通貨はマウントゴックスの事件により、注目を浴びましたが、リスクが高いものという世間のイメージがあります。現に乱高下を繰り返す特徴が仮想通貨にはあります。しかし、そのような状況でも、仮想通貨は注目されており、世界中の決済市場や資金調達市場において、今までの常識を覆すような役割を持ちはじめています。国も法体制を固め、有名な企業や銀行も独自の仮想通貨を作りだそうとしており、今後は、今までの円やドルなどのお金をしのぐ存在になる可能性もあるといえます。