「スマートコントラクト」「サイドチェーン」のダブルメリットで2018年に期待ふくらむ
アルトコインの「Lisk」は現在、日本の仮想通貨取引所ではコインチェック(Coincheck)、ビットフライヤー(bitflyer)で取り扱っています。日本語版がある海外の取引所では香港のバイナンス(Binance)で取り扱っていますが、そこでは日本円から直接交換はできません。
LiskはJavaScriptで開発が簡単という意味
Lisk(リスク/単位:LSK)は2016年5月に誕生した仮想通貨です。「リスク」と言っても、たとえば「仮想通貨への投資にはリスクが伴います」と言う時のリスク(risk)とは、つづりが違います。liskは小型や中型の英語の辞書には載っていませんが「簡単」という意味です。何が簡単かというと、システムのプログラムの開発が簡単にできるとうたっています。
Liskには「JavaScript(ジャバスクリプト)」というプログラミング言語が使われていますが、これはプログラマーを志望してコンピュータの専門学校に入学した学生は全員が習うような、世界的に広く普及した「みんなが知っているプログラミング言語」です。それだけ敷居が低いので開発に手を出しやすく、そのおかげで仮想通貨としてLiskが広く利用されることを狙っています。ちなみにアルトコインの代表格のイーサリアム(単位:ETH)のプログラミング言語は「Solidity」という独自のものなので、プログラムを開発しようと思ったらそれを一から習得しなければならず、「簡単」にはいきません。
スマートコントラクトとサイドチェーン
Liskにはシステム上、2つの大きな特徴があります。それは「スマートコントラクト」と「サイドチェーン」です。
スマートコントラクトは、アルトコインでは他にイーサリアム、NEO、EOS、VeChainなども持っている機能です。仮想通貨の基本中の基本のシステム「ブロックチェーン」の上で、仮想通貨のやりとりに伴う条件や約束事などが書かれたコントラクト(契約)の締結とその記録を自動的に、スマートに(賢く、スムーズに)処理できる機能で、決済の時間短縮、不正の防止、費用の節約が図れるというメリットがあります。どんなビジネスも契約で成り立っていますから、スマートコントラクト機能がついた仮想通貨はビジネスでの利用がしやすくなります。
Liskはイーサリアムなどと同じようにスマートコントラクト機能を持っていますが、それをプログラマーであればみんなが知っている「JavaScript」で簡単(lisk)に開発・利用できるという点が売り物です。もう一つの特徴のサイドチェーンは、言ってみればブロックチェーンの「追加オプション」です。たとえば北海道など冬に雪が多くて気温が毎日氷点下になるような地方の自動車販売店では、「基本仕様」に特別なバッテリーや車内の各部分のヒーターのような追加オプションがついた「寒冷地仕様」のクルマが販売されています。「基本仕様」のままでは北国の厳しい冬に対応できず、まかり間違えばドライバーの命にかかわることもあるので、追加オプションをつけています。
仮想通貨の基本システムのブロックチェーンも、「基本仕様」そのままでは不都合が起きることがあります。たとえば建設・不動産業界の「手付金と残額」「着工時と中間時と完工時」のように、その業界独特の特殊な商習慣があり、必ずしもその日に契約通りの金額が全額支払われないことがあるようなケースです。そんな場合、「基本仕様」だけではスマートコントラクト機能が働いて「不足」「不正」と判断され、支払いにストップがかかるかもしれません。それでは取引に時間がかかってシステムが安定しません。
そうならないように、Liskではブロックチェーンに追加オプションをつけて、「この業界には特殊な商習慣があるので、その日に契約金額全額が支払われないことがある」という判断ができるようにして、支払いにいちいちストップがかからないようにします。そんな追加オプションはたとえて言えば、「基本仕様」のクルマにマイナーチェンジを施して「寒冷地仕様」として販売しているようなものです。そんな、ブロックチェーンに付け加える補助的なしくみのことを「サイドチェーン」と言います。
ブロックチェーンにサイドチェーンを付け加え、さらにスマートコントラクトの機能もサイドチェーンのほうに持たせておくことで、たとえば取引の相手が属する業界によって臨機応変に対応を切り替えるなど、追加オプションによって小回りをきかせることができます。それだけシステムは〃賢く〃なり、取引のスピードも速くなります。また、もしハッカーに外部から侵入を許したとしても、まずサイドチェーンがハッカーの攻撃を引き受けてそれを食い止めて、心臓部であるブロックチェーンに被害が及ばないようにブロックする役割を果たします。
それでも防ぎきれそうにない時は管理する人間の判断で、まるで戦国時代の負け戦での「殿軍(しんがり)」の部隊のように、サイドチェーンを分離し、それをハッカーの攻撃にズタズタにされる「捨て石」にして、その間に大事なブロックチェーン本体を無傷のまま安全な場所に逃がすという戦術もとれます。そのようにしてLiskはセキュリティ性を高めています。サイドチェーンが使えるという特徴は、ビジネス利用でのLiskの大きなメリットになっています。
サイドチェーンはあくまでも「サブのブロックチェーン」ではありますが、ブロックチェーンをもう一つ、追加でつくったのと同等のスケールや機能を持っています。そのためLiskの心臓部であるブロックチェーンが万が一、エラーや支障でストップした時も、「非常時の交代要員」として即座にそれを肩代わりさせることができます。工場やお店で、停電が発生しても非常用の発電機があれば電気がついて操業や営業が続けられるように、ストップせずに運用が安定的に継続できることを「可用性(アベイラビリティ)」と言いますが、高いセキュリティ性と可用性は、Liskがイーサリアムに対し優れている点です。
2018年1月1日にアップデートし最高額に
Liskは2018年1月1日、アップデートされました。2016年5月の誕生以来の1年7ヵ月間はまだ「準備中」の段階で、このアップデートによって仮想通貨として大きくグレードアップし、「本格運営」が始まったとも言われています。アップデートのポイントは、仮想通貨としての基本的なスペックが拡大したこと、「サイドチェーン」の機能が強化されたこと。そして「SDK」の配布です。
SDKは「Software Development Kit」の略で「ソフトウェア開発キット」のことです。それまでもJavaScriptで簡単(lisk)に開発できるという利点がありましたが、開発キットの登場によって、Liskのプログラムの設計・開発はより簡単になりました。「開発キット」というのは家にたとえればプレハブ住宅で、現場で骨組みの間に壁をつくるよりも、工場でつくった壁を骨組みの間にはめ込んでいくほうが早く簡単にできるように、ブロックを組み立てて合わせる要領でLiskのプログラムが早く簡単にできるようになっています。
Liskは日本の仮想通貨取引所ではコインチェック(Coincheck)が取り扱っていましたが、2018年1月31日、それにビットフライヤー(bitFlyer)が加わりました。ただしビットフライヤーはアルトコインの交換手数料が高めなので、それを避けたいのなら日本語版があるバイナンス(Binance)など海外の取引所を利用するという手があります。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所にで改めてLiskに交換します。
円に対する交換レートは2017年2月は15円ぐらいで、3月頃までは20~30円という水準でしたが、春から上昇しはじめ、6月に400円、9月に800円、11月に1,000円、12月末には約2,600円、2018年1月のアップデート後には最高額で約4,000円まで上昇しました。1年足らずで270倍を超える上昇をみせています。
2018年、期待の大きい仮想通貨
Liskはビットコイン(BTC)で設定されているような発行総量の上限が決められていません。最初に1億LSKが発行され、年々発行量が増えていく予定です。1億LSKはリップルの1,000億XRPに比べれば1,000分の1という小ささですが、それでも「この先いくらでも発行できるのなら、いつかは供給が需要を上回って、価格が下がってしまうのではないか?」という不安を持つかもしれません。それを和らげるために2018年中に「ブロック報酬の引き下げ」が予定されています。ブロック報酬とはビットコインの「採掘(マイニング)報酬」に相当するもので、それが引き下げられると将来の供給過多懸念が和らいで仮想通貨の価格が上がるという性質があります。
1月のアップデートの効果、ビットフライヤーでの取り扱いの開始、ブロック報酬の引き下げなどがあいまって、「Liskはこれから面白くなる」と言われています。