2017年12月10日、シカゴ・オプション取引所(CBOE)と、18日にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が、ビットコインの先物取引をスタートし、市場を賑わせています。

ビットコインが米国先物取引市場に上

ビットコインと“価値の保存”とはこれまでビットコインの存在を単なるバブルコインとして、近い将来大暴落するのではと考えていた向きも少なからずありました。いわゆるビットコイン否定派の人々がこれに当たるでしょう。それとは別に、乱高下を繰り返しながらも、ビットコインを世の中に必要な新しい通貨として受け入れようとする一派もありました。今回、世界有数の取引量を誇る2つの取引所にビットコインを上場させたことは、とくに肯定派の人(BTCに投資するのを迷っていた人も含め)にとって喜ばしいニュースでした。

事実、米国政府の監督下にあるシカゴの巨大な取引所で先物取引が可能になったのは、ビットコインの価格やその推移でみた場合でも、その影響は計り知れません。これまでどおり、最終的に仮想通貨はバブルで片付くだろうと考えていた方も、今回の一件で大きく考えを変えられたことでしょう。こうした大きな取引所に上場することで、機関投資家らの専門家の投資判断が入ってきます。さすがに「淡いバブルのまま」ではすまないでしょう。むしろ、機関投資家の動きを丁寧に監視すれば、ビットコインバブルを早期判断に導く参考材料にも使えます。

それまでは規制のない取引所でのビットコインの直接購入が禁止されていた機関投資家でしたが、CMEやCBOEへの上場によって、機関投資家も債券を保有できるようになります。これまで根拠のないデマや噂に影響され、相場が大きく影響を受けていた部分もありますが、プロ投資家が参入することで価格を安定させる効果も期待できるなどの相乗効果もあります。

さらに先物取引の場合、実際にビットコインを保有していない投資家でも、証拠金があればビットコインを売買できます。また取引の間にハッカーからの攻撃を心配する必要もありません。先物取引所が出来たことで、今までビットコイン投資を諦めていた方にも、コインを保有する機会が格段に広がりました。ビットコインは確かにバブルかもしれません。しかしバブルであったとしても、ビットコインが先物取引所に上場したことで、いろんな面でリスクを回避しやすくなったことは事実でしょう。

未だ課題が残るスケーラビリティ問題

ビットコインについて、その経緯を振り返ってみたとき、問題も抱えていることも確かです。いちばんの問題点は、やはりスケーラリビリティ問題でしょう。

この問題についてはコア派を中心とするビットコインの開発者側で、すでに進むべき道はSegwitを中心とした施策で方向付けられていることは、コア派の開発者でもあるJimmy Song氏のインタビューの中でも明らかになっています。([ビットコインとビットコインキャッシュの違いとは?Jimmy Song氏 動画インタビュー Vol.4 | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュースス](https://btcnews.jp/36h2qzgo14371/))(Jimmy Song氏はSegwitのことを「台帳の外側で取引が可能になるシステム構築」と言っています)。このシステムを使えば、いままでなら1MBだったBTCの台帳の容量を2倍〜4倍に拡張できるようです。またSegwitという技術はライトニング・ネットワークを活用する際にも必要なもので、これはイーサリアムで使われるスマート・コントラクトに近いやや複雑な行為も自動化すると言われています。

ただしこれはBTCが安全性のために従来から堅持してきた1BMというサイズであり、Segwitという技術を使うことで台帳に余裕を持たせる方向で動いてきました。ビットコインキャッシュのように台帳の容量を8MBに増やすやり方より処理速度は落ちます。

Jimmy Song氏は、それで多くのユーザーがビットコインから離脱し、ビットコインキャッシュに向かっていったとしても、それで仕方ないという口ぶりです。ビットコインとビットコインキャッシュでは、それぞれが別々の目的を持ち、この世に誕生したコインです。結果としてユーザーが離脱しても仕方がないとしたのです。

「価値の保存」の意味とは?

BTCの真の役割は「交換媒体」ではないということ私たちはなぜ仮想通貨を持つことを選んだか?私たち日本人にとってはそうでもないとしても、ビットコインは国境を超えて送金する場合、確かに安い手数料でそれが行える通貨でした。ところがビットコインや仮想通貨自体のユーザーが増えたことで、ネットワークに対する負荷は増大しました。そのため、早く送金したい場合はそれなりの手数料を負担しなければならなくなりました。(もちろんこうしたルールは初めから存在していました)。

しかしビットコインは、送金手数料が安いだけのものではありません。では、どのような理念でビットコインが作られていたかをもう一度思い出してみれば良いでしょう。先ほどのインタビューの中で、ビットコインは決済に使うだけのものではなく「価値の保存」という大事な意味があることをJimmy Song氏は告げています。

また氏曰く、ビットコインは「デジタル・ゴールドのようなもの」だと。そしてビットコンキャッシュはビットコインとは違い「交換媒体」として機能しており、いわば「コーヒーの購入を目的として機能している」ものだとも語っています。つまりビットコインとビットコインキャッシュが、全く別の目的を持つ仮想通貨だと明言しています。

ここで言う「価値の保存」というのは、法定通貨が陥りがちなインフレーションやその他の諸問題から完全に自由である暗号通貨の特性も指しています。うっかりするとつい忘れてしまいそうなことですが、もしあなたが比較的新しいビットコインホルダーだとしたら、あらためてビットコインを所有しはじめた理由を振り返ってみることも良いでしょう。

ビットコインのETF上場申請

2017年は先物取引所に上場しただけにとどまりません。米NYSE Arcaの親会社として知られるインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)が、暮れも押しせまった12月にビットコインのETF(上場投資信託)の上場を申請した模様です。

ビットコインのETF上場は2017年3月に申請がありましたが、米証券取引委員会(SEC)は十分な法整備が行われていないことからこれを拒否。8月にも同じく上場申請がなされたのですが、先物上場のない限り審査はあり得ないとの理由で今回も上場を否決されています。3度目は2つの先物取引所で上場できていますから、先物取引価格に連動したビットコインのETF上場が承認される可能性は捨てきれないでしょう。少なくとも今回の申請は期待して良さそうです。

ただビットコインの開発者の中に、ETFなどの金融商品が生まれようとしていることに懸念を漏らす者も少なからずいます。場合によっては、ETFを申請したICEがビットコインの特性をよくわかっていない可能性も考えられます。

ビットコインの特性をよくわかっている人なら、BTCがどうしてもETFに馴染まないことは分かるでしょう。ビットコインは通貨を発行以来、非常に堅実にオリジナルなコードを守っていますが、コミュニティのコンセンサスによっては、アップデートとは違った変化がいつどのようなカタチで現れるともわかりません。そのようなリスクがある金融商品をETFに数えても問題がないのか。米証券取引委員会もそのあたりを含めて判断することになるでしょう。

ビットコインが一目置かれているワケは?

2017年は色々と注目を集めた1年でしたが、ビットコインにとって本当に苦しかった1年でもあ
りました。とくに2016年から比べると、ユーザー数が確実に増え、ビットコインを含めた仮想通貨の取引頻度も急激に上がりました。ビットコイン自体の問題もいろいろありますが、対応が遅れた理由は、まさにユーザー数の増加にあったと言っても良いでしょう。

ビットコインは非常に歴史も浅く、まだまだ開発中の通貨にすぎません。それでも、次のビットコインを目指そうと数多くのアルトコインがひしめく中、ビットコインは我が道を進むだけのように映ります。しかしながら、ビットコインとて、自身が目指すべき領域を突破しようと必死にもがいているのです。

それでも、ビットコインが一目置かれているのは、熟練した開発者がついているということにあるでしょう。Jimmy Song氏は先のインタビューの中で、コア派の熟練した開発者メンバーから成っており、長年の経験で何を今すべきかを心得ているとも強調しています。

来年はさらに、ビットコインのフォークコインが多数生まれる可能性があります。それでも、余程のことでもない限り、ビットコインを手放さず保有し続けたほうが良さそうです。