2017年はビットコインの分裂騒動に振り回された1年でしたが、一方その影でリップルが急高騰し、12月30日にはイーサリアムから時価総額2位の座を奪うという、昨年を象徴するかのような出来事に私たちを驚かせました。そして、その動きに同調するようにおなじく価格を上げたコインがあります。それが「ビットコイン2.0」のひとつに数えられるネム(XEM)です。
ネムが昨年末に向け高騰した理由とは?
ネム(XEM)は2014年1月19日「ビットコイントーク」というフォーラムで、ハンドルネーム「utopianfuture」を名乗る人物によって提案され、翌年2015年3月31日に公開された非常に新しい仮想通貨です。なお記事執筆時点(2018年1月初頭)での時価総額ランキングでは7位。リリース後、間もないことを考えると、成功しているトークンと呼べるでしょう。
ネム(NEM)の名前の由来は、New Economy Movementの頭文字からきています。その考え方は文字通り「新しい経済活動」を目指すのですが、ビットコインの思想に敬意を表しながらも、その矛盾点を取り除き、コミュニティやユーザーが可能な限り平等にネムの運営に参加できる。そんな体制を作ろうとしていることが読み取られます。
そもそもXEMが年末に向けて価格が高騰した理由は、ネムの「カタパルト(Catapult)」というアップデートへの期待感が関係しています。「カタパルト」のアップデートは、当初年内に実装されるのではないかと言われてきましたが、残念ながら2018年にその実装は持ち越されてしまうようです。ただアップデートの期待だけでこれだけ価格が上昇するのですから、ネムXEMが数ある仮想通貨の中で、それだけ確かな新しい投資先として見られていることがわかります。
ただ価格が高騰しているといっても、ネムはまだ180円程度です。とは言え、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)とは違って、誰でも投資できるコインです。しかも「ビットコイン2.0」以降の仮想通貨ですから、送金時間やコスト面でもビットコインやイーサリアムと比べても非常に有利です。少なくともランキング10位以内では、ネムはリップルに次ぐ投資先になるかもしれません。
ネムは日本のテックビューロ社のmijinとつながりがある
これから、新しい投資先としてネムをみていくわけですが、ネムの解説をすとき忘れてはならないものとして、日本のある会社との関わりに言及しなければなりません。その会社とは大阪に本社を置くテックビューロ株式会社です。当初ネムの開発メンバーに日本人が1名加わっており、その関係で日本のテックビューロが同社のmijinというプライベートブロックチェーンをつくり上げ、内外の有名な企業にブロックチェーンの技術を導入しています。
テックビューロと言えば、日本でZaif(ザイフ)という仮想通貨の取引所を運営していおり、仮想通貨を取引している方にとっては、すでに馴染みがある会社です。そのテックビューロが運営するプライベートブロックチェーンは、あのカタパルトのβ版をネムに先んじて実験することにもなっており、当然ながら相互に深い関係があることがわかります。
なおネムとmijinは相互に互換性が高く、ゆえにカタパルトのアップデートもmijinを使って試せるわけです。またmijinは大手銀行や行政でも実験導入がテストされています。日本の企業でブロックチェーンの技術を自社で所有していることはまだ少なく、テックビューロはその先陣を切る企業の一つとして注目されています。今後、企業のブロックチェーンの導入が当たり前になってくると、それに呼応してネムの評価も上昇することが十分考えられます。少なくとも日本でネムを解説するとき、テックビューロ社やmijinの説明は避けられないでしょう。
なおmijinの導入は日本だけに留まらず、アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、中国、チェコ、香港、インド、インドネシア、イタリア、オランダ、スペイン、トルコ、イギリス、アメリカなど15か国に及び、また国内企業はSBIポイント株式会社、株式会社NEC情報システムズ、NTTデータジェトロニクス株式会社、関西テレビ放送、新日鉄住金ソリューションズ株式会社、日本電気株式会社、野村総合研究所、株式会社日立ソリューションズ、山形大学などに導入されているのです。
実装が待たれるアップデート「カタパルト(Catapult)」とは
ネムには昨年から予定されていたカタパルト(Catapult)というアップデートが、2018年に持ち越されるということはすで記事で触れています。ではいったいどのようなアップデートが予定されているのでしょうか。端的に言うと、トークン自体の処理速度がいまより劇的に改善されるようです。もともとネムは送金スピードの速さに定評があるのですが、カタパルトが実装されるとその速さはさらに向上します。
たとえばスケーラビリティ問題に苦しんだビットコインは、処理速度1が秒あたりにおいて約7〜15件だと言われています。また今年更なる飛躍が期待できるリップルでは、1秒あたり約1500件です。ではネムはどうでしょうか? 現時点でアップデート後の処理速度は約3000〜4000件と言われています。つまりリップルの倍になる計算です。これはクレジットカードのVISAにも匹敵する速さと言われており、もちろん仮想通貨の中ではもっとも高速となるようです。
もちろん、リップルの場合は送金ネットワーク自体の違いがあるので、両者を直接比較はできません。ただクレジットカードのVISAと同等のスピードということから、ネムのユーザーにとっては非常に魅力的なアップデートになるでしょう。
もちろんこのアップデートには処理速度の向上以外にも、イーサリアムで言うところのスマートコントラクトに近い「アグリゲートトランザクション」という機能が実装される予定です。2018年、アップデートが実現すればまたトークンの価格は上昇するかもしれません。
ネムの認証システム「Proof of importance」とは
ネムの認証システムはProof of importanceと言います。Proof of importanceはビットコインなどのProof of Workとは違い、マイニング(採掘)、と言う概念がありません。
知ってのとおりProof of Workでマイナーになるためには、電気代が安い中国やロシアでASICと言われるマイニング専用機器を接続する高性能コンピューターを準備しなければなりません。必然的にマイニング作業ができる環境、人は限られてきます。しかも、これからは政策的理由から、マイニングから離脱する人が増加していくと見られています。こうなると、Proof of Workは現実的に維持できない可能性も考えられます。
ネムの認証システムProof of importanceは「ハーベスト(収穫)」とも言われ、報酬を得るために取引の承認作業は特にしなくても良いことになっています。仕組みを手短に言うと、10,000XEM以上をウォレットに入れておくだけで、全くの個人レベルでもネムに選ばれ(ASICを接続できる高性能なコンピューターは不要です)、報酬が得られるようになっています。
ただProof of importanceで報酬が得られる人に選ばれるには、不正をしないなど、幾つかの基準を満たす必要があります。逆にそういった面が中央集権的に映ることもあるため、Proof of importanceに否定的な考え方を持つ方もいます。一方、最近ではProof of Workに拠らない仮想通貨が生まれてきています。ネムやリップルがそのいい例で、冒頭でも触れたように「可能な限り平等にネムの運営に参加できる体制を作ろう」としています。
ネムは2018年に必ず化ける?
ネムの考え(New Economy Movement)には「新しい経済活動」のほかに、「平等」「富の再分配」などのキーワードが含まれています。これに対比して、ビットコインで相当儲けたであろうマイニング会社や、水力発電のそばに広がるマイニングファームが、時代遅れの景色のように映ってしまうのは何故でしょうか? ネムやリップルといった新しい仮想通貨は間違いなく来ています。まさにいま、新旧の仮想通貨が変化を向かえている時期なのかもしれません。
なお、ネムという通貨はコミュニティから強く支持される仮想通貨でもあります。渋谷にはネム・フリークが集う「nem bar」というバーがあります。また、ネムに関連したお洒落なグッズも買えるようです。こうしたファンが根付く仮想通貨は、XEMを安易に手放さずトークンを大事にします。ネムはこれからの要素が強いコインですが、2018年に化ける可能性がある仮想通貨かもしれません。