性能が意外に高いことで知られる匿名性仮想通貨昨年はビットコインの分裂騒動をはじめ、何かとハードフォークについての話題に終始した1年でしたが、年末のニュースでは仮想通貨のマルウェアが出回っているということも話題として取り上げられました。

マイニングマルウェア」事件で注目された匿名性仮想通貨「モネロ」とは?

昨年末に検出されたマルウェアは韓国を中心に被害が広がり、どうやら  Facebookのメッセンジャーアプリを通じて拡散していると、トレンドマイクロは発表しています。攻撃者の狙いは、被害者のPCに感染しマイニングさせるもので、業界では「マイニングマルウェア」として知られているものです。つまり、年末韓国を中心に拡散され、ベトナム、ウクライナ、フィリピン、タイなどの国々にも被害が及んだマイニングマルウェアはこれが初めてのことではなく、2014年ごろから姿を変え頻発しています。

ただ昨年12月初頭から始まったとみられるマイニングマルウェアは、その数ヶ月前、Shadow Brokersと呼ばれるハッカー集団が流出したものとは違い、新手のマルウェアと判明(こちらは「Digmine」と命名されています)。なぜこのようなハッキングが広まるのかというと、仮想通貨のユーザーが増えるに従い、おもに悪意を持つマイナーらがハッキングしたコンピューターを使ってマイニングさせるためです。今回のマイニングマルウェアを拡散したハッカーは、匿名性の高いモネロを主にマイニングしていたようです。

仮想通貨のモネロは、「Adylkuzz」(2017年5月ごろ見つかったマイニングマルウェア)が拡散された際、トレンドマイクロによってイーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)と並びピックアップされていた仮想通貨です。「Adylkuzz」が拡散された際にも、Proofpoint(spamおよび情報漏洩対策専用機器を開発する米国ベンチャー)の調査で、2万2000ドル相当のモネロが採掘されていたようです。今回の「Digmine」でも、相当なモネロをマイニングしていたと考えられます。

匿名性仮想通貨にはモネロの他にも、ダッシュ(DASH)、ジーキャッシュ(ZEC)、バージ(XVG)があります。今回はあまり触れることのないモネロをはじめとする匿名性仮想通貨についてまとめてみます。

ビットコインの透明性について

匿名性通貨の匿名性という文言はビットコインの性質(=透明性)とよく対比されます。匿名性通貨について紹介する前に、まずビットコインの持つ透明性についてあらためて触れておきましょう。

ビットコインはある意味、非常に透明性を重視した通貨です。たとえばビットコインは、いわゆる銀行の元帳にあたる部分でさえ誰でもインターネットで簡単に入手でき、やろうと思えばすべての支払い記録をチェックできます。ただ、ほとんどの方は興味本位だけで、2009年から始まる元帳を見ようとは思いません。でもやろうとすれば時間は掛かりますが、そんなこともできてしまう。これがBTCの透明性を証明する特徴です。

一見ユーザーのプライバシーのことを無視したかに見えるBTCの性質は、一般の金融機関ではとても考えられないことです。しかしその性質によっよってビットコインは脱税、マネーロンダリングなどの反社会的行為を未然に防ぐメリットを備えており、多くのアルトコインもBTCに習いこの方法論を踏襲しています。ただしビットコインに備わる透明性はアドレス間のトランザクション(取引記録)において有効ですが、アドレスの所有者については匿名性が高くなります。秘密鍵(Private Key)がそれにあたります。つまりビットコインと言えど、透明性と匿名性とのバランスを持たせているわけです(仮想通貨の取引を行うには、ブロックチェーン上で秘密鍵と公開鍵を使います)。

匿名性仮想通貨は、アドレス間のトランザクションもすべて分からないように大体仕立ててあります。もちろん通貨によって採用するアルゴリズムが違いますので、匿名性の度合いにも差があります。このことを頭の隅に置いて読み進めてください。

ダークネット・マーケットと深い関係があるモネロ

 

では、匿名性通貨の中でマイニングマルウェアとの関係が示唆されるモネロ(XMR)についてみていきましょう。モネロは2014年4月に公開されました。記事執筆時点(2018年1月初頭)の仮想通貨の時価総額ランキングでは11位と健闘しています。モネロのソースコードは、現在33位に君臨するバイトコイン(BCN)のコードをベースに作られておりアルゴリズムには「Cryptnight」を採用しています(なおバイトコインは、匿名性を特徴にした初めての仮想通貨です)。この「Cryptnight」というアルゴリズムにモネロの匿名性が生かされており、モネロの主な性能はこのアルゴリズムのワンタイムリング署名という技術に集約されます。

こうした匿名性がきわめて高いモネロは、次第にダークネット・マーケット(DNM)との関係もささやかれます。そして、この分野で絶大な信頼を得たXMRは、DNMで有名なAlphabayでもサポートされます(なおAlphabayは闇サイトのひとつで、昨年7月に米国当局によって摘発されました。)。また最近では、Libertasという闇サイトがXMRのみの決済を表明しています。私たちは仮想通貨というと脱税やマネーロンダリングとの関係を疑いがちですが、もっと身近なものとして違法薬物や銃器販売を行う市場があることを忘れています。こうしたダークネット・マーケットとの関わりは、モネロの特徴とも言えるものです。

また、こうした背景があることで、モネロという通貨はマイニングマルウェアとも深い関係があることが容易に想像できます。ただ、こうした市場でモネロがよく使われたとしても、モネロ自体が闇サイトの活動に加担しているわけではありません。しかし少なくとも日本では、これらの匿名性仮想通貨が購入できる取引所を金融庁が正式に認可していないのも事実です。その意味ではモネロをはじめとする匿名性仮想通貨が、しばらくの間グレーな判断をされることは想像に難くありません。

なおモネロのもう一つの特徴に決済スピードの速さがあります。ただしモネロの承認速度は約2分で現在のビットコインには楽勝ですが、同じ匿名性仮想通貨で次に紹介するダッシュ(DASH)には及びません。

apple社が認めた「ダッシュ」のクオリティ

】マルウェアとの関係性が噂される真相とは?ダッシュ(DASH)は現在時価総額ランキングで9位に入る、非常に優秀な匿名性仮想通貨です。ダッシュで思い出すのは、昨年apple社が取引対象となる通貨としてダッシュを選出。これでダッシュの相場は一気に高騰しました。またビットコインのATMサービスで大手取引所として有名なLamassu社と提携したことでも業界を沸かせました。もちろんダッシュの持つ決済スピードや安全性など、コインの持つのクオリティの高さが物を言ったことは疑いの余地もないでしょう。

ちなみにダッシュの決済スピードは約2秒と言われますから、今のビットコインは比較になりませんし、イーサリアムの承認に掛かる約2分と言う時間も遥かに凌駕しています。また、複数のハッシュ関数(X11)を使うなど、セキュリティの面でも信頼できる方策を採用しています。apple社やLamassu社といった有名企業がダッシュを認めた理由が分かります。

ダッシュが公開されたのは2014年のことですが、リリース当時の名前は「ダークコイン」というもので、闇サイトとのつながりを匂わすネガティブなイメージが噂されました。しかし翌2015年にはダッシュと改名します。改名の理由は定かではありません。ただ同じ匿名性通貨のモネロとは、正反対の方向に進んでいると言えます。

なおダッシュは匿名性を重視した仮想通貨ですから、トランザクションの匿名性を確保する「Darksend」と言うアルゴリズムが使われています。それでもモネロのように闇社会に選ばれなかったのは、ダッシュが選んだアルゴリズムが闇社会にそぐわないものだったのかもしれません。
匿名性と昨年はビットコインの分裂騒動をはじめ、何かとハードフォークについての話題に終始した1年でしたが、年末のニュースでは仮想通貨のマルウェアが出回っているということも話題として取り上げられました。

「マイニングマルウェア」事件で注目された匿名性仮想通貨「モネロ」とは?

昨年末に検出されたマルウェアは韓国を中心に被害が広がり、どうやら  Facebookのメッセンジャーアプリを通じて拡散していると、トレンドマイクロは発表しています。攻撃者の狙いは、被害者のPCに感染しマイニングさせるもので、業界では「マイニングマルウェア」として知られているものです。つまり、年末韓国を中心に拡散され、ベトナム、ウクライナ、フィリピン、タイなどの国々にも被害が及んだマイニングマルウェアはこれが初めてのことではなく、2014年ごろから姿を変え頻発しています。

ただ昨年12月初頭から始まったとみられるマイニングマルウェアは、その数ヶ月前、Shadow Brokersと呼ばれるハッカー集団が流出したものとは違い、新手のマルウェアと判明(こちらは「Digmine」と命名されています)。なぜこのようなハッキングが広まるのかというと、仮想通貨のユーザーが増えるに従い、おもに悪意を持つマイナーらがハッキングしたコンピューターを使ってマイニングさせるためです。今回のマイニングマルウェアを拡散したハッカーは、匿名性の高いモネロを主にマイニングしていたようです。

仮想通貨のモネロは、「Adylkuzz」(2017年5月ごろ見つかったマイニングマルウェア)が拡散された際、トレンドマイクロによってイーサリアム(ETH)、ライトコイン(LTC)と並びピックアップされていた仮想通貨です。「Adylkuzz」が拡散された際にも、Proofpoint(spamおよび情報漏洩対策専用機器を開発する米国ベンチャー)の調査で、2万2000ドル相当のモネロが採掘されていたようです。今回の「Digmine」でも、相当なモネロをマイニングしていたと考えられます。

匿名性仮想通貨にはモネロの他にも、ダッシュ(DASH)、ジーキャッシュ(ZEC)、バージ(XVG)があります。今回はあまり触れることのないモネロをはじめとする匿名性仮想通貨についてまとめてみます。

ビットコインの透明性について

匿名性通貨の匿名性という文言はビットコインの性質(=透明性)とよく対比されます。匿名性通貨について紹介する前に、まずビットコインの持つ透明性についてあらためて触れておきましょう。

ビットコインはある意味、非常に透明性を重視した通貨です。たとえばビットコインは、いわゆる銀行の元帳にあたる部分でさえ誰でもインターネットで簡単に入手でき、やろうと思えばすべての支払い記録をチェックできます。ただ、ほとんどの方は興味本位だけで、2009年から始まる元帳を見ようとは思いません。でもやろうとすれば時間は掛かりますが、そんなこともできてしまう。これがBTCの透明性を証明する特徴です。

一見ユーザーのプライバシーのことを無視したかに見えるBTCの性質は、一般の金融機関ではとても考えられないことです。しかしその性質によっよってビットコインは脱税、マネーロンダリングなどの反社会的行為を未然に防ぐメリットを備えており、多くのアルトコインもBTCに習いこの方法論を踏襲しています。ただしビットコインに備わる透明性はアドレス間のトランザクション(取引記録)において有効ですが、アドレスの所有者については匿名性が高くなります。秘密鍵(Private Key)がそれにあたります。つまりビットコインと言えど、透明性と匿名性とのバランスを持たせているわけです(仮想通貨の取引を行うには、ブロックチェーン上で秘密鍵と公開鍵を使います)。

匿名性仮想通貨は、アドレス間のトランザクションもすべて分からないように大体仕立ててあります。もちろん通貨によって採用するアルゴリズムが違いますので、匿名性の度合いにも差があります。このことを頭の隅に置いて読み進めてください。

ダークネット・マーケットと深い関係があるモネロ

では、匿名性通貨の中でマイニングマルウェアとの関係が示唆されるモネロ(XMR)についてみていきましょう。モネロは2014年4月に公開されました。記事執筆時点(2018年1月初頭)の仮想通貨の時価総額ランキングでは11位と健闘しています。モネロのソースコードは、現在33位に君臨するバイトコイン(BCN)のコードをベースに作られておりアルゴリズムには「Cryptnight」を採用しています(なおバイトコインは、匿名性を特徴にした初めての仮想通貨です)。この「Cryptnight」というアルゴリズムにモネロの匿名性が生かされており、モネロの主な性能はこのアルゴリズムのワンタイムリング署名という技術に集約されます。

こうした匿名性がきわめて高いモネロは、次第にダークネット・マーケット(DNM)との関係もささやかれます。そして、この分野で絶大な信頼を得たXMRは、DNMで有名なAlphabayでもサポートされます(なおAlphabayは闇サイトのひとつで、昨年7月に米国当局によって摘発されました。)。また最近では、Libertasという闇サイトがXMRのみの決済を表明しています。私たちは仮想通貨というと脱税やマネーロンダリングとの関係を疑いがちですが、もっと身近なものとして違法薬物や銃器販売を行う市場があることを忘れています。こうしたダークネット・マーケットとの関わりは、モネロの特徴とも言えるものです。

また、こうした背景があることで、モネロという通貨はマイニングマルウェアとも深い関係があることが容易に想像できます。ただ、こうした市場でモネロがよく使われたとしても、モネロ自体が闇サイトの活動に加担しているわけではありません。しかし少なくとも日本では、これらの匿名性仮想通貨が購入できる取引所を金融庁が正式に認可していないのも事実です。その意味ではモネロをはじめとする匿名性仮想通貨が、しばらくの間グレーな判断をされることは想像に難くありません。

なおモネロのもう一つの特徴に決済スピードの速さがあります。ただしモネロの承認速度は約2分で現在のビットコインには楽勝ですが、同じ匿名性仮想通貨で次に紹介するダッシュ(DASH)には及びません。

apple社が認めた「ダッシュ」のクオリティ

ダッシュ(DASH)は現在時価総額ランキングで9位に入る、非常に優秀な匿名性仮想通貨です。ダッシュで思い出すのは、昨年apple社が取引対象となる通貨としてダッシュを選出。これでダッシュの相場は一気に高騰しました。またビットコインのATMサービスで大手取引所として有名なLamassu社と提携したことでも業界を沸かせました。もちろんダッシュの持つ決済スピードや安全性など、コインの持つのクオリティの高さが物を言ったことは疑いの余地もないでしょう。

ちなみにダッシュの決済スピードは約2秒と言われますから、今のビットコインは比較になりませんし、イーサリアムの承認に掛かる約2分と言う時間も遥かに凌駕しています。また、複数のハッシュ関数(X11)を使うなど、セキュリティの面でも信頼できる方策を採用しています。apple社やLamassu社といった有名企業がダッシュを認めた理由が分かります。

ダッシュが公開されたのは2014年のことですが、リリース当時の名前は「ダークコイン」というもので、闇サイトとのつながりを匂わすネガティブなイメージが噂されました。しかし翌2015年にはダッシュと改名します。改名の理由は定かではありません。ただ同じ匿名性通貨のモネロとは、正反対の方向に進んでいると言えます。

なおダッシュは匿名性を重視した仮想通貨ですから、トランザクションの匿名性を確保する「Darksend」と言うアルゴリズムが使われています。それでもモネロのように闇社会に選ばれなかったのは、ダッシュが選んだアルゴリズムが闇社会にそぐわないものだったのかもしれません。

匿名性と透明性を兼ね揃えた新たな仮想通貨「バージ」とは

バージ(XVG)は2016年2月にリリースされたばかりの新しい仮想通貨で、日本の取引所ではまだ扱われていません。しかしバージは、ダッシュ、モネロ、ジーキャッシュなどと並ぶ高性能な仮想通貨としても認められており、評判のほうも上々。匿名性だけではなく透明性も重視した仮想通貨です。そのため従来ある匿名性通貨とは、一線を画した存在とも言えます。

バージはレイス・プロトコルという技術を採用しています。レイス・プロトコルを簡単にいうと、ユーザーがアドレス情報を公開するか否かを選択できるというもの。匿名性通貨はその特性から、政府は脱税やマネーロンダリングに悪用されることを警戒しています。レイス・プロトコルを用いたバージのシステムは、必要に応じて匿名性を使い分けるられるため、従来の匿名性通貨に対する懸念をある程度払拭できる可能性があります。

またバージはビットコインの思想を引き継ぐオープンソースであり、ある意味、完全な非中央主権型です。特定の団体や企業といった大きな力によって管理されるのではなく、有能な開発者やバージを愛するコミュニティによって支えられています。

仮想通貨の世界で、最近ではかえって珍しい存在とも言えるバージに期待を寄せる人(コミュニティ)は、日本国内でも意外に多いようです。しかもビットコインより新しいバージですから、決済スピードやスケーラビリティ問題にも前向きに取り組んでいます。決済スピードはすでに秒速レベルの速さのようで、公表されているブロック生成間隔は30秒です。

昨年末のニュースでは、バージの時価総額の上昇率が7500倍という信じられない数値が踊っています(時価総額で振り返る、2017年仮想通貨の盛り上がり | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュー)。どうやらマイニングマルウェアやダークサイトとつながりがあるのは、匿名性通貨だからというわけではないようです。透明性を兼ね揃えた新たな仮想通貨「バージ」とは

バージ(XVG)は2016年2月にリリースされたばかりの新しい仮想通貨で、日本の取引所ではまだ扱われていません。しかしバージは、ダッシュ、モネロ、ジーキャッシュなどと並ぶ高性能な仮想通貨としても認められており、評判のほうも上々。匿名性だけではなく透明性も重視した仮想通貨です。そのため従来ある匿名性通貨とは、一線を画した存在とも言えます。

バージはレイス・プロトコルという技術を採用しています。レイス・プロトコルを簡単にいうと、ユーザーがアドレス情報を公開するか否かを選択できるというもの。匿名性通貨はその特性から、政府は脱税やマネーロンダリングに悪用されることを警戒しています。レイス・プロトコルを用いたバージのシステムは、必要に応じて匿名性を使い分けるられるため、従来の匿名性通貨に対する懸念をある程度払拭できる可能性があります。

またバージはビットコインの思想を引き継ぐオープンソースであり、ある意味、完全な非中央主権型です。特定の団体や企業といった大きな力によって管理されるのではなく、有能な開発者やバージを愛するコミュニティによって支えられています。

仮想通貨の世界で、最近ではかえって珍しい存在とも言えるバージに期待を寄せる人(コミュニティ)は、日本国内でも意外に多いようです。しかもビットコインより新しいバージですから、決済スピードやスケーラビリティ問題にも前向きに取り組んでいます。決済スピードはすでに秒速レベルの速さのようで、公表されているブロック生成間隔は30秒です。

昨年末のニュースでは、バージの時価総額の上昇率が7500倍という信じられない数値が踊っています(時価総額で振り返る、2017年仮想通貨の盛り上がり | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュー)。どうやらマイニングマルウェアやダークサイトとつながりがあるのは、匿名性通貨だからというわけではないようです。