2017年の年末から年明けにかけて好調に推移していたのはリップルでしたが、様々な要因から価額が急落。その代わりに再び浮上したのがイーサリアムでした。一体何が起こってこうなったのか、そのポイントをまとめてみましょう。

 

イーサリアムの高騰はリップルの急落が響いたか

2018年好調を続けるイーサリアムイーサリアムがリップルとの順位争いで巻き返したのは1月9日の連休明けですが、2018年になってから、じつはイーサリアムの勢いが止まりませんでした。ついに連休明けに元の順位(2位)に返り咲き、これまで好調をキープしてきたリップルと入れ替わります。

イーサリアムが高騰した要因はどれかひとつには絞れません。これだけ短期間のうちに順位が逆転したのはいかにも仮想通貨らしいのですが、やはり複合的な要因が考えられるからです。ここではそのあたりを解説しますが、説明の前に断っておきたいのは、2つの仮想通貨がそれぞれ個性的な通貨で、同じ物差しで決して比較できないということです。それとリップルに加担するのではありませんが、今回の逆転劇はリップルの暴落がやはり大きいと言えます。

今回リップルが暴落したのは、米国Coinbase(コインベース)によるTwitterの発言と韓国の仮想通貨取引の規制をめぐる混乱が原因です。順番に説明すると、CoinbaseはTwitter(1月4日投稿)で、まずリップルがCoinbaseへの上場を否定され、それを受けてリップルの時価総額は約17兆円から14兆円へと急落します。Twitterでは、リップルの成長があたかもバブルであるかのように書かれていますが、Coinbase側の本音は、昨年末にビットコインキャッシュ(BCH)の上場で被ったインサイダー取引疑惑を、またリップルの上場でも再燃させるのではと恐れたことが考えられます。

リップルにすればCoinbaseへの上場は、すぐにでも通したいものではなかったでしょう。ただユーザーの期待感はかなり膨らんでいたようです。いずれにしてもCoinbaseの取った行動は、2017年に積み上げたリップルの評価を間違いなく汚しました。もしCoinbaseにリップルが今後も上場しなければ、今回の上場拒否を悔いることにはなるでしょう。

ブテリン氏の死亡説や中国のICO全面禁止例による影響

その後、日を追うように、韓国の仮想通貨取引をめぐる規制で、リップルは1月4日には13兆円あった時価総額をおよそ半分にまで減らします。当時、韓国の取引量はリップル全体の半分以上を占めていたとも言われ、そのなかでの規制発言ですからその影響は計り知れません。

「近い将来、仮想通貨取引を規制する予定はない」と韓国大統領府は混乱を一旦沈静します。でも一度下がった価格は、そう簡単に元には戻りません。このCoinbaseによるインサイダー疑惑に対しての恐れと、韓国当局の仮想通貨規制で、ピーク時には17兆円まであったリップルの時価総額が、僅かの期間で6兆円まで下げたのですから恐ろしいものです。

ただ、イーサリアム(ETH)も昨年の夏に、ヴィタリック・ブテリン氏の死亡説が流布したことで、いみじくも同様の価格暴落を経験します。「Vitalikは自動車事故で死亡した」と報じるフェイクニュースもあったと、ブテリン氏はTwitterで独白しています。イーサリアムは他方でもウォレットに脆弱性があるとネット上で散々叩かれ、それがイーサリアム暴落の一因にも繋がっていました。

また死亡説だけにとどまらず、昨年9月に中国がICO全面禁止を発表したことで、イーサの価格は2か月ほど停迷しています。この騒動でしばらく浮上できずにいましたが、2017年は10月、11月と仮想通貨市場全体が盛り上がりを見せ、イーサリアムは再びICOを中心に投資家の評価を高めます。そして結果的に5万円まで価格を押し上げたイーサリアムは、年末から年明けも分散型アプリなどが好調となり、価格はさらに上昇します。

Proof of WorkからProof of Stakeへの移行

年始に起きた再逆転劇の真相とは?単なる噂や中韓の誤報とも受け取れる規制等により、互いに失速を余儀なくされたイーサリアムとリップル。ここからは、仮想通貨としての変化から見えてくる価格高騰の要因をあきらかにしていきます。

イーサリアムの価格高騰で比較的重要だった事柄は、Proof of Work(以下PoW)からProof of Stake(以下PoS)に切り替わる時期が、近々予定されていたことでしょう。

PoWからPoSに移行することで、前段階としてイーサリアムはマイニング報酬を減らします。そして1月1日、まずCasperのα版をリリースしたイーサリアムは、PoS移行に伴うユーザーの期待が一層高まりを見せます。

Casperとは、PoWからPoSに切り替わる際に予定されていたハードフォークで、具体的にはETHの発行数制限が行われ、ブロック報酬の引き下げも同時に行われました。もちろん、ブロック報酬の引き下げはマイナーの採掘意欲を奪うものですが、その分かえってETHの価格維持効果が見込めます。今回の価格の高騰は、ハードフォークの実施が絡んでいたことは間違いないでしょう。

分散型アプリ「CryptoKitties」のヒット

イーサリアムが年始、急激に価格を上げた要因には、分散型アプリの「CryptoKitties(クリプトキティーズ)」のヒットも考えられます。「CryptoKitties」は、イーサリアムの最新プロトコルを応用した分散型アプリ(DApps)のひとつで、キャラクターに仮想子猫を用いています。

仮想通貨から猫のゲームアプリがヒットしたのは、イーサリアムだから成し得たことと言えますが、さらにイーサが秀逸なのは、App StoreやGoogle Play Storeのようなプラットフォームをネットワーク上につくり、それを進化させたことです。なお現在稼働中のDAppsは「CryptoKitties」の他にも約300以上あり、それらは全てState of the ÐApps — 961 Projects Built on Ethereumで確認できます。

もちろん「CryptoKitties」のヒットは偶発的なもので、今後これに似たヒットが再び作れるかは未知数です。明らかなのは、価格高騰の影に「CryptoKitties」があることです。「CryptoKitties」はピーク時には、イーサリアムの日々の取引量の20%を占めるまでに成長を遂げています。

ヴィタリック・ブテリン氏は自身のTwitterで「クリプト(子猫)は世界全体を反映したもの」と発言し、ブルームバーグのSalvator Mundiの記事をペーストしています(Salvator Mundiはダヴィンチの作品で$450Millionで落札されました)。イーサリアムの「仮想子猫」も10万ドルで取引されていますし、ゲームの中ではすでに1200万ドル近く取引されているようです。

今回のどんでん返しは中韓の仮想通貨規制にコントロールされている?

もちろんこの他にも、イーサリアムの価格高騰の要因はいくつか指摘されています。ただ共通して言えるのは、通貨数がまだ少ない仮想通貨は些細な噂話でも値動きにすぐ反映されること。たとえイーサリアムやリップルといった上位クラスの通貨でも、急高騰・急下落が頻繁に起きることは知っておくべきでしょう。

またイーサリアムの高騰も通貨自体の実力と言い切れません。通貨の歴史としてはビットコインやリップルに比べるとまだ浅く、開放的なプラットフォームを持つものの、ウォレットなど関連サービスの安全性ではまだ改善の余地が残ります。

ただリップルについては、金額的に先月の水準まで押し戻されたようで、中韓の規制問題が相当効いているようです。しばらくは騒動の行方を見守っていく必要があるでしょう。