ビットコインはどうして非中央集権的なのか?

昨年からシリーズ形式で配信されて、楽しみしているインタビュー動画があります。今回配信されたのは「ビットコインとアルトコインの違いとは?」Jimmy Song氏 動画インタビュー Vol.7 | ビットコインの最新情報 BTCN|ビットコインニュースです。

動画では「ビットコインとアルトコインの違い」について「アルトコインはより中央集権的(centralized)」と、インタビューで語っています。今回は久々にビットコイン(BTC)を話題にしてみたいと思います。

ビットコインは非中央集権的なのか?

アルトコインがこれだけ好調に推移している状況があり、投資しているコインが中央集権的か否かなど、あまり気にしない方も多いと思いますし、仮想通貨と自由主義的発想を結びつけにも疑問を持つ方も多いでしょう。ただJimmy Song氏の動画インタビューを見て、ビットコインとアルトコインの違いが、やはりこのことにあるのだなと感じ、あらためて非中央集権的であることの特殊性に考えをめぐらせていたところです。

一概に、非中央集権的発想がイコール「ビットコイン的」とする考えはどうかと思いますが、仮想通貨に興味を持つ人なら、一度は非中央集権的な要素を自分なりに咀嚼しておくことは大切です。

例えばこれだけ中央集権的なものが溢れている世の中で、非中央集権的なビットコインは単純に言って特殊ですし難解です。ただしビットコインを見てすぐ特殊で難解と感じるのは、自分の生活環境が先進国に生まれて生活しているからなのかもしれません。世界の半分以上を占めるのは実は発展途上国です。そしてビットコインを始めとする仮想通貨は、海外外送金も許されていないようなエチオピアのような国にこそ求められています。

なお動画に登場するJimmy Song氏は、以前の記事でも紹介しましたが、ビットコインの開発者の一人です。彼の説明は非常に分かりやすく簡潔。そして何より聡明な人柄にも惹きつけられます。英語に強い方は「Off Chain(YouTube)」や「Bitcoin Tech Talk」もみてみると面白いでしょう。

ビットコインとアルトコインには意思決定に違いが

ビットコインは知ってのとおり、ソフトウェアであるビットコインを誰でもインストールし、元帳データを持てます。つまりビットコインは中央管理する人間がいなくても安全に回ってくてらるのです。

もちろんアルトコインも各人が分散台帳で管理しているため、ビットコイン同様、中央管理する人間がいなくても運営はできるのです。この仕組みがあるから、アルトコインも非中央集権的だと一般的には考えられています。

ただビットコインと違うのはアルトコインは、仮に開発チームの一部の人間がハードフォークが必要と判断するとそれが簡単に実施に移せます。これは特定の人間による判断ですから中央集権的決定です。

動画の中では、イーサリアム(ETH)のアップデートを取り上げ、ヴィタリック・ブテリン氏(イーサリアムの考案者)のやっていることの多くは中央集権的決定の良い例だとSong氏は述べています。反対に非中央集権的決定とはどう言うものでしょう。これは簡単に言うと、アップデートやルール変更が生じた場合、ネットワーク上の総意に確認します。ビットコインが非中央集権的で多くのアルトコインは中央集権的なのは、意思決定の違いによるとSong氏は言っています

非中央集権的とは人間の力が及ばない、でも回るシステム

途上国や新興国の状況から見えてくるものJimmy Song氏は続けます。多くのアルトコインのように中央集権的に意思決定していては、ペイパルや普通の銀行と変わらないと。そして多くのアルトコインは「健全な通貨の性質が欠如」していると述べています。この2つの見解はかなり重要です。では仮想通貨が普通の銀行と同じでは何故いけないのでしょうか。

広い意味では、仮想通貨も銀行も似ています。2つはどちらも人間にとって大切なお金を扱っています。ただ冒頭にも触れましたが、ビットコインは台帳を分散して個々のユーザーが管理しているため、中央管理者を置かないでも成り立っています。いっぽうで銀行も政府が管理していますので、基本的に問題はありません。特に先進国では仮想通貨より法定通貨のほうが安心という一面もあります。

しかし、もし自分が開発途上国で暮らしていたらどうでしょう。また腐敗した政権下でお金を独善的に管理されている国の場合はどうでしょう。極端な例かも知れませが、政治不安度が高い新興国では、政府の通貨発行力を利用すれば、増刷した紙幣を独断的に使うことも簡単にできます。そのような環境下で限られた資産を守る場合は、中央管理者を置かないビットコインの方が安心ではないでしょうか。

途上国や新興国では、日本で人気を博するかなり前から、ビットコインが非常に注目され、また実際に使われてきました。ビットコインも銀行と似たシステムを持っていますが、国の環境から中央集権的な銀行をアテにはできません。それより人間の力が及ばない、でもコンピュータ・プログラミングでしっかり回るシステムの方が、途上国、新興国ではかえって信頼されるのです。仮想通貨が普通の銀行と同じでは何故いけないのか。その答の一部がこれです。

「健全な通貨の性質が欠如」って一体なに?

では「健全な通貨の性質」とは何をいってるのでしょう。

健全な通貨とは、様々な取引やモノやサービスを受け取る際に、ちゃんと使えると通貨と言うことです。

これも先ほどの問いに対する答とダブりますが、極端に言って途上国や新興国では、もはや国の通貨が使えない場合もあります。日本ではこんなことを意識することもありませんが、これらの新興国では、国の経済が破綻しており、自国の通貨を使えない国もあります。しかしビットコインには国境がありませんから、少なくともネットを介して決済に使えます。

エチオピア、ベネズエラやジンバブエといった国では、未だ国民にお金の自由が担保されていません。しかし、こうした国の政権トップが、国外のリゾート地に別荘を持っていると言うのは、何処かの古い冗談話ではありません。

なお、こうした独裁的な政権下では、ビットコインもそうですが、プライバシーを保護できる匿名性仮想通貨も役立つようです。Jimmy Song氏は動画の冒頭で、自身の注目アルトコインを3つ挙げていましたが、うち2つが匿名性通貨だったことには驚きました。

ちなみにその2つと言うのはモロネ(XMR)とジーキャッシュ(ZEC)ですが、モロネは以前にも、ダークネット・マーケットにも指定されるほどプライバシーに重点を置いた仮想通貨と説明したばかりです。ジーキャッシュは、あのエドワード・スノーデンが、ジーキャッシュの技術を高く評価したことでも知られています。途上国や新興国では、こうした通貨も役に立っているということです。

途上国のビットコインユーザーとも交流があるSong氏

最後は途上国の話題に終始してしまいました。ただ、平和な先進国に住んでいる人には理解しにくいでしょうが、開発途上国、発展途上国の割合は年々増えており、世界全人口の8割以上とも言われています。また、その人口も同じく増え続けています。

そんな状況の中、今後はビットコインのような非中央集権型の通貨に益々注目されていきます。中国は世界一の仮想通貨大国ですが、中国も自国通貨に不安があることを忘れてはいけないでしょう。視点を変えることでJimmy Song氏が、なぜ、ここまで非中央集権的に拘るのかも見えてきます。

なおSong氏は途上国のビットコインのユーザーとも実際に交流があり、交流を通じて発せられるSong氏の言葉には開発者としての重みがあります。Jimmy Song氏に惹かれる理由はそこにはもあるのです。