この記事を書いている時点で仮想通貨は上昇トレンドに一旦向かいそうですが、1月10日以降の相場を振り返ると、主だった仮想通貨は総じて値を下げています。そして昨日は問題の1月16日。主要通貨を中心に大きく価格を下げました。原因は昨年から続く中国や韓国の仮想通貨に関する規制にあります。
韓国の仮想通貨規制は市場の反応を探ろうとしていただけだった?
韓国が仮想通貨取引規制に動き始めたのは昨年末のこと。もともと韓国には世界で1位、2位を争う大手取引所Bithumbがあり、国内の取引量は右肩上がりに増えていました。そして規制強化が具体化したのが、2017年も押し迫った12月です。
韓国は各取引所に、本人と一致する銀行口座だけから入出金を認める通達を出しています。この時は仮想通貨を規制すると言うより、ユーザーの口座と取引アカウントの紐付けを求めるものでした。政府も投資家保護を念頭に、取引の透明性を確保するとの方針です。
ところが年が明けて2018年になると、韓国の仮想通貨規制はより厳しいものに変わります。政府は本人確認が済んでいないユーザーアカウントに対し、1月20日時点で強制的に取引停止になると発表。司法省は2017年の中国のように、取引所の全面閉鎖も示唆します。
当初の思惑は本人確認を強化。そして市場の反応を探ろうとした韓国でした。ただ最初にこの仮想通貨取引規制が地元メディアが報道すると、情報が飛び火し、市場にこの情報が伝わります。するとビットコイン、アルトコインの価格が急落しまた。リップルの価格が大きく急落したのは、まさにこのタイミングです。
ViaBTCが二つの事業の廃止せざるを得なかった中国の状況
いっぽう中国の状況は、国外への資本流出などを嫌い、早くから仮想通貨にネガティブな姿勢をとっていましたが、マイニング事業に関しては寛容な姿勢を貫いてきています。そのそのような中、2016年5月にハイポ・ヤン氏により創設されたのが新興取引所ViaBTCです。ViaBTCはビットコインの7%近くまでマイニングパワーを維持したことでもその名を知らしめています。
ビットコインに対する中国の規制強化の歴史は数年前から続きますが、昨年の9月には、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)の禁止、取引所の全面閉鎖、手数料なしで仮想通貨の取引を禁止するなど一層規制の強化を図ります。ViaBTCは禁止令に従い、取引所を即刻廃止しています。
同社は取引所とクラウドマイニングプールの2つの事業を併行していましたが、9月の時点ではまだマイニング事業については禁止されていませんでした。しかしViaBTCは、2018年1月10日を以てクラウドマイニング事業も閉鎖しています。ヤン氏は才能豊かな経営者でしたが、事業を満足に継続できなかったことが惜しまれます。
噂によれば、比較的寛容と言われたマイニング事業にも、中国当局の規制の影がチラついていたようです。ただ昨年末にかけては中国でもデマの流出がひどく、ViaBTCの事業閉鎖に至る真相までは確認できていません。同社の登場と早々の撤退は、中国の仮想通貨に対する厳しさを象徴しています。
中国人民銀行(PBoC)の怒りと主要仮想通貨の暴落
新年を迎えて間も無くすると、今度は中国人民銀行(PBoC)がマイニング業者に対して、電力の使用に関する税制優遇を廃止する方針を発表しました。
ロイターが入手した会議メモによれば、PBoC副総裁の潘功勝氏は仮想通貨取引が代替ルートを通じて行われていることを明らかにし「個人や企業が取引所取引の市場創出や保証、決済サービスなどを提供することも禁止する必要がある」と述べています。[中国、仮想通貨取引を禁止すべき─人民銀副総裁=会議メモ | ロイター]。
潘氏の陳述はこれまでのニュースとは明らかに違い、ようやく中国が本気で仮想通貨の全面禁止に乗り出したと受け取れるものです。潘氏は「仮想通貨取引サービスを提供する国内外のウェブサイトや携帯端末向けアプリを遮断して、仮想通貨決済サービスを手掛けるプラットフォームに制裁を科すべき」とも伝えています。
この発表を受けて、翌1月16日には主要仮想通貨(ビットコイン、イーサリアム、リップルなどを含む)の暴落がおきます。潘氏の本気モードからの推測に過ぎませんが、昨年中国は国内の取引所の全面閉鎖を実施していただけに、代替ルートを通じて行われていた取引が、量・質ともに度を越していたものと思われます。
「仮想通貨規制は国際協力を通じて解決すべき問題」とする欧州諸国
中国人民銀行の陳述と時を同じくして、15日にフランクフルトの公演で、ドイツ連邦銀行のヨアヒム・ビュルメリング理事も仮想通貨規制について発言しています。
内容は「仮想通貨の効果的な規制はできるだけ広範囲の国際協力を通してのみ達成される。国ごとの対応の効果は明らかに限定的」と言うもの。[Any Rule on Bitcoin Must Be Global, Germany’s Central Bank Says – The New York Times]EU諸国内でも、仮想通貨の規制などについて議論が交わされていますが、韓国や中国で行われている仮想通貨の規制も、彼らにもすでに伝わっているようです。
ただ仮想通貨の問題に関しては、国際協力を通じて世界的に解決すべき問題だとしており、特にEU諸国では取引所を介したマネーロンダリングやテロ資金調達を防止することに合意しています。
仮想通貨取引の規制は、今後世界全体で話し合う機会が増えてくると考えられます。そんな中、欧州諸国のなかでも仮想通貨をそれほど必要としないドイツやフランスなどの先進国が、仮想通貨をどのように扱ったら良いか、色々思案しているようです。
どうすれば荒れた市場に惑わされるようになる?
中韓の規制騒動でもっとも影響を被ったのはリップルでしょう。ただ、16日を境に今後はその影響もおさまると見込んでいます。もちろん中韓の仮想通貨に対する規制はこの先も続くでしょうが、今回の暴落で市場にも耐性ができたと考えます。市場もそれほど愚鈍ではありません。
それにたとえ中韓による規制問題がなくても、市場に影響を及ぼす事案は代替で必ず出てきます。そのため仮想通貨を自ら投資対象に選び取引する場合、市場の動きにあまり敏感になりすぎないことが大切です。例外もありますが、ここが法定通貨を取引する場合と明らかに異なる点です。
また仮想通貨の場合は、種類によっては普通に所有しているだけで何倍にも増えていきます。昨年仮想通貨を初めて購入した方は、通貨の種類にもよりますが、5、6倍になった人もいるでしょう。そのため利益確定のために売買に走らずとも、十分旨味を体感できます。目を掛けているコインがあるなら今は大事に買い足していくことです。そうすれば、市場の動きにそれほど振り回されずにすむはずです。
またEU諸国のように各国が仮想通貨に対する考え方を共有するようになれば、市場は次第に落ち着きを取り戻すでしょう。そうなれば、中国や韓国で繰り返されている規制に関する動きにも惑わされることは少なくなります。できることなら、そのような世界を待ち望みたいものです。