数日前、DMMがマイニング事業に参入したことがニュースになりました。DMMという会社や仮想通貨の事をある程度知っている人であれば。それほど違和感なく見ることが出来たニュースなのではないかと思います。そうでなくとも「DMM」「マイニング」「金沢」など、興味を引きやすいキーワードがちりばめられているので、このニュースを題材に改めて仮想通貨市場やその周辺の基礎知識の補強、おさらいをしていただければと思います。

ニュース概要

ゲームや動画配信など、様々な事業を展開しているDMMが、昨年9月より「参入する」と表明していたマイニング事業に本格参入のため、石川県の金沢に大規模なマイニングファームをオープンする。金沢はもともとDMM創業の地であり、そのオフィス跡をマイニングファームに利用する。

このマイニングファームは3月中旬以降、ショールームとして一般公開を予定されているだけでなく、今後はクラウドマイニング事業の開始や、独自のマシンの開発も構想に入れている。

そもそもDMMとは

DMMが金沢で仮想通貨マイニング事業に参入①DMMの生い立ち
まず、そもそもDMMとはどんな会社なのか、改めて見てみましょう。「DMM」の名前を聞いたことがない、という方はあまりいらっしゃらないかもしれませんが、あるところでは英会話をやっていたり、あるところでは証券業をやっていたり、時には太陽光などのエネルギー分野に進出したり、「一体何をやっている会社なのだ」というイメージを抱かれている方も少なくないのではないかと思います。

DMMの原点は現会長、亀山敬司氏がはじめた、石川県のビデオレンタル店です。そのビデオ店が成人向けコンテンツの販売や動画配信で急成長し、現在のような様々なビジネスを行う企業群に成長しました。現在、本社は東京の六本木にあります。

②安定収益を基に拡大を続けるDMM
DMMが「いろいろな事業に手を出している」一方で、「アダルト事業を中核に据えてる」というイメージも全く間違っておらず、その中核事業での盤石な収益基盤を基に、収益の見込めそうな事業、将来性のありそうな事業に次々と参入していくような戦略で展開しています。国内の通信事業での収益基盤を基に、ロボットや人工知能など、最先端の分野に投資を続けるソフトバンクと規模は違えども、似たような構造をしているように思います。

③DMMが仮想通貨に注目することの意味
そんなDMMが近年、注目し、参入しているのが「仮想通貨分野」2017年末には、仮想通貨取引所、DMM Bitcoinを開設。ローラのCMでも注目を集めています。仮想通貨事業の中で、取引所での手数料ビジネスに留まらず、マイニング事業での収益拡大にも手を出したというのが今回のニュースまでの時系列です。
DMMが今度どのような形で仮想通貨と関わっていくのか、という点も注目ですが、こういったスタンスで成長を続けるDMMが仮想通貨事業において100億円ともいわれる大規模な投資を行っている事実が、仮想通貨に投資をしている人にとっては好材料なのではないかと思います。

仮想通貨のマイニングとは

では、そもそも仮想通貨の「マイニング」とはなんのでしょうか?マイニングを行う場所が「工場」「マイニングファーム」といわれている所以は何なのでしょうか。DMMが「マイニング」の対象としているのはビットコインだけではないのですが、イメージしてもらいやすくするためにビットコインを例に解説します。

①ビットコインはリアルタイムで「採掘」されている
ビットコインは総発行量が2100万枚とあらかじめ決められています。それに対し、現在全世界に存在数「発行済み」のビットコインは約1700万枚。8割以上が既に発行されており、残りの約400万枚のビットコインが2140年までに時間をかけて「採掘」されていくことになります。

これは、地球上に存在する量が決まっており、現在も掘り出されている「金」(Gold)に似た性質を持っています。ビットコインのイメージとしてインターネット上に存在する金と考えるとイメージしやすいと思います。

②実体の無いビットコインの「採掘」って何?
ただ、金が掘り出される、というのはイメージがしやすいと思いますが、実体を持たないビットコインが採掘される、というのはどういうことなのでしょう?
詳細を解説していると長くなってしまうので割愛しますが、ビットコインの本質の一つとして「中央集権的な管理を受けない、取引、決済手段」であることが挙げられます。

これ自体が、今までのお金のあり方とは根本的に異なるものであるのであり、権力からの解放、平等を目指すものでもあるのですが、中央集権、というのは必ずしも悪い点ばかりがあるのではなく、その権力により、決済が保証されていることも指しています。では、中央集権でないビットコインがその取引、決済の保証をどのように行うか、という点を簡単に解説します。

全世界で行われたビットコインの取引の記録は、暗号化され、全世界に公開されます。その暗号を解き、「いつ」「誰が」「誰に」「いくら」といった取引の記録が、第三者によって検算され、承認される作業が行われることによって、その取引の記録が中央集権機関を介さなくても信用できるものになるのです。その暗号を解く検算の作業というのは、全世界の誰もが行うことが出来ます。

そして、その検算を一番早く行った人が、その報酬として、新たに生成(≒発掘)されるビットコインを受け取ることが出来ます。この暗号を解き、検算する作業を「採掘」「マイニング」と呼びます。

③ビットコインの採掘って誰でも出来るの?儲かるの?

マイニングはコンピューターがあれば誰もが行うことが出来ます。とはいっても、ビットコインのマイニングの難易度は、かつては家庭用PCでも可能なものでしたが、現在は何台ものスーパーコンピューターを使って処理を行わないと、報酬を受け取れる「1位」にはなれません。巨大な設備やスーパーコンピューター、それにその施設の冷却設備など、莫大な初期投資がかかるほか、ランニングコストとしてそれらを起動するための電気代もとてつもないコストです。

これらを備えることが出来るのは、大企業などの営利団体のみですが、それだけのコストを賭ける価値のある事業と考えられているからこそ、現在でも大手企業が参入しているのでしょう。

何故金沢でマイニングなのか

なぜ電気代、リスクの高い国内を仮想通貨マイニング工場に選んだのか?ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、仮想通貨のマイニング工場といえば、有名なのは中国でした。ここに規制がかかったことで仮想通貨が暴落したのは記憶に新しいです。
実は、仮想通貨、とりわけビットコインのマイニングが国内で行われている事例はあまりありません。理由は、前述のコストの問題です。マイニング事業には莫大な電気代がかかり、かつ、成功しなければ報酬が得られないため、電気代が高い日本で行うのはリスクが高いとされています。

マイニング工場の場所として、経済的に合理性があるのは「電気代が安い」場所、もしくは「気温が低く、機械の冷却にコストを要しない」場所です。日本、という範囲においては、比較的寒冷な金沢は候補地としては有力かもしれませんが、それでも、あえて海外ではなく国内を選ぶ理由として少し説得力に欠けます。ここにDMMという会社の面白さが表れていると個人的には思うのですが、あえて国内に置き、それを公開し、見学に来てもらうという形で、実体のない仮想通貨がどういったものなのかを具体的にイメージしてもらい、信用を上げること、そして、ひいてはそのような取り組みを行っているDMMいう会社の信用を上げることが狙いの一つであるとされています。

次のステップとして考えられている、個人が小規模の資本でも参戦できる、「クラウドマイニング事業」や始まったばかりの取引所事業とのシナジーによりさらに収益を上げていくという意味合いでも、創業の地であり、観光地としても注目されている金沢で事業を始めたのは非常に大きな意味合いを持つのではないでしょうか。

DMMが新たなビジネスチャンスとして目を付けた仮想通貨

様々な事業に新規参入し続け、価値を拡大し続ける企業群、DMMが新たなビジネスチャンスとして目を付けた「仮想通貨」の将来性もさることながら、マイニング事業には不利な国内をあえて選ぶところにも、DMMが長期的な視点で物事を見据えている側面がうかがえます。

DMMや仮想通貨に興味を持たれた方、次の旅行では工場見学がてら、金沢などいかがでしょうか?