2017年後半のビットコイン急騰で“億り人“が増加
2017年は「仮想通貨元年」とも呼ばれ、仮想通貨ビットコイン(BTC)の名前が一般の人たちにも知られるようになり、BTC価格も驚異的な伸びを見せました。2017年初頭のビットコイン価格は10万円前後でしたが、年末には一時220万円超の高値をつけて大きなニュースになりました。(2018年2月の暴落はあれど)2017年だけでもBTC価格は20倍以上に上昇、2016年からBTCを保有していれば100倍以上にもなった「ビットコイン急騰」によって、いわゆる「億り人(おくりびと)」が多く誕生したといわれています。億り人というのは、リスク投資(レバレッジ投資含む)によって個人金融資産が「1億円以上」になった人を意味しています。
2016年までは「仮想通貨の法整備」がまったく行われていなかったので、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)を売買して一定以上の利益が出た人でも、「納税義務・確定申告」を意識する人は少なかったと思われます。特に、「顔写真つきの身分証明書の提出」などの本人確認が徹底していない海外の取引所を使って取引していた人だと、納税義務が発生する仮想通貨売買の利益があっても申告していなかった人(実質の脱税をした人)がかなりいると推測されています。
仮想通貨は本人確認が不十分であれば、ウォレット(財布)と本人を紐づけする確実な情報がない限り、本人(納税義務者)を特定して税金を取り立てることが難しい匿名性があるからです。そのため、仮想通貨に対しては今もなお「課税逃れ=グレーゾーンの脱税・マネーロンダリング(資金洗浄)」の疑惑があるわけです。しかし、現時点でビットフライヤーやコインチェック、DMMビットコインなどの大手取引所を使って取引している人は、「本人の写真と身分証を提出する本人確認・居住地確認」を済ませているはずなので、利益がでているのに申告していなければ税務調査の対象になる恐れがあります。
仮想通貨投資家の「納税義務・利益確定」はいつ発生するのか?
日本の税制は、会社員・公務員の給与所得者の「源泉徴収方式(天引き方式)」を除けば、原則として「申告納税方式(自発的に一年間の課税所得を確定申告する方式)」になります。日本における納税義務(仮想通貨売買が当てはまる総合課税)は、給与所得がある人は「年収20万円以上」、無職などで他の収入がない人は「年収38万円以上(基礎控除以上の収入)」で納税義務が発生します。仮想通貨売買で「年間38万円以上の利益」を得た場合は、他の仕事をしていてもしていなくても納税義務があるということになります。2月16日~3月15日までの申告期間に、確定申告を行って税金を納める必要があります。
昨年末からニュースで、金融庁が取引所に「本人確認厳格化の一層の徹底」を求めていることが報じられています。国税庁・税務署も、取引所に「顧客の仮想通貨売買履歴(損益確定)のデータ」を提出させる権限を行使し始めていますから、「確定申告せずに黙っていれば大丈夫だろう」という安易な考え方は非常に危険です。仮想通貨ブームで「億り人」などが話題になったこともあり、税務署の監視の目は厳しくなってきています。仮想通貨は現時点では株・FXにある「源泉徴収による納税方式」を選ぶことはできませんから、国税庁基準による「納税義務」が発生すれば、自分で確定申告しなければなりません。
ビットコインやアルトコインを売買して利益が確定したと税務署に見なされる主なタイミングは「仮想通貨を円と交換して利益が出た時」になります。しかし、含み益がある場合、「仮想通貨を別の仮想通貨(円以外の外貨)と交換した時」や「仮想通貨で商品を購入した時」にも利益が出たと見なされるので注意が必要です。値上がりしたビットコインでアルトコインや商品を購入したようなケースでも、「課税対象となる利益」が出たと見なされるのです。
仮想通貨の税金は「総合課税(雑所得扱い・累進課税)」で、株・FXの税金と比較しても高い
仮想通貨投資の利益は「雑所得」として扱われ、税金は「総合課税(他の収入と加算した上での所得税=最高税率4,000万超で45%の累進課税)」になります。さらに所得の約10%の住民税の支払い義務もでてきます。仮想通貨の総合課税は利益が大きくなるほど、「株・FXの分離課税(売却益・配当に対して一律20%)」よりも税金が高くなります。株・FXの申告分離課税は、他の所得と分離されていて住民税の課税ベースにもなりません。一方、「仮想通貨の総合課税」は他の所得にプラスして計算するので、「合計課税所得695万超=税率23%以上」になると株・FXより高率の税金がかかり住民税も上がります。
「含み益のある仮想通貨」で、他の仮想通貨や商品を購入した時は、「円(現金)」に替えていなくても納税義務が発生するというのはかなり厳しい納税の条件です。例えば、「1,000万円の含み益」があるビットコインで、イーサリアムを購入した場合、「現金化していない状態(手持ちのお金がない状態)」であっても、「1,000万円分の雑所得」に対する所得税の支払い義務が発生します。
「900万円超~1,800万円以下」の所得税率は33%ですから、単純計算で「1,000万×0.33-1,536,000(控除額)=1,764,000円(所得税)」と「1,000万×0.1=100万円(住民税)」の税金合計2,764,000円を支払わなければならないのです。億り人で1億円の利益が確定された場合、「1億×0.45-4,796,000(控除額)=40,204,000円」の所得税とさらに1,000万円の住民税(合計50,204,000円の高額の税金)がかかります。別の事業所得などがあれば、もっと税金は高くなります。もしこの状態で、購入したイーサリアムが暴落したら税金の支払いに困ってしまう事態も考えられます。
仮想通貨暴落・コインチェック事件で税金を払えないリスク
客観的に考えれば、ビットコインなどの仮想通貨は「円」に替えていない限り、「実際の支払い能力はない(仮想通貨で直接税金は払えない+翌日の価値がどうなるか分からない)」のです。しかし日本の税制では「含み益のあるビットコイン」で、アルトコインや商品を購入した時点で「利益が確定した(納税義務の発生)」と見なされてしまいます。そのため、利益が確定した人の中に、「税金の支払い能力がない人(仮想通貨下落・利益の使い込みで現金がない人)」も多数でてくると予測されます。
「含み益のある仮想通貨」を「他の仮想通貨・外貨・商品」などと交換する時には、常に「予定される翌年の税金(確定申告)」を考え、「税金資金」を準備しておく必要があります。税金額は他の仮想通貨に交換した時点で決まるので、「交換後の別の仮想通貨暴落」は税金が支払えなくなるリスクにもつながります。1月26日に発生した「コインチェック事件」では、3月現在においてもユーザーの口座が凍結されており、「アルトコインの現金化・出金」が不可能になっています。コインチェックで去年、高額の利益が確定している人の中には、「アルトコインの現金化」ができないことで、税金の支払いが不可能になる人もいるのではないかと心配されています。
ビットコイン投資(仮想通貨投資)における合法的な節税対策と脱税リスク
ビットコインはじめ仮想通貨投資では、含み益のある仮想通貨を何と交換するのか、どのタイミングで交換して利益を確定するのかの「タックスプランニング(納税計画)+税金資金の確保」が大切です。「手持ち現金」の納税資金を確保した上で、次の仮想通貨投資に向かう原則を守らないと、大きな利益を確定した後に現金が足りなくて(持ち替えた仮想通貨が暴落して)、税金が払えなくなるリスクがあるからです。
仮想通貨投資における節税策は、「含み益のある仮想通貨を動かした時に税金が発生する基準」を利用したものになります。すぐに現金が必要でなければ、一度買った仮想通貨はできるだけ「円・別の仮想通貨」と交換せず、「長期保有(ガチホ)」することで税金発生を回避できます。「現金で購入・保有しているだけの仮想通貨」には税金がかからないので、翌年の税金の心配をするのであれば「含み益のあるビットコイン(仮想通貨)」で別の仮想通貨を買わずに、できるだけ現金で買うことも節税になります。数百万円以上の含み益がある仮想通貨を、一度(同じ年度)にまとめて交換することには、税金上昇のリスクもあります。
仮想通貨投資の税金は高いのですが、国内の取引所や銀行口座を使っている人が、仮想通貨投資の利益をごまかすことはほぼ不可能です。税務署は取引所から仮想通貨投資で利益を得た人のリストを得ることができ、「脱税の疑い」があれば個人の銀行口座の送金履歴をチェックすることができるからです。税務署の税務調査の対象期間は「5年間」で、さらに悪質な所得隠し・脱税の疑惑がある人に対しては「最長7年間」まで延長できます。脱税すれば「無申告加算税・重加算税など追徴課税」がかかり、脱税して支払い能力がなければ訴追されて刑事罰(10年以下の懲役)を受ける恐れもあります。合法的なガチホ(長期保有)の節税対策であれば大丈夫ですが、取引所・金融機関からのデータを入手する権限が税務署にある限り、「仮想通貨による利益」を隠すことはできないのです。