投機対象として注目されながらも、最近では安全性の問題安定性の問題など様々な問題が取り沙汰されている仮想通貨。コインチェック社のハッキング、そして仮想通貨の流出問題がセンセーショナルに世間で報道されたこともあり、仮想通貨に対する風当たりも大きくなっています。そこで2月に会社などを中心とした仮想通貨の業態団体が発足しました。
このタイミングで業界団体が発足したことにはどんな狙いがあるのでしょうか。また投資家等に対しての影響、そして仮想通貨全体の先行きにはどのような影響があるのかを考えてみましょう。
仮想通貨の業界団体とは?
今回発足にこぎつけた仮想通貨の業界団体とは、日本仮想通貨事業者協会(会長=奥山泰全・マネーパートナーズ代表取締役)と日本ブロックチェーン協会(代表理事=加納裕三・bitFlyer代表取締役)の二つの協会が合流し、これまで登録されていた仮想通貨取引所16社による新団体の設立になっています。
従来も仮想通貨を取り扱う会社などによる業界団体は上記の2つが存在していたのですが、小規模な会社の集まりとなっており、世間一般に対するアピール力もなくその存在感は極めて希薄なものでした。
しかし1月末のコインチェック社の仮想通貨流出問題により、仮想通貨に対する信頼性が揺らぐ中、業界内でもそのことが大きな問題となっていました。そこで、仮想通貨を取り扱う会社関連会社が一丸となって世間に対するアピールを行い、業界の健全化に取り組んでいく必要が出てきたとして、このような業界団体の発足が行われたとみられています。
ブロックチェーン部門は分離されている
16社によって結成されたこの業界団体ですが、実は仮想通貨に必要なブロックチェーン技術を扱う会社については、また別部門の取扱いになっています。仮想通貨の取り扱いサイトは、基本的にはFXや株式のように仮想通貨を販売する売買するシステムを構築してしまえば、運用自体は行いやすいため、それほど高度な技術力は必要ありません。
しかしブロックチェーン技術となると、一転して状況が変わります。この技術に精通した技術者も少なく、テクノロジーを高い水準できちんと運用できる企業というのは、日本国内においてもそれほど多くないのです。そういったブロックチェーン技術を得意とする会社は、今回の業界団体の発足にはまた別部門として運用されており、決して業界内の意志や意向がひとつに固まり、一丸となった団体ではないことがこのような面から伺えてきます。ブロックチェーン技術を取り扱う会社が集まった業界団体として、ブロックチェーン協会というものが既にあり、それにはすでに35社が参加をしています。
この二つの団体は2017年の前半から統合を目指していたものの、話し合いの中で仮想通貨の取引サイトを扱う部門と、ブロックチェーン技術を扱う部門をどのような扱いにしていくかといった取り決めがうまく話し合いができておらず、結局交渉は難航したまま現在に至っています。将来的には16社と35社で統合して、一つの業界団体になっていきたいという意向はあるものの、棲み分けができていないという点や、どこが舵をとるのかといった点で、完全な同意には至っていないというのが実情です。
団体の発足は決して順風満帆とはいえない
業界団体の発足を目指しながら完全な統合には至ってないという事例からわかるように、仮想通貨の業界団体の発足自体は決して上手くいったとは言えない状況です。仮想通貨の投資熱は一時期より収まったものの、まだまだ一攫千金的に利益を上げやすい投資手法として関心を持って投資家が多くいます。そのため、取引サイトを経営する会社にとってみれば金のなる木である存在と言えます。
しかしそういった仮想通貨倍々サイトを運営したい会社にとって技術を提供してくれる会社はありがたいものの、技術を持っている会社だからこそ監視体制の強化などを目的として自社のサイトに色々な注文がつけられることを恐れているという面もあります。業界団体を作るからには、投資家に対する安全性の確保、または利益の供与を目的としなければいけないのですが、そのような意向も一致していないのです。まずは自分たちだけでも安全性をアピールしたいと考える会社も、足踏みを揃えない状態で存在しているとことが想像されます。
また金融庁からの指導内容に対してもその指導に従わなければいけないのですが、どこまで業界として取り組めばいいのか、自主規制などが必要になるのかといった部分で多くの論争が業界団体の中で行われているようです。まだ目立った活動は行われていない仮想通貨の業界団体ですが、活動を行っていないというよりも、活動を行っているのに発表できるような内容がないという名がその実情だと考えられます。
今後の投資家に与える心理的影響はあるのか
仮想通貨の業界団体が発足したことによって、投資家に対する心理的影響にはどのようなものが生まれるでしょうか。メリットとしては仮想通貨業界団体内のガイドラインなどが定められることにより、有象無象の取り扱いサイトが参入してくることが防げるといった点があるでしょう。
自主規制というわけではありませんが、取り扱いサイトの品質管理のためにどのような技術を持っているのか、また投資家保護のためにどのような取り組みを行っているかなどの監視体制ができることで、技術を持たないセキュリティ背の低い仮想通貨取り扱いサイトが今後増えていることを防げるという面があります。
また業界団体としてアピールすれば、世間に対する知名度と信用度が高くなり、仮想通貨がこれまで保たれていた、なんとなく怪しい本当に投資であり、本当に大丈夫なのかといった悪いイメージの改善をつなげることにも繋がっていくでしょう。業界団体ができることにより、仮想通貨の取引サイトというものが一つの産業そして投資手法として大きく認知度上げていくためには、間違いなく役立つと言えます。
また業界内からも投資家からの信頼を回復しなければいけないという考えが生まれていき、仮想通貨サイト運営する会社の中でも、自浄作用が働いて、より健全な投資手法の道を歩んでいくことが想像できます。
規制が強化されると投機的なメリットが衰える可能性も
投資としての健全性の確保のためには業界団体によるガイドラインが設定されることは好ましいことなのですが、一方で利益を得ることだけを目的としている人にとっては、ガイドラインが定められ自主規制が行われることを望まない人もいます。規制が厳しくなることによって仮想通貨の価格相場の変動が少なくなったり、また価格変動の激しい新規の仮想通貨を取り扱わなくなれば、投資対象も減っていき、仮想通貨に対する魅力を感じなくなる投資家も出てくることでしょう。
現場仮想通貨とは名ばかりで、仮想通貨を実際に通貨として取り扱うことができる店が非常に少ないのが現状です。投機目的としての魅力が仮想通貨からなくなってしまえば、売買する人間自体が減ることで、仮想通貨市場が衰退していく可能性もあります。
ただし健全性の確保はやはり金融庁からも求められますので、これは避けられない動きでしょう。健全化の大枠に沿って考えれば、投資家としても業界団体により仮想通貨投資が健全化していくのは歓迎すべきことではないでしょうか。