今、仮想通貨の世界はかつてない危機を迎えています。9月30日には中国の取引所「BTCチャイナ」が取引を停止し、他の大手取引所も10月末までには中国から撤退するとの事。最近では大手取引所幹部の出国禁止や海外取引所のアクセスを制限する動きも伝わっています。この大規模な取引中止の事態の背景には、中国の政府当局の仮想通貨の悪用で資金洗浄など脱税の恐れを取り締まろうという思惑があったのです。以前から中国は、共産主義の考えから政府当局が管理できない媒体を排除しようとGoogleの通信を排除したり、P2Pによる匿名通信が行えないようIPアドレスを監視したりしていたので、今回も同様に中国の決定が覆される事は無いでしょう。
この巨大な市場が仮想通貨の世界から撤退するとのニュースを受け、世界市場は一時騒然とざわめき混乱し、ほぼ全ての仮想通貨の相場が下落に転じました。さらに悪い事があり、同時期に米銀JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)がビットコインは「良い終わり方はしないだろう」とメディアに発表し、仮想通貨バブルがはじけるとの予言として「これは詐欺」であり、最古のバブルと言われる17世紀オランダの「チューリップ球根より悪い」との発表が行われました。これらのマイナス因子が重なってしまった事から不安による売りが続出して、一時ビットコインの相場は40万円を割る事態となっていました。
この市場、買い手にとってはまたとない絶好の機会ですが、売り手にとっては自分の資産が溶けていくのを手をこまねいて見守る事しかできないという非常に不安の募る状況でした。その心配は一部の通貨だけにとどまらず仮想通貨市場全体に蔓延していた為、一部の投資家はドルに資金を移動するなどの逃げ道を作るなど見るに悲惨な状況だったのです。
マカオ当局も仮想通貨企業との取引を停止
マカオの金融当局(AMCM)は日本時間9月27日に公式に声明文を発表し、同月20日に銀行や送金代行業者に対してデジタルトークンや仮想通貨を発行する企業向けの銀行口座開設などを含む金融サービスの停止を求めました。
【マカオ当局の声明】
中国本土の銀行は、政府の規制によりICOを発行する企業向けの金融サービスを停止しています。マカオでも中国当局の意向に従い、銀行及び送金代行業者などの仮想通貨関連事業向け金融サービス提供を禁止します。
この発表には中国が仮想通貨を排除した事が影響しており、1999年にポルトガルから中国に返還されたマカオとしては中国の意向に逆らう事ができなかったのでしょう。元々、マカオは中国の特別行政区として指定されており、本土中国とは異なった体制を持っている為にマカオの金融管理局は2014年6月の発表で「仮想通貨は金融管理局の監督下に無い」との見解を示していたのですが、今回の中国の発表にマカオの国民はとんだとばっちりを受けた格好になってしまったようです。
中国にある各取引所の対応
中国の大手仮想通貨取引所であるBTCCの対応は早いもので、9月30日午後12時までに全ての資金を引き出すようユーザーに呼び掛けていました。なお同取引所は昨月の27日午後12時に中国内での受付を停止していますが、他の大手取引所であるHuobiやOKCoinは10月末を受付終了予定日として運営を続けています。
仮想通貨を取り扱う事で切っても切れないのがマイニング事業であり、HuobiやOKCoinはマイニングを停止する経済リスクを危惧しての運営継続なのでしょうか。足早に受付を停止したBTCCは、マイニング事業の停止に関する当局からの要請は無いので今後もマイニング事業に支障は無いとコメントしていますが、今後さらなる中国政府の締め付けが危惧されます。
一部の取引所は中国国外に取引所の移動を検討
中国の仮想通貨取引所が次々と閉鎖されていく中、9月末で操業を停止していた仮想通貨取引所ViaBTC創業者ハイポ・ヤン氏は、9月21日に行われた香港のブロックチェーン関連イベントで中国外に取引所を開設する計画であることを明言しました。
【原文】
「我々の顧客の3分の1は中国外から来ている。彼らはViaBTCのプラットフォームを使い続けてくれると信じているので、価値を提供していきたい」
このようにリベラルな考えを持つ取引所も中にはあるのですが、中国政府がそのような行動を望むはずもなく各取引所のCEOが海外に旅行する事を禁止してその行動を制限したのです。中国の発表する建前では海外旅行の禁止の理由を「当局への協力」と言っていますが、明らかに仮想通貨を中国内に閉じ込めて「中国の許可なく勝手に儲けてはいけないぞ」と言いたそうなその態度では、言葉の信ぴょう性は低いでしょう。
これは私の見解ですが、「世界経済を揺るがすほどの消費者人口を有する中国が仮想通貨に参入しないと市場は伸びないぞ。中国主導で仮想通貨を運営させろ」と脅しをかけているようにも見えます。このように高圧的な中国の態度に対抗する為には、強力なセントラルを持つ仮想通貨が連合を組んで中国政府を話し合いの場に引きずり出すのが得策でしょうが、今現在、仮想通貨最大のトレード量を誇るビットコインではセントラルを持たない為に可能性を秘めているのはエイダコインなどのほんの一握りの仮想通貨だけです。
様々な情報が錯そうして市場は混乱を招いている
この記事を書いている私もそうですが、仮想通貨の情報は現場を見た訳でなく様々なニュースレターやTwitterなどのSNSで海外とコミュニケーションを取って新しい知識を仕入れています。しかしこの中国市場、荒れに荒れ過ぎて誤った情報が数多く出回っています。特に多いのが、中国政府がP2Pを規制したなどと中国が仮想通貨以外のネットワークも取り締まったという内容ですが、そのような話は事実無根です。そのような冗談めかした噂が仮想通貨の取り締まりに対する危機感を薄れさせてくれたのか、9月末にはBITCOINの下げ幅がストップしました。
一時的な相場の低迷は見られたが、現在は回復に向かっている
9月28日頃からやっと各仮想通貨が上昇に転じてきました。特にビットコインとイーサリアムの相場回復の早さは凄まじいものです。BITCOINは9月26日の段階で46万円前後だったのが、10月2日では48万円まで回復しました。実はこの10月2日、多くのトレーダーが待ち望んでいたエイダコインの取引開始日なのです。
このエイダコイン、上場開始1時間で30億円以上の取引が行われるほどに取引量が多いので、これからオルトコインへの分散投資など他の通貨への流入が行われる可能性を見ると多くの仮想通貨における相場の上昇が見込めます。一時は中国という超巨大市場が失われた事による期待損から「仮想通貨の世界はもう終わりだ」とまで言われていました。しかしエイダコインなどちらほらと安心材料が出てきているので市場は活気を取り戻しています。巨大市場が無くとも、ニーズを満たしている通貨であれば必然的に求められて相場は上がっていくのですね。
今後も仮想通貨の世界は不安定要素が多く残っており、相場の乱高下が繰り返されると思います。取引のチャンスと見るか不安要素と見るかは人さまざまではありますが、やっとニュースや新聞で話題を集めて世間に認知されだした世界なので、これから仮想通貨を便利だと思って使う人はきっと増えるでしょう。そうなった時には相場は今より上昇したまま使用者が減らない限りは一定の相場で安定するように見ています。