ビットコインに投資している方は10月25日に何を思うのでしょうか。7月から分裂を先延ばしにされてきた通貨に期待や不安を織り交ぜつつ、BTG(Bitcoin Gold)の公開日時が迫っています。11月にはBitcoin Segwit2x(仮名)も予定されており、仮想通貨の王者であるビットコインの地位を脅かしており、これらの新しい仮想通貨が公開されると4種類のビットコインが取引される事になります。以前からトランザクションのネットワーク問題などで噂が絶えなかったビットコインですが、今になってハードフォークを連発するのは、投資家として不安を覚えてしまいます。
なぜまたハードフォークを起こすのか
そもそもハードフォークとは、ビットコインの持つネットワーク転送に速度の限界や処理の改善必要を感じた時に、負荷分散を目的として行われます。その際、ハードフォークによって新しくできる仮想通貨に注目が集まり市場の一部が移るので、ビットコインの価値を落とすとも言われます。
それに対してソフトフォークと呼ばれる分裂現象は、仮想通貨としての価値を下げずに仮想通貨のシステムを増設、改良する事によってそれまであったリスクを軽減しようという試みなので、投資家にとってはハードフォークよりソフトフォークが行われた方が安心ですね。しかしソフトフォークではシステムの改良に限界がある為、システムの改良として見るのであれば、ハードフォークを行う事がベストだと言えます。
では今回のハードフォークでビットコインのどこに問題があり限界を感じているかというと、実はネットワークの速度もスムーズで問題点と呼べるべきことはありません。
それなのにハードフォークが必要と言われるのは、ビットコインを流通させるのに必要なマイニング作業(発掘)の難易度を下げて誰にでもマイニングができる環境を作ろうという香港のマイニング企業LightningASICのCEO、Jack Liao氏の考えから生まれた試みなのです。
現在のマイニングの仕組み
マイナーと呼ばれるマイニングで収益を上げる人々がマイニング作業を行って報酬となるビットコインを得るためには、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)と呼ばれる専用アプリケーションを使用してP2Pを利用したビットコインの分散処理に参加する必要があります。この作業、ビットコインを送る人と受け取る人のデータを何度も照会確認を行う為に、その作業にたくさんの電力を消費するのです。
そうなるとマイニングを行って手に入るビットコインで得られる利益とその間消費される電力のコストパフォーマンスが合わずにマイニングを断念する人が増えてきて、マイニングはスーパーコンピューターのように高速かつ電力消費の抑えられたパソコンを持つ一部の人しか利益を出せないものとなってしまったのです。なかでも、マイニングにおける発熱を抑える為の冷却用電力の消費が顕著だと言われています。(ビットコインの相場によっては通常のグラフィックボードでも利益が出る場合もありますが、その実態は不安定のようです)
ハードフォークによって何が変わる
BTGのハードフォークが行われると、これまでに新規参入が難しかったマイニング事業が容易に参加できるようになる事が期待されています。これまでのASICを使用するマイニングシステムからGPU(Graphics Processing Unit)と呼ばれる、多くのパソコンゲームユーザーやクリエーターが使用する機械へと移行されると、日常作業の合間に「マイニングでもやってみるか」と気軽に手を出せるようになりますね。
特に期待されているのが、AMDというGPUメーカーが出す「RX470」です。このGPUは既に売り切れを起こすほどマイニングに適していると言われているにも関わらず2万5千円前後(2017年10月現在)で購入できるので、主婦が家事の合間にマイニングを行うという光景も今後は出てくるのでないでしょうか。
本家ビットコインへの影響は?
既にビットコインに投資をしている方が一番気にする事でしょう。過去にもBTC(Bitcoin Cash)へ分裂した際に一時的ですが本家ビットコインの相場が急落しました。もしかすると、今回も同様に相場が下がるかもしれませんし、迫るBitcoin Segwit2xの分裂からビットコインユーザーへの信用を失って過去にない相場の急落を見せるかもしれません。このように不安要素も多々ありますが、分裂前には喜ばしい事もあるのです。ビットコインが分裂する際、ハードフォーク以前に所持しているコインの量に応じて新しいコインが自動的に分配されます。その時、BTGに期待が薄くとも「持っていて損はない」という考えからビットコインを買い足す人が増えて相場は高騰する事は明白です。既に、10月6日現在ではビットコイン相場は48万円以上と同月16日以降8万円も値上がりしているのです。
ハードフォークが行われると、どうしても売りが集中し、相場は一時的に下がる傾向にあります。そこからビットコインが持ち直せるかどうかはその後の信用力によるものですが、既に実生活にまで影響を与えているビットコインの信用が下がる事は考えにくいでしょう。なぜなら各投資銀行や証券会社では、自国通貨の価値が国の紛争や内乱などで他国通貨に劣って利益を失ってしまうよりも、世界各国共通で取引を行える仮想通貨の所持にシフトしているからです。加えると、ビットコインで買い物や飲食ができる店が日本でも多数出店されている為にニーズは尽きないかと思われます。だからと言って楽観視してしまうと予期せぬ暴落を起こすと大損してしまいますので、リスクヘッジを必ず行いましょう。今リスクヘッジとして期待できるのは、今後の伸びしろがあるRippleやNEM、エイダコインがあります。うまくいけば、ビットコインと合わせて大儲けできるチャンスがあるかもしれませんよ。
Bitcoin Goldの期待値は?
では、BTGはマイニング市場の需要を確保した後に仮想通貨としての価値を見出す事ができるのでしょうか。この課題に対する解決策は、マイニングにおける電力問題とBTGを通貨として取り扱う事業者が現れる事でしょう。
まず、マイニングが容易になりマイナーが急増してしまうと、それにかかる電気代が発生するというリスクがあります。このリスク、誤解してはいけません。一般ユーザーのリスクとは異なり、国が生産する電力の費用という意味です。特に日本国では、原子力発電所の使用を自重するようになってからというもの電力事情が厳しくなっています。もしここで急激にマイニングが増加し、莫大な電力が消費されるとどうなるでしょう。別の例を挙げると、毎年のように各県が呼び掛けている猛暑対策の為の節電対策が答えを出してくれています。エアコンにしてもマイニングにしても、発電所の電力を95%以上消費すると強制的に停電を起こす為に、今後BTGによりマイニングが増加すると新しい電力規制が発生するかもしれません。マイニングの為に、国が予算を割いて新しい発電所を用意するなどありえませんから。
そこまでして大量のBTGを発掘しても、果たしてBTGに共感して自社通貨として取り扱う事業者が現れるのでしょうか。もしそのような事業者が現れなければ、BTGは単なる投機目的の消極的通貨として扱われる事になってしまうのです。そのあたりはBTGを提唱している企業LightningASICの裁量によるところなので私たち投資家としてはLightningASICの動向を見守るしかありませんが、今後は本家ビットコインを目指して価値を上げていって貰いたいですね。