2018年において仮想通貨に影響を与えた出来事とその影響

2017年においては、仮想通貨に関しての情報が多く流れました。例えば時価総額第2位のイーサリアムでは、海外の大企業やトヨタなど、国内外の大手企業が参加するイーサリアム企業連合が発足。時価総額第1位のビットコインに関しては、2017年8月にハードフォークにより新たな仮想通貨ビットコインキャッシュが誕生し、以降大きな注目を集め続けています。

また、世界各国での仮想通貨規制の流れを受け、大きく価値が下落することもありましたが、2017年の年末には多くの仮想通貨が過去最高値を更新しています。そして2018年も2017年の流れを受け価値の高騰が期待されていましたが、実際には大きく価値が下落しています。

2018年1月仮想通貨取引所での不正送金が発覚

2018年1月26日、日本国内大手の仮想通貨取引所コインチェックにて、仮想通貨ネムの不正送金が発覚しました。被害額は580億円に上り、コインチェックでネムを保有していた26万人に影響を与えています。このニュースは日本だけではなく、世界各国でも話題となり仮想通貨の価値は大きく下落しました。下落要因は他にもありますが、コインチェックでの騒動の影響は大きく、現在も仮想通貨の価値は大きく下落したまま回復していません。

この事件の原因は、ハッカーがコインチェック社員の端末にウィルスを感染させたうえで不正アクセスを行ったことです。もっとも、ウィルス感染が原因だとしても今回の不正送金は、コインチェック側がオフラインで仮想通貨の管理を行い、セキュリティ対策を行っていれば防げた事態でしょう。また、コインチェックの利用者は非常に多く、会見時や事件後の対応なども含めたうえで大手の仮想通貨事業者に対する失望感をいたずらに広げた面も価格の下落に繋がったと言えます。

また、市場に対して加害企業ともいえるダメージを与えたコインチェックは破産が囁かれていました。しかし、現在では一部仮想通貨の出金売却を再開し、ネム保有者に対する補償を開始しています。金融庁からの業務改善命令を2度受けたうえで、今後も事業を継続する方針です。ちなみに、コインチェックは、金融庁に仮想通貨交換業者登録を申請していますが現在でも登録業者として認められていません。もっとも、会社としての不手際の規模を考える限り登録事業者となり得るとすれば、経営陣の刷新などの改革が必要となるでしょう。

2018年1月テザー疑惑により仮想通貨の価値下落

仮想通貨を巡る動きは時と共に激しくなっている仮想通貨テザーは、アメリカドルと同額の価値になるように設計・運用されています。その為、通常の仮想通貨の様に大きな価値の変動はありません。簡単に言えば、テザーが欲しい場合は、運営会社のテザー社に法定通貨を預ければ預けた額の分のテザーを入手することが可能です。また、テザーの換金においてはテザーの入金で法定通貨が入手できることになります。その為、テザーの発行量と同額の法定通貨をテザー社が保有していることでテザーの価値は保証されていると言えます。

しかし、現在テザー社に対して疑惑の目が向けられています。その疑惑の内容は、テザー社が、テザー発行分と同額の法定通貨を保有していないというものです。もし、疑惑が事実であれば、テザー社はテザーを好きなだけ発行でき、その発行した通貨を使用したうえでビットコインなどの仮想通貨を購入する事が可能となります。

この問題が本当であれば、仮想通貨テザーに対する信用がなくなるだけでは終わりません。全ての仮想通貨の信用が失墜し、仮想通貨の価値の暴落が起き、最悪の場合は仮想通貨市場の崩壊が起きる可能性があります。テザー疑惑は解決していない為、より注意深く見守っていく必要があるでしょう。

2018年2月仮想通貨取引所でシステムトラブルが発生

2018年2月16日、国内大手仮想通貨取引所Zaifでシステムトラブルが発生し、騒動となっています。システムトラブルの内容は、仮想通貨ビットコイン・モナコインが0円で売買できる状態にあったというものです。また、Zaif利用者の方が異変を感じどこまで購入できるのか試してみたところ、21億ビットコイン、日本円換算で2200兆円分のビットコインが0円で購入でき、実際にZaifの口座に反映されています。

トラブルの確認時では、システムトラブルが起きたことについてZaif側からの説明はありません。そのため、0円でビットコインを大量に購入した利用者の方が動画をyoutubeに投稿し、一時的なパニックが起きています。また、Zaifがサイバー攻撃に遭ったなど様々な憶測が流れる状況でしたが、その後システムトラブルであったことがZaifから告知され事態が収まっています。

1月にコインチェックの不正送金問題が発生して、1月も経たずにZaifでのシステムトラブルが発生したことから、日本国内の仮想通貨取引所への信頼は揺らいでいます。Zaifの場合は幸いなことに、システムトラブルであったため被害者はいません。しかし、仮想通貨取引所でのトラブルは仮想通貨の価値を押し下げます。その為、コインチェックとZaifの事件・トラブルは悪い意味で仮想通貨市場に影響を与えていると言えるでしょう。

2018年1月から金融庁が仮想通貨交換業者に対する対応を厳格化

コインチェックの不正送金問題を受けて、金融庁が仮想通貨交換業者への対応に乗り出しています。2018年1月にはコインチェックに対して業務改善命令を出し、2月には立ち入り検査を実施しました。それだけではなく、麻生太郎財務相は仮想通貨交換業者として登録されている16社、登録申請中のコインチェックを除く15社に関しても検査に入る方針を示し、金融庁が検査を開始しています。

2月だけでも複数のみなし業者や登録業者であるGMOコイン、Zaifを運営するテックビューロ株式会社に立ち入り検査を実施しています。そして、2月の立ち入り検査の結果を受け、3月8日に実施された行政処分の内容として、ビットステーションなど2社が仮想通貨交換業者として初めて業務停止命令を受け、その2社を含めた7社が行政処分を受けています。

行政処分を受けた中には、仮想通貨交換業者として登録されているGMOコイン、テックビューロ株式会社も含まれており、更に仮想通貨交換業者の立ち入り検査が進めば行政処分の対象は拡大するでしょう。こうした金融庁の対応を受けてみなし業者であるビットステーション、ビットエクスプレス、来夢の3社が仮想通貨交換業の登録申請を取り下げています。

仮想通貨2団体が統合に向けての動き出している

2018年2月仮想通貨業界の団体である日本仮想通貨事業者協会、日本ブロックチェーン協会が4月に統合する方向で調整していることが明らかにされています。これまで両団体間での主導権争いにより統合協議は進展していませんでした。しかし、コインチェックでの仮想通貨の不正送金問題の発生を受けて、両団体は統合へ向けた協議を活発化させています。

新団体の会長にはマネーパートナーズ代表取締役奥山泰氏、副会長にはbitFlyer代表取締役加納裕三氏が就任する予定です。新団体は金融庁からの自主規制団体としての認定を目指して、顧客への補償、システム障害対策などに対して業界自主規制を設け会員に順守させるとしています。

2018年に入り、日本だけでも仮想通貨は激動と呼べる動きを示しています。また海外も含めれば、規制と声高に叫ばれる理由も肌で感じるほど仮想通貨が持つリスクが露呈し始めていると言えます。しかし、厳格化されたルールのもとであれば仮想通貨に対する複合的な期待値は低くはない為、価値は次第に上昇していくでしょう。