ストラティス(Stratis)の将来性

アルトコインの「ストラティス(Stratis)」は現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていません。海外の取引所ではアメリカのBittrex、Poloniex、イギリスのHitBTC、ニュージーランドのCryptopiaなどで取り扱っていますが、どれも日本語対応ではなく、日本円からストラティス(Stratis)を直接交換することはできません。

ストラティスはブロックチェーン開発のためにある仮想通貨

Stratis(ストラティス/単位:STRAT)は2016年8月に誕生したアルトコインです。ストラティス(Stratis)の発行上限は9,800万STRAT。ストラティス(Stratis)の本社はイギリスのロンドンにあります。ストラティス(Stratis)は、ビットコイン(BTC)に始まる仮想通貨の基本システム「ブロックチェーン」の技術を企業に普及させるという使命をおびています。

ビットコインに採用されて有名になったブロックチェーンの技術について改めて簡単に説明しますと、多くの「ブロック」がつくられ、それらが自転車の「チェーン」のようにつながって、ブロック一つひとつに取引のデータを分けて記録するという「分散型」のシステムです。連鎖しているチェーンでブロックを一つひとつ照合するので、どこかで食い違いが生じたら「エラー」になり、その場で不正や改ざんがあったとわかるようになっています。

それが技術的に仮想通貨の「安全性」や「信頼性」を保証して、仮想通貨を安心して利用できるわけです。ブロックチェーンの使い途は仮想通貨に限らず、安全性や信頼性が必要なシステムなら、社会の中で幅広く利用される可能性があります。一つのコンピュータの記録媒体(ハードディスクやメモリーなど)にデータを集中的に記録し、外部でバックアップ(コピー)をとって万が一の記録の消失に備える従来の「集中型」システムとブロックチェーンは、発想から違います。

ブロックチェーン技術を応用したシステムStratis

基本的な考え方(設計思想)が違うために、従来型のシステムを勉強した技術者は、一から勉強し直さないとブロックチェーンの開発や運用にたずさわることができません。しかし、それを一から学んでプロの技術者になれるような場は非常に限られています。これが大きな壁になって今、ブロックチェーンの開発技術者は日本はもちろんアメリカでも数が少なく、高い給料を示しての奪いあい、引き抜き合戦が起きています。そんなブロックチェーンのシステムを「楽に開発できる」「従来型のシステムの勉強をした技術者でも、勉強のし直しが楽になる」ようにしてくれるのがストラティス(Stratis)なのです。

正確に言えば、ストラティス(Stratis)の開発プラットフォームを利用すれば、大学や専門学校でプログラミングを勉強し、一般企業の情報システム部門で働いているようなごく普通のプログラマーでも、短期間でその会社だけで使うブロックチェーン(プライベート・ブロックチェーンと言います)が設計できるようになります。それなら、ブロックチェーンが扱える数少ない技術者を、「今の職場より高い給料を約束するから」と誘って、よその会社から引き抜いてくる必要はありません。その分、企業にとっては人件費のコストが安くすみます。

100年前、自動車の運転は特殊技能で、故障したらその場で原因を突き止めて修理ができるような人でないと運転免許はもらえませんでした。当時は自動車の故障が多く、修理工場の数も非常に少なかったからです。ドライバーは引き抜き合戦もあるような高給取りでした。今は、自動車の修理の方法をくわしく知らなくても免許は取れます。それは、自動車がめったに故障しなくなり、もし故障しても修理工場やJAFの手助けを受けられ、ドライバーは運転操作と交通法規を知っていればよくなったからです。そんな現象を「ブラックボックス化」と言いますが、ストラティス(Stratis)はブロックチェーン開発のブラックボックス化を目指しています。

ストラティス開発言語はC#で、独自の「Baas」採用

ではなぜ、ストラティス(Stratis)によってブロックチェーンの開発が楽になるのでしょうか? 技術者の勉強のし直しが楽になるのでしょうか? 最大の理由は、ブロックチェーンのプログラムが「C#」で開発できるからです。

C#はコンピュータのプログラミング言語で、「C言語系」と呼ばれるグループの一つです。オランダのTIOBE Softwareという会社がプログラミング言語の人気ランキングを毎月発表していますが、最新のランキングでは第5位です。1位はJava、2位はC、3位はC++、4位はPython、6位はJavaScriptです。1位のJavaと6位のJavaScriptは「Java系」、2位のC、3位のC++、5位のC#は「C言語系」です。その2系統は現在のコンピュータ・プログラミングの「二大言語系」とも言える存在です。CはC言語系のご本家で、どこの大学でも専門学校でも教えているプログラミング言語の主流です。C++はCの拡張版です。C#は2000年にマイクロソフトがC++にJavaの要素を加えて誕生させた言語で、C言語系を学んで基礎ができている人なら習得しやすいといわれています。

ブロックチェーンは「Go」「Solidity」のような少数派の言語が開発に使われることが多いのですが、ストラティス(Stratis)でブロックチェーンをC#で開発できるなら、二大言語系で多数派のC言語系を習得した人であれば少し勉強するだけで開発できるようになります。メーカーや商社など一般企業で情報システムを構築する際、ストラティス(Stratis)を仲立ちにすればブロックチェーンの普及が進みやすくなります。

もう一つ、ブロックチェーンの開発が楽になる理由として独自の「BaaS」の採用が挙げられます。BaaS(Stratis BlockChain as a service)は、在庫管理、生産管理、販売管理、会計、総務、人事など、企業がビジネスで利用するさまざまなアプリケーション・ソフトウェアを、「ブラックボックス」に近いような簡単な操作によって、「分散型」のブロックチェーン上に構築できるようにする技術です。ストラティス(Stratis)を通じてBaaSを導入すれば「ブロックチェーンのビジネス利用」の道が容易に開けて、企業が安全性、信頼性などブロックチェーンならではのメリットを受けられるようになります。

ストラティス(Stratis)はビットコインとの互換性も売り物で、ビットコインが実装した匿名送金サービス「TumbleBit(タンブルビット)」もそのまま利用できます。これは仮想通貨の送金先、受取先がどこなのかわからなくするもので、ビットコイン自体の欠点「匿名性がない」を補っていますが、ストラティス(Stratis)でもそれを利用して匿名性を持たせ、プライバシーを保護することができます。なお、イーサリアム(ETH)の特徴である、取引や契約の内容のデータを記録してそれを自動的に実行する「スマートコントラクト」も近々導入される予定です。これは不正の防止や決済期間の短縮、コストの削減につながります。

Stratisのマイクロソフトとの提携はリスクでもある

ストラティス(Stratis)は現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていないので、円から直接交換することはできません。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所に持ち込んで改めてストラティス(Stratis)に交換することになります。ストラティス(Stratis)の円との交換レートは、2016年は1STRAT=10円前後でずっと推移していましたが、2017年に入ってから徐々に切り上がり、6月に1,000円を超え、12月には2,000円前後まで上昇しました。ほぼ1年で約200倍です。2018年に入ると下がりましたが、それでも2~3月は1STRAT=600円を超える水準です。

一般企業でもブロックチェーンを容易に利用できるようにするのがストラティス(Stratis)の使命ですが、すでに多くの企業で導入されています。提携してパートナーになっているのがご存知のマイクロソフトで、ストラティス(Stratis)と共同で開発したブロックチェーン開発プラットフォーム「Stratis Development Platform」をクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure(マイクロソフト・アジュール)」の開発環境「Microsoft .NET framework(マイクロソフト・ドットネット・フレームワーク)」と組み合わせて、主に大企業向けに売り込んでいます。

ストラティス(Stratis)のブロックチェーン開発言語のC#はマイクロソフトが誕生させましたが、専門の開発技術者がいなくても、マイクロソフトに任せればブロックチェーンを簡単に導入できます、というのが売り文句です。金融関係ではない一般企業の間でのブロックチェーン利用はまだこれからで、世界のさまざまな業界で拡大の余地があります。

それに備え、ストラティス(Stratis)はロンドンにコンサルタントサービスのセンターを設置しました。しかしながら、営業面でマイクロソフトと提携・協力していることは、大きな強みである半面大きなリスクでもあります。というのは、もしマイクロソフトが技術的な理由で他のどこかに乗り換えてストラティス(Stratis)との提携を解消したら、別の大手ITベンダーと提携できない限り、ストラティス(Stratis)はたちまち窮地に追い込まれてしまうからです。単純に「ストラティス(Stratis)はあのマイクロソフトがバックについているから大丈夫だ」と思わないようにしてください。あまり良い例えではありませんが、トラの威を借るキツネは、トラに見放されたら、ただの弱いキツネになってしまいます。