アルトコインの「バイナンスコイン(Binance Coin)」は現在、日本のコインチェックやビットフライヤー、ザイフなどの仮想通貨取引所では取り扱っていません。海外の取引所では香港のバイナンスだけで取り扱っていますが、ここは今は日本語対応でなく、日本円から直接交換することはできません
バイナンスコイン(Binance Coin)は仮想通貨取引所が自ら発行した仮想通貨
バイナンスコイン(Binance Coin)(単位:BNB)は2017年7月に一般に公開された仮想通貨です。イーサリアム(ETH)で使われる「ERC」の規格で発行され、契約内容をデータとして記録・実行できる「スマートコントラクト」に対応しています。バイナンスコイン(Binance Coin)発行量の上限は2億BNBですが、すでに発行されたのは約半分の約1億BNBです。
Binanceという名前でわかるように、香港の大手仮想通貨取引所「Binance(バイナンス)」が自ら発行してBinanceに上場させました。バイナンスコイン(Binance Coin)はBinance以外では全く上場していません。Binanceにはかつて日本語版があり、取り扱うアルトコインの種類が豊富なので日本の仮想通貨投資家の間でも人気がある取引所でしたが、最近になって日本語対応をやめてしまいました。
仮想通貨取引所がコインを独自通貨を発行するメリット
バイナンスコイン(Binance Coin)のように仮想通貨取引所自らが独自発行し、その取引所だけで売買ができるという事には、どんなメリットがあるのでしょうか?それは仮想通貨の投資家にとってのメリットと、取引所にとってのメリットの両方があります。
投資家にとって最大のメリットは手数料の割引が受けられることです。たとえばある投資家がイーサリアム(ETH)をA取引所でまずビットコイン(BTC)に交換して、自分のウォレット(システム上の「サイフ」)にしまっておき、そのビットコインを後でB取引所でリップル(XRP)に交換したとします。
その場合、ビットコインは仲をとりもつ「ブリッジ通貨」として使われています。仮想通貨の元祖にして王者のビットコインはどの取引所でも上場されているので、「次にどの通貨に換えるかまだわからないが、とりあえずビットコインに換えておこう」という使い方をされることがあります。ビットコインで持っておけば、どこの取引所でも上場されているので、不自由しないからです。
バイナンスコイン(Binance Coin)は、その「ブリッジ通貨」として使ってほしいという目的で、取引所自ら誕生させた仮想通貨です。投資家に使ってもらえるよう、Binanceはバイナンスコイン(Binance Coin)だけは特別に手数料を安くし、他の仮想通貨が0.1%なのに対し、現在はその半額の0.05%にしています。たとえば交換の「イーサリアム-ビットコイン-リップル」というパターンを「イーサリアム-Binance Coin-リップル」というパターンに変えたら、Binance Coinはビットコインに比べて手数料が半額になるので、投資家にとってはお得になり、メリットが受けられるわけです。
そうしてもらえば、仮想通貨取引所のほうにもメリットが出ます。バイナンスコイン(Binance Coin)はBinance専用なので、パターンがたとえば「イーサリアム-バイナンスコイン(Binance Coin)-リップル」だったら、イーサリアムとバイナンスコイン(Binance Coin)の交換も、バイナンスコイン(Binance Coin)とリップルの交換も、両方ともBinanceで行われます。
ある投資家がA取引所、B取引所、C取引所と、いくつかの取引所を使い分けていたところ、「バイナンスコイン(Binance Coin)をブリッジ通貨に使えば手数料が半額だから、これから仮想通貨の取引をBinanceに集中させよう」と思ったら、Binanceにとっては他の取引所のシェアを奪うことができるわけで、仮想通貨の取引量の増加、手数料収入の増加につながります。
取引所専用の仮想通貨をつくって、その手数料を割引すれば、取引所の手数料収入全体が増えてビジネスは成功、というわけです。
似た例に、20世紀初めにアメリカで行われた「ジレット・モデル」があります。カミソリメーカーのジレットは、カミソリの本体(持ち手)を街頭でタダで配るキャンペーンを行いました。ジレット製の本体はジレット製の専用替え刃しか取り付けられないようにできているため、本体をもらった人はみんなジレットの専用替え刃を買って試し、どんどん売れてジレットは儲かりました。日本にかつてあった、携帯電話本体を「0円」で売って通信料で儲けて元を取る商法も、それに近いでしょう。
Binanceにとって、仮想通貨バイナンスコイン(Binance Coin)の発行はジレット・モデルのカミソリ本体の無料配布にあたります。ジレットの専用替え刃だけが使われるように、投資家に仮想通貨取引所としてBinanceを優先的に利用してもらおうという、いわゆる「お客さんの囲い込み」のための武器なのです。
バイナンスコインを保有すると「人気投票」の投票権も得られる
バイナンスコイン(Binance Coin)を利用する投資家側のメリットは手数料の割引だけではありません。Binance Coinを保有すると、今や「Binance名物」になったと言ってもいい、未上場アルトコインの人気投票「Community Coin per Month」の投票権が得られる特典があります。
まるでCDを買ったら投票権がついてくる日本のアイドルグループの「総選挙」のようですが、Binanceに上場させたい「推しコイン人気投票」に参加したいためにバイナンスコイン(Binance Coin)を保有していると言う投資家までいるくらい、仮想通貨の世界では注目度の高いイベントなのです。人気投票1位の未上場アルトコインは自動的に次のセンターならぬBinance上場最有力候補になり、そのほとんどが上場を果たし、それを機に交換レートが上がっています。
この人気投票は毎月行われていて、最終結果は仮想通貨関連の注目ニュースとして世界で報じられます。投票するには1票につき0.1BNBの支払いが必要で、どこかの「総選挙」と違って同じ人が同じ通貨に2票以上投票することはできませんが、投票することでBinanceの運営に参加している意識や、仮想通貨の世界の〃新人〃の発掘に参加している意識が持てる、と話す投資家もいます。
買い取りは保有する投資家にメリットがある
バイナンスコイン(Binance Coin)の投資家側のメリットとして、それのBinanceでの取引手数料は半額になるというのがあります。しかしそれは2018年6月30日までの予定です。Binanceは「バイナンスコイン(Binance Coin)の手数料割引率は毎年下げていく」と正式に発表しています。
新規発行から1年が経過する2018年7月から現在の「50%OFF」が「25%OFF」に変わり、割引率が悪くなります。2019年7月からは「12.5%OFF」、2020年7月からは「6.75%OFF」になり、2021年6月30日をもって手数料の割引は終了します。
それはバッドニュースですが、代わりにBinanceは4半期(3ヵ月)ごとに取引所の利益の20%分を使ってバイナンスコイン(Binance Coin)を買い取るとアナウンスしています。これはバイナンスコイン(Binance Coin)が出回っている量(発行量ではありません)を徐々に減らしていくことを意味し、最終的に発行量上限2億BNBの半分の1億BNBまで買い取られます。
出回っている量を減らすとどうなるかというと価格、つまり交換レートが上がります。経済の基本的な法則では、「需要と供給」のバランスのうち供給のほうが減れば、需要がまさって価格が上がります。そうなれば、バイナンスコイン(Binance Coin)を保有している人は、交換レートの上昇、価値の上昇といううま味が味わえるわけです。
Binanceの「仲間内」では使える仮想通貨バイナンスコイン
バイナンスコイン(Binance Coin)は現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていないので、円からの直接の交換はできません。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所(Binanceのみ)に持ち込んで、あらためてバイナンスコイン(Binance Coin)に交換することになります。おそらく日本でも海外でも今後、Binance以外の取引所で上場されることはないでしょう。
交換レートは一般公開された2017年7月から10月頃までは1BNB=200円前後でしたが、11月後半から値を上げ、2018年1月になるとさらに急ピッチで上昇して一時1BNB=2,500円を超えました。2月に入ると1,300円前後まで落ち着きましたが、それでも2017年10月頃と比べれば6.5倍ぐらいになっています。
Binanceが4半期(3ヵ月)ごとにバイナンスコイン(Binance Coin)を買い取るので、それが交換レートをしっかり下支えする役割を果たし、底が抜けるような暴落は起こりにくくなっています。
Binanceのモットーは「Exchange The World」で、世界のあらゆる通貨を取引できる取引所になることを目指しています。全世界の投資家に対しオープンに募集をかけているので新規の口座開設数が多く、1日に20万件以上あるといわれます。
バイナンスコイン(Binance Coin)は、Binanceで取引口座を開いた人の大部分が保有しているアルトコインです。手数料の割引や人気投票の投票権のような一種の「ファン特典」は、Binanceを一時的にですが取引高世界第1位の仮想通貨取引所に押し上げた功労者と言えました。バイナンスコイン(Binance Coin)Binanceから一歩外に出ればほとんど使われていないコインですが、Binance内部のコミュニティ(仲間内)では〃使える〃仮想通貨です。