G20終幕仮想通貨はしばし監視の方向に3月20日にG20がアルゼンチンブエノスアイレスで開催されました。焦点となったのは、アメリカなど大国の保護主義と現在急速にその市場規模を拡大し、影響力を強めている仮想通貨に関してです。この記事ではG20でどのような採択がなされたのかをまとめてご紹介するとともに、今後の見通しに関してもご説明していきます。

G20が閉幕仮想通貨はしばし監視の方向に

3月21日にG20は閉幕しました。先ほどもご説明したように本会合で扱われた主な議題の一つが仮想通貨です。現時点でのマネーロンダリングに使われる場合が多いという特徴や、また今年初めに起こったコインチェックやイタリアの大手仮想通貨取引所bitgrailで起こったハッキング攻撃による、顧客資産流出事件などを受けて仮想通貨を今後どのように規制していくかという方向性で各国の金融政策担当者が話し合いを行いました。

現在、仮想通貨市場の規模は70兆円ほど、一般市場の約1%程度の規模です。市場規模は小さく、一部専門家からは規制を行う段階ではないという声も上がっていました。ですが、実際のところ、1年間に6億円規模で窃盗や資産の流出が行われています。投資家や国民の資産を守るには規制を掛けなくてはならないのも事実です。

また、仮想通貨の仕組み上、通貨の動きを追うことができるため、実際のところマネーロンダリングなど不正に使用することは不向きです。しかしながら現時点で世界的な規制枠組みがなく、抜け道が存在してしまうために簡単にマネーロンダリングやテロ資金として悪用できてしまうのが実情です。

そうした観点からも規制枠組みを求める声が相次いでいました。その一方で仮想通貨の基幹技術であるブロックチェーンの影響力は日夜高まっており、それに対する評価も好意的なものが多いです。

ドイツやフランスのようにはやくから全面的な規制をするように求めるような国がある一方で、ブラジルのように規制には寛容な態度を示す国、アメリカや日本のように規制は行いつつも、その
技術は見守っていくような立場をとるような国が集まっているため、現時点での合意は困難を極めました。

またそもそも仮想通貨が持っている非中央集権的であるという部分も合意形成を妨げています。つまり、仮想通貨の取引や運用のどの部分に規制を掛ければいいかという部分の判定をすればいいかが困難であるからです。

ただ、依然EUが全面的な規制に向けて声明を出していたこと、そして2018年は世界各国で規制が進む年だと言われていたことから投資家たちは全面的に規制に動くのではないかという、不安感を持っており、市場自体はこのG20開催期間中、下げる傾向にありました。結果として、仮想通貨を暗号資産として定義づけ、仮想通貨の取引に税を掛けるといった方向性、またテロ資金やマネーロンダリングに使われる可能性があるということで、規制に向けて動き出すという取り組みが発表されました。

ここには現時点で多くの国が仮想通貨を資産として認めておらず、仮想通貨取引自体には税金を掛けることができないこと、また、現時点でユーザーの保護や仮想通貨の有用性のためにも一刻も早くマネーロンダリングやテロ資金など不正な利用を妨げる方針を打ち出す必要性があったからだと考えられています。その一方で今後どのように規制を行っていくのかは具体的に決められることはありませんでした。あくまで仮想通貨市場が既存市場の1%ほどの割合しか持っていないということで、具体的な指針を決めてすぐさま規制に動き出すというよりは監視を強めていくという方針で一致しました。

7月21までに規制案提出の見通し

仮想通貨はしばし監視の方向で一致今後の流れとしては7月21日22日に行われるG20の会合にて、本格的にどのように規制を行っていくのか、その国際的な共通枠組みを定めることが決められています。ただ、やはり仮想通貨の影響力や役割は参加各国、あるいはG20に参加が決まっていない国の間では異なっており、決定は難航することが予想されます。今回参加した国でも、ドイツやフランスのように以前から強固な姿勢をとっていた国もありますが、ブラジルのように、採択後も国内では仮想通貨に規制を掛けないことを表明している国もあるなどすでに立ち位置の違いが明白になっています。

7月21日22日の会合では各国から持ち寄った規制案を共同採択することが決まっていますが、これも問題を難しくしている理由の一つです。採択国の一つでもきせいが緩い国があれば結局のところそこが抜け道になってしまい、採択の意味は全くなくなってしまう可能性があります。さきほどご説明したようにすでにブラジルは自国では規制を行わないことを明言しています。また、そもそも採択を行うG20以外の国では自国の金融市場や経済基盤が整っていないことも多く、そもそも規制を行うことが難しい場合も存在しています。

また、ジンバブエのDASHのようにすでに現実世界での実現に向けて動き出している仮想通貨があるなど、発展途上国の経済問題には仮想通貨が多いなる貢献を果たす可能性も十二分にあります。
現時点ではマネーロンダリングなど不正利用について規制を行うことが発表されアメリカ金融作業部会の指針を採用することを正式に発表しています。ただ、その一方でどこまでの規制を行い、また有用な仮想通貨に関してどのような規制を行っていくのかあるいは行わないのかといった部分の見通しは全く立っていない状況です。

2018年は規制の年になる見通し

先ほどご説明したように世界的な規制枠組みの行く末は依然として不透明です。その一方で日本では2018年1月のコインチェック騒動を受け、みなし業者の営業が期限付きになる、また海外の未登録取引所の利用に制限が入るという憶測もたつなど、全体的に規制が強まる見通しです。またアメリカでも各州によって異なっていた仮想通貨に対する規制枠組みを統一するなど、規制に向けた動きが活発になっています。

2018年は仮想通貨に対する規制が本格的に始まる年になると言えるでしょう。しかしこれは不安材料だけではありません。2018年以降は大手金融機関やIT企業が続々と仮想通貨事業に参入することを表明しています。そのための土台作りとも考えられます。ただ、やはり現時点では仮想通貨市場は規制の動きに対して敏感です。7月21,22日本格的な規制案が採択、あるいは方向性が決まるまでは価格の変動が起こる可能性が十分にあります。

世界は規制枠組みの設立に向けて動き出した

今回はG20の仮想通貨規制に関する採択についてご説明してきました。結果として、本格的な規制案が採択されることはなく、世界的な仮想通貨に対する認識の違いや世界規模での規制を作ることの難しさが浮き彫りになったと言えます。実際のところ、仮想通貨の技術が持つ先進性は今後世界の発展のためには有用でしょう。その一方で昨今の仮想通貨関連のハッキング攻撃や盗難、あるいは犯罪への悪用は防ぐ必要があります。現時点では各国で対応にばらつきがあるため、どこかに抜け道ができてしまうことが現実です。ハッキング攻撃に関しては規制だけでなく、取引所のセキュリティ体制や通貨そのものの仕組みの改善も必要です。

ですが、マネーロンダリングや犯罪への悪用は本来的な仮想通貨のすべてがオープンでたどることが可能であるという利点を生かせば大幅に減らすことも可能でしょう。いち早く規制枠組みを作ることが必要であると言えます。

まだ現時点で世界は規制枠組みの設立に向けて動き出したばかりです。今後も注意して動向を追っていく必要があるでしょう。