今年に入って仮想通貨関連のニュースには、コインチェックによる仮想通貨NEMの流出など、マイナスイメージのニュースが多く見られました。しかし最近になってヤフーが仮想通貨に新規参入するなど、仮想通貨の今後に期待できそうなニュースも散見されるようになりました。ヤフーだけでなく、LINEやサイバーエージェントといった国内のIT系の大手企業も、仮想通貨に参入する方針を明らかにしており、仮想通貨がより身近なものに感じられそうになってきました。今回はヤフーの仮想通貨参入から見る仮想通貨の今後の展望を説明していきます。

ヤフー、LINE、サイバーエージェントが仮想通貨に新規参入

ヤフーが仮想通貨に新規参入するというニュースが報道されました。このニュースを見て、「ヤフーが仮想通貨を作るの?」と思った方もいるかもしれません。しかし、そうではなくて、ヤフーは仮想通貨取引所に対して出資をするという形で新規参入するとなっています。

さらに、出資という形で新規参入するだけではなく、来春以降も追加で出資をしていくということも発表しています。これに対して、LINEやサイバーエージェントは、仮想通貨取引所を子会社として新規に創設し、仮想通貨取引事業所として業務を行う形での参入を発表しています。

ヤフーは取引所への出資という形での参入で、LINEとサイバーエージェントは仮想通貨取引所を開設するという形での参入だと説明しました。実際に、LINEは「LINE finance」という子会社を設立し、仮想通貨取引を含め幅広く金融に関わる事業展開をしていくようです。また、サイバーエージェントは「サイバーエージェントビットコイン」という仮想通貨取引の子会社を設立し、仮想通貨交換事業への登録を今春にも完了させ事業を開始すると発表しています。LINEもサイバーエージェントもインターネット事業者として名前は知られていますが、仮想通貨の急激な普及やインターネット事業者としてのノウハウを活かせるという背景からの参入であると言えます。ヤフーの新規参入の背景もLINEとサイバーエージェントと代わりはありませんが、直接の運営をするかどうかで参入の形態が違っています。

なぜ続々と仮想通貨市場に新規参入するのか

それでは、なぜこのように新規参入が相次いで発表されるのでしょうか。しかもその企業はインターネット関連の企業ばかりです。これは、仮想通貨というものがインターネット上での取引であるということと、仮想通貨そのものが非常に高度なITの技術によって形成されているということが挙げられます。そういった背景もあり、インターネット関連事業者によって新規の参入が相次いで発表されているのです。

それではなぜヤフーは直接取引所を開設するのではなく、出資という形で新規参入するのでしょうか。それは、今年のコインチェックによる流出事件を受けて、金融庁の審査が非常に厳しくなったということが挙げられます。この事件によって、ヤフーが仮に新規取引所を開設し登録申請をしたとしても、年単位で時間がかかると言われています。しかし、仮想通貨はいまが旬であるとも言えます。新規に参入するのであれば、このタイミングがベストであり、ヤフーとしては早く参入しておきたいが新規開設では時間がかかりすぎる、それならすでに登録をしている取引所に出資をするという形で参入しようという戦略をとったのです。

インターネット事業者による参入でどう変わる?

Yahoo・LINE・サイバーエージェントの仮想通貨参入ヤフーにしろ、LINEやサイバーエージェントにしろその事業者が提供している既存のサービスは今では知らない人はごく少数だと思います。知っているどころか、多くの人はそのサービスを日常的に使っているのではないでしょうか。そういった企業が仮想通貨事業に新規参入することで何が変わるのでしょうか。それはズバリ仮想通貨がより身近なものになるということです。例えば、LINEであればLINEのアプリ内で仮想通貨に関する情報が大きく取り上げられるかもしれません。それだけではなく、みなさんが使っているLINEのアプリ内で仮想通貨の取引が可能になるのかもしれません。

さらに言えば、LINEに関連するゲームやスタンプの販売によって得られたLINEコインなどが、仮想通貨に交換できる、また、タイムラインにつけられた「いいね」の数に応じてそれ自体が仮想通貨に交換可能なものになるかもしれません。ここまでLINEを例に説明しましたが、サイバーエージェントにしても同じようなことが考えられます。多くの人が日常的に使用しているものが仮想通貨と結びつくことで、仮想通貨が現在よりももっと、大幅に身近なものになることは容易に想像できます。

仮想通貨取引がより身近に

LINEやサイバーエージェントは子会社設立によって仮想通貨事業に新規参入するので、現在すでに提供している自社サービス上で直接仮想通貨に関してのサービスを提供することができそうです。しかし、他社への出資という形をとっているヤフーはどうでしょうか。ヤフーとしての仮想通貨関連サービスの提供は難しいかもしれませんが、出資先のサービスとリンクさせたものをヤフーのトップページから提供することは可能です。ヤフーに関しても、その新規参入によって仮想通貨がより身近になるということは考えられそうですね。

仮想通貨取引が、LINEなどの参入によって身近なものになるというのは非常にいいことであると言えます。これまで取引をためらっていた人でも、「LINEだったらいつも使っているから」と、取引を始めることがあるかもしれません。しかし、そうなることで仮想通貨が危険なものであるという意識が薄れ、仮想通貨取引によって大きく損をしてしまう人が続出する可能性もあるのです。つまり、LINEのように日常的に使用しているサービスが提供しているものだからと取引を始めるというように、仮想通貨取引へのハードルがかなり低いものになってしまうという可能性があるということです。いつも使っているサービスだからといって安易に取引を開始してもいいというような性質のものではないことは、しっかりと認識しておく必要は絶対にあります。

相次ぐ新規参入から見る仮想通貨の今後

今回のヤフーの新規参入、LINEやサイバーエージェントの子会社設立など、身近で多くの人が使っているサービスを提供している業者による仮想通貨取引への参入ですが、それによって仮想通貨そのものが非常に身近なものになるということはわかっていただけたと思います。しかし、前述のように仮想通貨取引への意識のハードルが下がるという可能性が十分に考えられます。仮想通貨が身近になるというだけであって、それは単に取引がしやすくなるというだけであり、仮想通貨が安全に取引できるようになる訳ではないということは意識しておかねばなりません。おそらくこの流れに乗って既存のSNS等の運営会社によって仮想通貨取引への新規参入がさらに拡大していくことも考えられるでしょう。

そうなった時に、例えば未成年者に対する規制、アカウント乗っ取りなど不正アクセスへの対策とその被害に対しての補償など、講ずるべき対策はまだまだ多いと思います。仮想通貨がここまで注目されるようになった以上、国も規制や対策を講ずるべきですし、参入する企業もそうした対策などは万全にした上で新規参入するべきです。そういったことも考えながら、今後さらに身近になっていく仮想通貨と上手に付き合う必要がありそうです。そのためには、まずは仮想通貨に対しての正しい知識を身につけ、正しい認識を持っておくことが個人としてできる最大限有効な対策であると思います。