仮想通貨交換業者16社が新団体を設立2018年3月2日に、仮想通貨取引所「マネーパートナーズ」の代表である奥山泰全代表取締役が中心となり、金融庁の仮想通貨交換業者として登録されている16社が共同で、新たな団体を設立しました。名称は未定、本格的な始動は1か月をめどにして行われるとのこと。

現在ある「日本仮想通貨事業者協会」(JCBA)、「日本ブロックチェーン協会」(JBA)とは全く異なる協会で、この両者が設定していたものとは異なる独自の自主規制を今後打ち出すようです。

コインチェックの「NEM」流失騒動による影響もありますが、騒動の以前から計画は練られていました。

今回は新団体設立の報道を受けて、実際この団体がどのようなものなのか、またこの設立と今後行われる自主規制によって、仮想通貨業界がどのように変わっていくのか、現時点での情報を参考にご紹介していきます。

新団体設立に関して

まずは、新団体の概略を見ていきましょう。まだ細かな部分はわかっていませんが、現時点で明らかになっている情報からご説明していきます。

<新団体の概要>
繰り返しになりますが、仮想通貨取引所を運営するマネーパートナーズの奥山代表取締役が中心となり、現会長は奥山氏になります。

金融庁が定める事業者登録を受けた16社が加盟。「NEM」騒動渦中のコインチェックなど、みなし業者はここには含まれていません。

今回の会見から、1か月をめどに本格的に始動。自主規制ガイドラインの制定から、実際の施行までは、数か月以内と考えているようです。

<細かな内容>
この新団体の加盟全16社は以下のようになります。

マネーパートナーズ、QUOINE、bitFlyer、ビットバンク、SBI バーチャル・カレンシーズ、GMOコイン、ビットトレード、BTCボックス、ビットポイントジャパン、DMM Bitcoin、ビットアルゴ取引所、エフ・ティ・ティ、BITOCEAN、フィスコ仮想通貨取引所、テックビューロ、Xtheta

全て冒頭で説明した通り、金融庁が定めた100以上の基準を満たし、登録された仮想通貨交換事業者です。これ以外の、金融庁の仕組みが作られる以前から業務を行っており、登録申請を行っている段階のコインチェックなど、いわゆる「みなし業者」はここには含まれていません。

現時点では内部管理、取り扱う仮想通貨の種類などのガイドライン策定を急いでいるとのこと。また、コインチェックの騒動でも問題になった、詐欺や盗難など、過失によって失われた、資産をどのように扱うかといった課題についても取り組んでいく見通しのようです。

自主規制で何が変わるのか

この自主規制団体はこれまでとは全く異なる新たな団体です。この団体が登場、そして実際にガイドラインが策定、実行されることによって何が変わってくるのでしょうか。

<セキュリティなど内部管理の一律化>
報道のもととなった奥野マネーパートナーズ代表の会見でも冒頭に説明されていたように、速やかに行われるべき案件であり、最も変化をもたらすものといえます。

現時点で、仮想通貨取引所の入出金方法や、資産管理方法など内部セキュリティ、そしてそれらを含んだシステムに関する規制はありません。完全に自社努力によるものになっています。

みなし業者や、海外の取引所の中には基本的な安全対策が取られていないような詐欺まがいの取引所が存在しているのも事実。その一方で、信頼度の高い事業者でも、管理体制の不備から、仮想通貨取引所では一般的だった、「コールドウォレット」を採用していなかったため、NEMを流出させてしまうという事態を招いたコインチェックのように、資産を週出させてしまうという問題も発生しています。

こうした問題がありながらも、現時点で法的な拘束、規制はなくまた、コインチェック騒動のように不備によって顧客に損失を与えたとしても、法的に罰則することはできませんでした。

また、これに加えて、過失あるいは犯罪によって喪失した資産である仮想通貨をどのように補填するかという仕組みも整っておらず、早急な仕組みの策定が求められていました。

今回の新規団体設立はこうした現状を変える一つのきっかけになりうる可能性があります。
16社が共同で設立したこの団体は、こうした問題を解決するために、「認定自主規制団体」を目指しています。何が利点かというと、団体に所属した団体に強制力を持った自主規制を行うことができるようになるのです。

これによって拘束力を持った、内部システムの構築方法などのガイドライン策定が容易になります。安全性が競争材料となっているような現在の状態からは一歩ステップアップするわけです。

<信頼のおける仮想通貨取引所が増えるかも?>
またもう一つ今後変わってくるかもしれない点としては、取引所の増加が挙げられます。相次ぐ、仮想通貨取引所の乱立、また紛失、盗難などの問題を受けて、2017年4月1日に金融庁は仮想通貨に関する内容を盛り込んだ新たな改正資金法を施行しました。

そのうちの一つが、仮想通貨交換事業者、つまり仮想通貨取引所の登録制度の開始でした。これにより、2017年4月1日以降は基本的には金融庁に登録された最低限度の信頼度を持った事業者しか、仮想通貨の交換業務を行えなくなったのです。

ただ、その一方で、審査項目は非常に厳しいといわれ、信頼度の高い業者でも資金力が足りないために、断念する事例も。

こうした中で、今回設立された新団体の自主規制内容が正式に評価されれば、より審査を突破する登録事業者が増え、業界がにぎわいを見せることが予想されます。

まず一つの理由としては、登録団体が全て金融庁に登録済みだということです。そのことを生かし、団体への新規加入業者への金融庁登録へ向けた補助が期待されます。

またもう一つの理由としては、この団体の取り組みが認められれば、この団体に加入すること自体が一つのお墨付きになり、そのことによって、金融庁の監査を受けなくとも自主的に事業を行うに足る事業者を輩出することができるようになる可能性があるのです。

これらのことがうまくいけば、より多くの、そしてより信頼度の高い仮想通貨交換事業者が誕生。仮想通貨業界も明るい方向に向けて動き出していくでしょう。

今回の報道はこうした明るい面をもたらす可能性がある一方で、仮想通貨業界にある越えがたい問題を浮き彫りにさせる結果となりました。

新規団体設立が抱える問題点

新団体設立による自主規制でいったい何が変わるのか問題点を見ていきましょう。

<ブロックチェーン関連企業は参入していない>
まず一つ目は、今回の新規団体にはブロックチェーン関連企業など、技術にかかわる企業が参入していません。会見を参考にすると、技術革新に重きを置き、ブロックチェーン関連企業側と仕組みの策定を早く進めていきたいとのこと。今回は、団体側での交渉が難航したようです。

ただ、ここには、今回の事例にみられる単純な対立構造以上に、仮想通貨業界がはらんでいる大きな問題を映し出しているといえます。

ビットコインを発案した、謎の人物「サトシナカムラ」氏の革命的なブロックチェーン技術を記した論文を背景に、その画期的な技術が作り出す新たな世界に夢をはせた技術者、研究者たちを中心として作られてきたビットコインを含む仮想通貨。

しかしながら、昨今の資産としての価値の高まりにより、そういった本質的な意味、目的とは遠ざかってきているのも現実です。

その対立が最たるものとなったのが、以前のビットコイン分裂騒動でしょう。こちらも技術者側と、資本家側の対立でした。

今回の新規団体設立に関しても、依然としてこうした対立構造による、崩壊の危険性は残っているといえます。

ユーザーに有益な流れ

今回の業界の刷新を求めて行われた、マネーパートナーズを中心とした16社の新規仮想通貨規制団体設立の動きは利用者のためには非常に有益です。

今まで、実際のところ、どういった事業者が安全で信頼がおけるかは、ほとんどユーザーの判断に任されていました。一律の基準によって事前にわかることは大きな利点です。

今後の動向に注目していく必要があるでしょう。