日本はビットコインの認知度は非常に高く、保有量は世界の中でもトップクラスです。価格高騰に関してもテレビ、ラジオ、雑誌等の各種メディアに取り上げられ、金融庁により日本の仮想通貨大手取引所、bitFlyer、Coincheck等のCMが放映されるなど、仮想通貨の認知は時と共に確実に広がりを見せています。
海外でも同様に仮想通貨に関しての認知度が高まっており、仮想通貨に投資をする人の増加、仮想通貨取引所の開設が更に拡大しつつあります。
過熱傾向にある仮想通貨市場ですが、2017年中国には大規模な規制を行い仮想通貨取引所が業務停止になったことに加え、世界中で規制に向けた動向も活発化するなど仮想通貨の価値に影響するような動きが起こりつつあります。
そして、世界各国の仮想通貨に関する動向は投資家のみならず、政府や金融機関も注目している為、今後の取引は更に情報収集が必要となっていくでしょう。
スイス銀行、ビットコイン運用開始
富裕層の資産運用管理を行っているスイス・プライベートバンク大手のファルコン・グループは2017年7月、ビットコインの口座サービスを追加しました。この口座サービスは、顧客は同行の預金を元手としてビットコインの売買を指示し、購入後は同行が顧客の他の資産とともに一元管理するものです。
今までのシステムとして、銀行のネットバンキングに仮想通貨企業の取引所APIを統合することで、同システム内で仮想通貨取引ができるものが存在しています。しかし、口座管理は顧客主体かつ外部に委託されている為、銀行自ら管理するシステムを持つ事例はありました。
プライベートバンクは今までのシステムに対して、ビットコインを顧客に代わって直接管理した上で、安全性はオフライン・ウォレットや多重認証によって厳重に担保するシステムを開発しています。
現在では、金融庁にあたるスイス連邦金融市場監督機構の承認を得て、スイス初のビットコイン取扱金融機関となりました。仮想通貨の取り扱いは、今の所はビットコインのみですが、他の仮想通貨も順次取り扱う予定となっています。
また。通常は約2億円以上の資産を持つ顧客をサービスの対象としていましたが、条件を緩和し数十万円程度から検討するという内容にまとまりました。
広まるハッキング被害
2017年7月に韓国最大の仮想通貨取引所Bithumbがハッキングされました。被害の全貌は明かされていないものの、顧客の3%にあたる口座から数億円が盗み出されたとされています。盗難の原因は、従業員のパソコンから顧客の電話番号やメールアドレスが流出したことにあります。
そして、ハッカー側は取得した個人情報を使ってBithumbの顧客に対して個別に連絡を行い、取引所の運営者になりすましたうえで、パスワードを入手し、口座にアクセスしています。
その他にも2017年12月19日に韓国の仮想通貨取引所ユービットの運営会社ヤピアンは、ハッキング被害に遭い破産手続きに入ると顧客に通知を行いました。同社によると同日午前4時35分ごろ、ネットワークに常時接続された「ホットウォレット」が何者かにハッキングされ、全資産の約17%を失っています。
同日午後2時には取引と入出金を停止し、破産手続きに入りました。入顧客資産は、ハッキングされた時点の残高の約75%を支払い、未払い分は破綻手続き完了後に支給する予定とされています。
この事件に関しては韓国警察が捜査に着手した他、韓国インターネット振興院も調査に乗り出しており、現時点で北朝鮮との関わりは確認されていないとしていますが、北朝鮮の関与説が根強く残っています。
これに関連して言えば、韓国では今春に仮想取引所へのハッキングが相次ぎ、ユービットもその被害に遭っていました。韓国の情報機関、国家情報院は一連のハッキングを北朝鮮の犯行と結論づけています。
ユービットの破綻を受け、韓国政府は20日、10カ所ある仮想通貨取引所のうち4カ所を名指して情報管理の強化を義務づけました。10~11月にすべての仮想通貨取引所を調査した政府関係者は、程度の差はあるものの、大部分の取引所でセキュリティーに脆弱性があった事を明かしている為、今後は脆弱性のないセキリティを国と民間で作り上げる必要があると言えるでしょう。
インド中央銀行のビットコイン取引に関する警告
インドの中央銀行であるインド準備銀行2017年12月5日、仮想通貨に関して今年2回目となる警告を発表しました。これは、仮想通貨の利用者及び所有者、投資家に注意喚起を促すものであり、この警告においてはインドの企業に対して、ビットコインをはじめとする仮想通貨を扱う許可は出していない旨を述べています。
警告として2017年12月に出されたものは2月の発表の内容に加えて、ICOやトークンの販売に関するものも含まれており、また、仮想通貨市場全体の価値の急騰についても強調しています。同中央銀行によると、多くのベンチャーキャピタルの評価による急騰や、ICOの急激な成長をふまえて再度仮想通貨の動向を注視している事が予想されます。
また、インドでは今年11月、最高裁判所が政府に対してビットコインの規制に対応するよう要求するという動きも見られています。ビットコインは実体のないデジタル通貨であり、匿名性が高いため、その匿名性が悪用されることを防ぐ目的もあります。ちなみに、日本では2017年より仮想通貨取引所は金融庁の監督下となり、仮想通貨の法的な立ち位置も定義されています。
ロシアが独自の仮想通貨発行
ロシアの通信情報大臣ニコライ・ニキフォロフが、ロシア独自の仮想通貨を発行すると発表したと地元の仮想通貨情報サイトCointelefraghが報じています。しかし、その仮想通貨はブロックチェーンによる分散管理の仕組みを取り入れているものの、政府機関が管理・追跡するためビットコインなどのように誰でもマイナーとして採掘することは不可能です。
ロシアが発行する仮想通貨は、資産の流出や犯罪で得た資金のマネーロンダリングなどに利用されることなく、ロシア国内で使われる通貨として他国の影響を受けないように作られます。運用面では、市民は実体のある通貨ルーブルとこの仮想通貨を簡単に交換することが可能であり、もし明確な持ち主であると証明ができない場合は、13%を税として差し引くことを決定しています。
また、ロシアとしては、アジアや欧州の仮想通貨の浸透具合から発行に対する時間的余裕はないとの認識を示しています。中国における個人資産のビットコインへの流出、流出した後の仮想通貨取引所の閉鎖という動きをみて警戒している状況にあると言えるでしょう。
しかし、仮想通貨の規制そのものも国によって対応が異なる為、ロシア内部ですら統制は取れているとは言えない状況にあります。現在のロシアでは、国内での仮想通貨取引を差し止めつつ、ロシアは独自の仮想通貨に対する政府内部での方針が固まっていない事を示しており、今後の動向に注意が必要な状況です。
各国の仮想通貨規制の今後
仮想通貨に対する国の姿勢は各国で異なります。仮想通貨を推進し、仮想通貨市場を盛り上げようとする国もあれば、逆に規制を行う事で、資産の流出や資金のマネーロンダリングを防ごうとする国もあります。しかし、期間は不明ですが、これからも仮想通貨市場は拡大を継続していく事は間違いありません。
それにともない世界各国の仮想通貨への対応は、仮想通貨の価値に反映されることになるでしょう。これから仮想通貨への投資を検討する場合には、自国の仮想通貨規制を理解しておくことに加え、世界各国がどのように仮想通貨を捉えているのか知る必要があると言えるでしょう。