仮想通貨活用の動向について

仮想通貨・仮想通貨取引所は、日本国内でも有名人を起用したTVCMを放映するなど認知度は飛躍的に向上しています。しかし、各種メディアが報じているのは、主に仮想通貨の価値変動についての話題であり、高騰や暴落にしか着目していません。仮想通貨は価値の変動が激しく、仮想通貨が注目される前から投資を行った方は大きく利益をあげているケースも少なくありません。その為、一般ユーザーや投資家から、仮想通貨は株式投資やFX投資と並び有力な投資先として注目されています。しかし、仮想通貨を見ていく上では価値も重要ではありますが、どのように実社会で活用されるのか見ていく事は非常に大切です。仮想通貨の価値は、法定通貨とのレート交換だけでは決定できません。

仮想通貨Dashがジンバブエで活用される

Dashは、ジンバブエの公式デジタル通貨を目指し、2017年11月27日ジンバブエの決済機関であるKuvacashとの提携を発表しました。この提携の目的は、ジンバブエが抱える物価上昇問題を解決する為であり、Dashは実際にKuvacashに550万ドルもの投資を行っています。

ジンバブエでは深刻な物価上昇が発生した過去があります。その時には、ジンバブエの財相が国庫残高について約1万9,700円と発表したり、紙幣では100兆ジンバブエドルが発行されたりと異常ともいえる事態となっていました。現在は国の法定通貨であるジンバブエドルが廃止され、米国ドル等他国の通貨を使用しています。

Dashを用いたジンバブエに対する具体的な計画について言えば、SMSメッセージを活用できる携帯電話を使用し、誰もが即時取引を行う事を可能にする計画です。この計画が実現すれば、銀行口座を有していない人であっても、支払いや送金のやり取りが可能となり、仮想通貨が実社会で活用される大きな一歩になるでしょう。

Kuvacashは2018年度内から貨幣補充モデルを展開し、いつでもデジタル通貨を売ってドルに替えられる仕組みを作り、人々の間に信用を与えていこうとしています。そして、Dashの計画が成功すれば、法定通貨よりもモバイル決済が導入され、仮想通貨が浸透する可能性が高く、ジンバブエだけではなく、周辺諸国でも同様の動きが広まることになります。

仮想通貨イーサリアムを活用した音楽配信サービス

イーサリアムの開発者である英国イーサリアム社は、仮想通貨イーサリアムを活用した様々なサービスを提供しています。そのうちの1つに、音楽配信サービスUjo musicというものがあります。Ujo musicは、Web上に公開した音楽アーティストが作成した音楽を、利用者が選択してEther(イーサリアムの通貨単位)で支払うことで、利用者に対してライセンスが自動発行されます。また、支払われたEtherに関しては、契約に定められた配分通りに、音楽アーティストとその関係者に配分される仕組みである為、ユーザーと配信者のつながりがより一層強く反映されることになります。。

従来のエンタメシステムの例として、音楽アーティストが楽曲をリリースし、楽曲が買われて、アーティストが収入を得るまでには長い期間が必要です。加えて、その利益の多くは事務所を始めとした中間業者に多く支払われていました。しかし、Ujo musicを活用した場合には、利用者とアーティストが直接取引を行う為、中間業者に支払う手数料がなくなります。そして、Etherでの決済はイーサリアムのシステムを利用しているため、収入が入るまでの期間を大幅に短縮する事が可能となっています。

Ujo musicは、イーサリアムの特性を活かし音楽配信サービス料金の決済記録だけではなく、各種の契約内容に関してもブロックチェーンによってWeb上で分散管理される事になります。システムとしてのブロックチェーンは、安全に機能することがビットコインで確認されているので、決済記録・契約内容が改ざんされる可能性は皆無です。

メルカリが2018年内に仮想通貨決済導入へ

仮想通貨の秘めている可能性とは仮想通貨決済を導入している店舗として、家電量販店大手のビッグカメラグループ、旅行業大手のHISなどが有名です。それに加えて、アプリのダウンロード数累計1億、国内6,000万ダウンロード数を誇る、最も勢いがあるフリマアプリのメルカリが2018年度内での仮想通貨導入を予定しています。

メルカリの子会社であるメルぺイ代表取締役の青柳氏は日経FinTechの取材に対し、現在の仮想通貨は投機的な側面が強い為、社会実装において先鞭をつけたいと述べました。実際、現在仮想通貨決済の導入に関しては、ビッグカメラ等の一部の店では決済が可能となっていますが、仮想通貨決済が社会的に浸透しているとは言い難い状況にあります。

また、現在の税制度では、仮想通貨を利用して支払いを行うと利益を確定したとみなされ、使用金額によっては確定申告の必要があります。その為、税金徴収の仕組みが通貨としての扱いとなっていない為、仮想通貨を使用しての支払いを行う人は非常に少数となっているのが現状です。今後、仮想通貨が、社会的に浸透していく為には、仮想通貨が使用される環境が整う必要がありますが、メルカリの仮想通貨決済導入は仮想通貨が人々に広く使われるきっかけになり得ます。

エストニアで国家によるICOを計画

ICOというと企業が行うイメージが定着していますが、エストニアは国家によるICOについての計画を発表しています。エストニアは、公的サービスの電子化を進行させ、居住権に関しても、外語区人にネット上で行政サービスを提供する制度を導入するなどテクノロジー先進国を目指しています。

ICOの中身として、エストニアはエストコインと呼ばれる仮想通貨を発行予定です。エストニア政府の電子化担当であるカスパー・コージュス氏がブログ内でこの通貨の計画について言及しています。その内容の中には、エストコインの利用、エストコインによる決済導入を企業に促す報酬制度の視野に入れていることなどが盛り込まれています、また、世界中で疑念を抱かれつつあるICO活動の信頼性を高める為に、投資家等に電子居住権を使用してICOに参加するように促すプランも想定されており、エストニアがエストコインの計画を実行に移そうとしている事は明白です。

しかし、エストコインをユーロに固定されたトークンにすることにについて問題視されています。欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁は、どのユーロ加盟国も自国の通貨を作り出すことはできないと述べた上で、ユーロ区域の通貨はユーロであると明言する等非難の声も上がっています。現在、エストニアを始めとして、自国の仮想通貨を作成しようとする動きは増加しつつあります。

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が独自通貨発行

日本国内のメガバンクであるMUFGが、独自に開発中の仮想通貨MUFGコインを発行するため、新たな取引所を開設する方針を固めています。これに加えて、取引所を自ら管理することでコインの価格の変動を抑え、安定的に決済や送金に使えるようにするとしています。

MUFGはスマートフォンにダウンロードしたアプリを通じて、MUFGコイン利用者間の送金や、加盟店での買い物などの代金支払いにMUFGコインを使用できる仕組みを構築する予定です。その為、MUFGは利用者に安心してコインを使用できるようにするという視点から、1MUFGコインの価値を1円に固定させるとしています。

MUFGはすでに金融庁に、取引所の開設によって18年度内にコインを発行する方針を通告しています。しかし、仮想通貨取引所を開設するには金融庁への登録が義務付けられており、もし金融庁から認可されなければ仮想通貨取引所は開設できず、MUFGコインは発行できません。国内外問わず、多くの金融機関が仮想通貨の機能を利用したシステムの導入を検討する中、MUFGのような既存のサービスとは異なる新たなサービスに対応した法整備は遅れているという状況のあります。