200万円前後で足踏みするビットコイン、勢いを増してきたアルトコイン「LISK(リスク)」
ビットコイン(BTC)価格の上昇が200万円前後の天井にぶつかって、130~180万円台にまで押し戻されるチャートが続いています。ビットコインは2017年だけで約20倍以上の値上がりになっていますから、短期で200万円台を大きく突破する展開まで楽観的に期待するのはさすがに難しい状況になっています。
一方、BTCのバブル的な価格上昇に対する警戒もあって、アルトコインに資金が流れて値上がりの勢いが強まっています。2017年8月にBTCからハードフォークしたビットコインキャッシュ(BCH)は、12月20日には45万円(過去最高値)にまで迫りました。アルトコインの一つである「リスク(LISK:LSK)」も、11月から2倍以上に価格を上昇させて注目を集めています。現在では、「1LSK=2,000円」を超える高値の相場も多くなり、個人投資家の中にもリスクの保有枚数を増やそうとする人が増えてきています。
仮想通貨自体に対する社会一般での信用も定着していないのに、仮想通貨のネーミングが「リスク(LISK)」ですから、“RISK(損失が生じる危険性)”をイメージさせ、いまいち買われていないと言われたりもします。しかしリスク(LISK)そのものは将来性と実用性を感じさせる面白い仮想通貨で、仮想通貨としての仕様は、人気の高いアルトコインのイーサリアム(ETH)にも似ています。リスクはイーサリアムと同じ「スマートコントラクト」というブロックチェーンの仕組みを採用し、仲介者(金融機関)を必要としない「自動取引プロセス」を実現しているのです。
リスク(LSK)とイーサリアム(ETH)で採用されている「スマートコントラクト」とは何か?
リスク(LSK)は、分散型アプリケーションを構築するプラットフォーム「Lisk」を活用して、2016年5月24日にローンチした仮想通貨です。Liskというプラットフォームは、ドイツのMax KordekとOliver Beddowが開発した「DApps構築プラットフォーム(Decentralized Applications)」に依拠しています。DAppsは、仮想通貨(ビットコイン)のブロックチェーンの典型的特徴とされる「非中央集権型・自律分散型のプラットフォーム」として考えれば分かりやすく、DAppsのリスクを運用する手段として、イーサリアム(ETH)にも使われている「スマートコントラクト(Smart Contract)」が採用されています。
スマートコントラクトを直訳すれば「賢い契約」ですが、簡単に言えばスマートコントラクトとは「契約の条件確認や履行などを自動で実行するシステム」や「インターネット上の効率的な合意のシステム」のことです。スマートコントラクト概念の提唱者Nick Szaboは、事前に合意された自動取引プロセスであるスマートコントラクトの具体例として「自動販売機」を上げています。自動販売機にお金を入れる人は、商品(ジュース・お茶など)を購入するための商契約に効率的かつ自動的に合意したと見なせるので、これは確かに分かりやすいですね。
スマートコントラクトのスマート(smart)は、「賢い」というより「効率的・強制的(デジタルな取引に参加すれば強制的に合意したと見なされる)」の意味合いが強くなっています。コントラクト(contract)は「法律上の契約」ではなく「システム上で自動化された合意」という意味であり、広義の「デジタルなシステム上で効率化された合意」としてのスマートコントラクトは、ビットコイン(BTC)の取引の仕組みにも当てはまることになるでしょう。
リスク(LISK)とイーサリアムの違いについて
インターネット上で効率的かつ自動的な合意を可能にするスマートコントラクトの最大のメリットは、契約の相手を信用したり調査したりする必要性がないので、「大幅なコストの低下」を期待できるということです。では、同じスマートコントラクトを採用しているとされるリスクとイーサリアムの違いはどこにあるのでしょうか。まず開発言語(プログラミング言語)の違いがあります。イーサリアムは独自の“Solidity”という閉鎖的な開発言語を使っていますが、リスクは世界的にもポピュラーな開発言語である“Javascript”を採用しており、よりオープンに開発者(エンジニア)を集めやすい環境にあります。
リスクとイーサリアムの大きな違いとしては、リスクはブロックチェーンの分散台帳の取引記録において「メインチェーン」以外の「サイドチェーン」を利用しているという事があります。イーサリアムは、メインチェーン上のみにスマートコントラクトのプログラムを記述して、取引記録を追記・検証しながらブロックを形成していきます。それに対してリスクは、単一のメインチェーン上だけに構築されたDAppsではなく、各アプリケーション・各取引記録を「サイドチェーン化(側鎖化)」することで複数のメリットを生み出しているのです。
リスクのように本体のメインチェーンと側鎖(補助)のサイドチェーンを分けるやり方の最大のメリットは、「メインチェーン本体の異常に対する対処のしやすさ(イーサリアムの「The DAO事件」のような致命的ハッキングを回避しやすい)」と「メインチェーンの負荷軽減+送金スピードの速さ」にあります。ビットコインの1ブロック形成には約10分の時間がかかりますが、リスクは理論的にはわずか数十秒でブロック形成ができるとされ、仮想通貨としての送金速度も速くなっています。ビットコインとリスクの違いには、BTCは発行上限枚数が約2100万枚と決まっているが、LSKは発行上限がなく無限という違いもあります。
発行枚数に上限がないリスク(LISK)のフォージング(鋳造)とPoSの仕組み
リスク(LISK)には「送金速度の速さ・ブロックチェーンのトラブル対処能力」以外にも、「ネットワークの拡張性・柔軟な開発環境」というメリットがあります。仮想通貨全体の中でも、「柔軟性・拡張性・データ修正の対応」においてリスクはかなり優れた特徴を持っているのです。リスク(LISK)を発行するためのマイニング(採掘)は、「フォージング(鋳造・ちゅうぞう)」という特殊な概念で呼ばれています。フォージングの報酬は「新規発行LSK+取引手数料」ですが、ビットコインと同じく毎年発行枚数が漸減する仕組みが採用されています。
リスク(LISK)の発行枚数は上限がなくて無限とされているので、リスク(LISK)の値下がりリスクとして、マネタリーベースの過剰によるインフレリスクが懸念されます。しかしリスク(LISK)の開発陣営も、リスク(LISK)の新規発行枚数の微調整によって需給をコントロールしているので、リスク(LISK)の供給過剰による大幅な価格下落には一応の対策が施されています。
ビットコインはマイニングの作業承認の仕組みとしてマシンパワー(電力消費)に依拠した“PoW(Proof of Work:仕事の証明)”を採用していますが、リスクは“PoS(Proof of Stake)”という仮想通貨の保有枚数に依拠したフォージングの承認の仕組みを採用しています。正確には、“DPoS(Delegated Proof of Stake)”というアルゴリズムで、LSKは取引記録を承認していますが、これは「LSK保有枚数の多い代表者に承認権限を委託する方法」であり、マシンパワーの計算量のみに頼るBTCのやり方とは異なっています。
リスク(LISK)の価格上昇要因とその将来性への期待
11月初頭からリスク(LISK)は上昇を続けていますが、リスク価格が上昇傾向にある要因には何があるのでしょうか?直接の要因は、サイドチェーン技術の強化をメインとする「12月のリスクのLisk Core1.0へのアップデート(現在は延期中)」とマイクロソフト社との提携でした。このアップデートには、サイドチェーンの機能強化だけではなく、リスク開発により多くのエンジニアが参加しやすくなる「SDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発者向けキット)」の配布も含まれていました。
もう一つのLSK価格の上昇要因として注目されているのは、“リスク(RISK:損失発生の危険)”を連想させるアルトコイン・リスク(LSK)のネーミングとも関係していますが、「2018年2月のリブランディング(リローンチ)予定」です。リスクは2018年に「ネーミング・ロゴ」を刷新する計画を発表しているので、リスクという仮想通貨の名前とロゴそのものが変わる可能性が高いのですが、仮想通貨市場は「リスクのブランドイメージ再構築」を歓迎しているようです。
「リスク(LISK)というネーミング」は刺激的なしゃれが効いているとも言えますが、ここまで仮想通貨市場が大きくなってくると、「社会一般・マスの大衆の受け止め方」にもやはり配慮していかなければなりません。リスクのロゴも青基調のクールなデザインで好きな人も多いと思いますが、「2018年の新生リスクのブランド再構築」ではこのロゴも変更される予定です。リスクは中期的にも値上がり要因は多く、スマートコントラクトを採用した仮想通貨としての機能・仕様も優れているので、アルトコインの中でも高い魅力があります。2018年7月に「分散型取引所(Decentralized Exchange)」の発表も予定されていて、リスク関連の話題が増えてきそうです。
リスクは、2017年11月に予定されていた韓国の仮想通貨取引所Coinrailへの上場が延期されました。韓国やインドの取引所上場には、2018年中に再トライするようですが、「リスク(LISK)を購入可能な取引所の増加」もリスクの価格を押し上げるでしょう。日本国内でも、Coincheck以外の取引所での「リスクの取り扱い」が期待されるところです。