下落しつつも、仮想通貨市場のシェア二位を争うイーサリアム(ETH)とリップル(XRP)

イーサリアムとビットコインの違いはどこにあるのか仮想通貨市場のシェアで、今もトップを独走するのは元祖仮想通貨ビットコイン(BTC)です。ビットコインは2月以降の仮想通貨市場は続落が続いていて、3月29日時点でビットコイン価格は80万円を割っていますが、ビットコインの後をイーサリアム(通貨名イーサ:ETH)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(BCH)が“三つ巴”で追いかける構造は続いています。ビットコインを追うイーサとリップルも価格は大きく下落し、ETHは40,000円を割り、XRPも50円前後まで下落して、去年の高値と比べると半値以下になっています。昨年末には、XRP高騰でETHの時価総額を抜いた事が話題になりましたが、イーサとリップルは共にビットコインの時価総額を追い抜く可能性のあるアルトコインとして投資資金を集めてきました。コインチェック事件後はETHとXRPは息切れして下落局面が目立ちますが、潜在的には大きな値上がりの可能性を秘めています。

イーサをはじめとするアルトコインが、ビットコインを時価総額で逆転する現象のことを「フリップニング(逆転劇)」と呼んでいますが、イーサ投資家(あるいはリップル投資家)はフリップニングの実現を期待しています。需要が急増したビットコインは「スケーラビリティー問題(ブロックサイズ問題)」で一度躓き、「送金時間の遅延・送金手数料の高騰」などのトランザクション遅延が起こったため、その時はETHがBTCを追い抜く可能性も取りざたされました。「ライトニング・ネットワーク(LN)」のBTC実装が遅れれば、「送金能力の技術的優位性」を持つイーサやリップルが、ビットコインを抜いて「仮想通貨の首位」に躍り出るフリップニングが起こるという予測もあったのです。

イーサリアム(ETH)とリップル(XRP)のビットコインに対する技術的優位性

リップル(XRP)は、メガバンクやゆうちょ銀行など邦銀連合が「仮想通貨建ての送金手段(スピーディーで安価な国際送金が可能な手段)」として送金技術を採用した(XRP自体ではない)というニュースで話題になりました。XRPはセキュリティーが高い仮想通貨として世界各国の金融機関から評価され、特にビットコインの弱点である「リプレイアタック(二重支払いのリスク)」を防いでくれる安心感があります。サトシ・ナカモトの論文で提唱されたビットコインのマイニング方法である「PoW(Proof-of-Work:作業の証明)」には、膨大なハッシュパワー(演算能力)と消費電力が必要になる問題がありますが、XRPは電力問題を解決できる独自の「コンセンサス・アルゴリズム」を採用しています。

リップルはビットコインの致命的・原理的な問題とされる「スケーラビリティー問題(送金能力低下)」と「消費電力問題(ブロックの取引データの検証にかかる電力の指数関数的増大)」をすでに解決しているのです。仮想通貨の決済手段として手数料が安いのにスピードが速く、国際送金手段としてセキュリティホールがないことが、ロックアップ(XRPの強制的な供給制限)と併せて昨年末のXRP高騰の一因になりました。

仮想通貨としてイーサリアム(Ethereum)の名称は有名ですが、正確には仮想通貨単位としては「イーサ(ETH:Ether)」を採用しています。イーサリアムのビットコインに対する技術的優位性を象徴するコンセプトは「スマートコントラクト(Smart Contract)」です。ETHはスマートコントラクト採用によって、ユーザーが独自に定義したかなり複雑な契約まで自動執行できるようになっています。イーサリアムは中央集権的な第三者(管理者・権限者)を必要とせず、ユーザーが定義したり同意したりした(個人間送金以上の)かなり複雑な契約を自動的かつスピーディーに執行できる「拡張的な利便性・DApps開発の自由度」を持っているのです。

イーサ(ETH)はビットコイン(BTC)よりも「自由度・拡張性」が高い

仮想通貨イーサ(ETH)誕生の経緯を考えれば、イーサリアムの「仮想通貨としての性能・利便性」がビットコイン(BTC)よりも優れているのは当たり前かもしれません。「次世代仮想通貨2.0」とも呼ばれたイーサリアムの開発プラットフォームは、初めから「ビットコインの問題点・欠点」を徹底的に調査研究したエンジニアたちによって実用的に構築されたものだからです。ETHは、今もビットコインが抱えるスケーラビリティー問題やセキュリティーホールなどの問題を解決済みとされています。

サトシ・ナカモトが考案したとされる仮想通貨ビットコインはあくまで「純粋な仮想通貨」としてのみ設計されたものなので、「仮想通貨の数値・送金取引のデータ(コインのやり取りのデータ)」以外のものを、ブロックチェーン上に記載することがほとんどできません。ビットコインは仮想通貨としての機能だけ持つ「シングルタスクの仮想通貨プラットフォーム」で、仮想通貨ビットコインは数値データを改ざんできないセキュアな取引を行うことは得意でも、それ以外の複雑な契約の記載・執行はできないブロックチェーン仕様の限界があるのです。

イーサリアム(イーサ)はこのビットコインの限界を乗り越えた仮想通貨で、スマートコントラクトの仕組みによって、ブロックチェーン上に「仮想通貨の数値のやり取り」だけではなく「ある程度まで複雑な契約内容の情報」を記載することが可能になっています。仮想通貨ETHは仮想通貨ビットコインよりも「自由度・拡張性」が高いという技術的優位性があり、将来的に「仮想通貨以外の多様な用途」に応用できそうなことが仮想通貨ETHの潜在価値につながっているのです。

イーサリアム(ETH)の契約・応用の自由度を高めている「スマートコントラクト」について

イーサリアムのスマートコントラクトが持つ潜在的な拡張可能性独自の“Solidity”という開発言語で運営されているイーサリアムの開発プラットフォームは、「仮想通貨以外の多様な用途」に対応することが可能です。その代表的な用途として想定されているのが「株式・債券・不動産・金やプラチナ・商品市場・先物市場・為替(FX)」など既存の金融取引の代替機能です。イーサリアムのスマートコントラクト機能が最大限に活用され、その拡張された金融取引の代替機能を大勢の人が実際に利用するようになると、「既存の証券取引所・証券会社・FX事業者・先物取引所・不動産会社」の役割がかなり減るとも言われています。

イーサリアムのスマートコントラクトは「あらゆる価値のやり取り・契約の履行」において、「中央集権的な第三者(管理者・責任者)」の仲介や保証(信用担保)を不要なものにしてしまいます。イーサリアムの持つ「潜在的な経済社会革命のパワー」はかなり大きく、さまざまな契約内容・取引行為をブロックチェーン上で自動的に記載・検証することが可能になるとされています。「株・債券・貴金属・為替・個人資産」まで含めたあらゆる価値のやり取りが「個人間取引の形態」でできるようになれば、個人の利便性が飛躍的に高くなる一方で、既存の中間事業者(仲介者)でビジネスが成り立たなくなる所もでてくるでしょう。

イーサリアムで採用されている「スマートコントラクト(Smart Contract)」が、「イーサリアムの契約執行と応用範囲の自由度」を高めているのですが、スマートコントラクトというのは「契約の条件確認や実現・執行などを自動で実行するシステム」のことを意味しています。スマートコントラクトは「インターネット上の効率的な合意・執行のシステム」のことであり、スマートコントラクト概念の提唱者Nick Szaboは、事前に合意された自動取引の執行システムであるスマートコントラクトの具体例として「自動販売機」を上げています。自動販売機は「飲み物(商品)を買うために代金を投入すれば、自動的に飲み物(商品)がでてくるという誤解の生じにくい契約」を自動的に執行(実現)するシステムとして機能しているからです。

イーサ(ETH)の「昨年の高騰+今年の急落」についての分析

昨年末から今年1月前半までETHの高騰が続き、1月のチャートでは160,000円以上の高値をつけることもありました。当時のETHの価格上昇の最大の要因は、ビットコインバブルの余波ですが、インターネット上で効率的かつ自動的な「契約内容の定義・合意・執行」を実現できるスマートコントラクトの将来性にも期待が集まっていました。ETHのスマートコントラクトは「第三者の仲介+契約相手の信用性の担保」を不要にすることができ、あらゆる価値のやり取りにおいて「コスト削減」ができるからです。長期的にはETHの利用シーンは拡大していくと見られますが、コインチェック事件後にいったんビットコインバブルが弾けた格好となり、アルトコイン全般も取引量が減少したため、ETHも40,000円前後まで急落しています。

イーサ(ETH)とチャートが連動しやすいイーサリアムクラシック(ETC)も価格が1月に5,500円超まで高騰した後、上下の波がありながらも下落トレンドに入っています。3月29日現在、1,500円台前半でETC価格は推移しているので、ETHと同様に三分の一以下に急落した苦境にあります。ETCはハードフォーク以前のイーサで、2016年6月の「The DAO事件」でETHから分岐して誕生したアルトコインですが、3月前半のハードフォークとエアドロップ(無料配布)でも価格は上昇に転じることができませんでした。

昨年末にリップルに時価総額2位の座を奪われたイーサですが、今年1月に時価総額2位の座をすぐ奪還した後にも、「仮想通貨市場全体の下落基調(取引所リスク・規制強化・取引量減少)」で上昇に転じることができない状態にあります。ETHの仮想通貨としての潜在的可能性はBTCより高い部分が多いため、今後も安値で買いながらETH価格の推移を見守るべきでしょう。