最近では、サラリーマンであっても自分の資産を老後に向けて少しでも増やそうと副業を行う人が増加しています。副業を行うにあたり、アルバイトや在宅ワーク、FX・株式投資などがすぐに思いつくでしょう。
しかし、アルバイトや在宅ワークは時間の確保や報酬が低いことや、FX・株式投資などは投資方法そのものが分かりにくいことが難点となっています。そこで、明快な投資方法に加え任意の額を投資できる仮想通貨投資が注目されています。
仮想通貨投資は、投資する通貨によっては何倍、何十倍もの利益を生み出す場合があり、その時に問題となるのが仮想通貨で得た利益についての確定申告が必要であるかどうかという点です。仮想通貨投資では、自分の利益の事を第一に考えるあまり、税金については疎かになりがちですが、きちんと申告をしないと、後日ペナルティを課せられてしまいますので注意が必要です。
仮想通貨の確定申告は行う必要がある
仮想通貨投資はインターネット上での取引であるため、確定申告をしなくても問題がないと考える方がいますが、確実に申告を行う必要があります。確定申告の期限は決まっており、2018年の場合は2月16日から3月15日の約1か月間が申告できる期間となっています。この期限内で確定申告を行えば問題ありませんが、手続きを行わなかった場合には追徴課税が課されます。
追徴課税については、確定申告の期限終了後に自主申告を行った場合であれば、納税額に5%を加算した額を支払うだけで済みますが、確定申告を行わず放置していると税務署から指摘を受けることになりますので、申告をきちんとすることはとても重要です。
もしも申告がきちんとできていないと指摘を受けた場合は、納税額ごとに加算率が異なります。50万円を超えなければ15%、50万円を超えた部分に関しては20%が加算される事になります。自主申告と比較すると3倍から4倍も課税額が増加することになります。もし、期限内に確定申告をしていなくても税務署から指摘される前に行いましょう。
これに関連して言えば、確定申告の最終期限日である3月15日までに税金の支払いが行われなかった場合、更に延滞税が課されます。原則として申告期限を越えてから2カ月以内の納付で年7.3%、2カ月以上が経過した段階で納付した場合は年14.6%の延滞税を支払う必要があります。
そして、延滞ではなく、故意に申告をしなかったという悪質な脱税行為と判断された場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が併科されるといった重い罰則を受けるため、確定申告の最終期限日までに税金の納付は確実に行う必要があります。
仮想通貨の税金についての知識を知ろう
仮想通貨で20万円以上収入を得た場合は、確定申告の必要があり、仮想通貨で得た利益に対しては、総合課税の累進課税が適用されます。総合課税制度ではほかの所得を合計して所得税額が計算されるため、課税対象額が増加するごとに税率が増加する仕組みです。
しかし、株の譲渡益や配当金に関しては、仮想通貨とは異なり、申告分離税が適用できるため、他の所得と合算せずに税金の計算が可能です。株と投資信託に比べ、仮想通貨の利益は必ず確定申告が必要であるということが、仮想通貨投資におけるデメリットともいえます。
株やFXでは損益通算という制度が適用されます。損益通算は、計算上損失が生じている場合に利益を得たものと相殺し、課税対象額を減らすことが可能な制度です。
つまり、株で利益が出ていて、FXで損失が出ていた場合は、損益通算が適用できるので課税対象額を抑えることが可能です。しかし、仮想通貨の損益との損益通算はできません。投資の指標として、株やFXと似たような性質を持つ仮想通貨ですが、申告時に損益通算はできないことが、大きなデメリットとなっています。
仮想通貨に関して、損益通算ができない事を知らない場合には、仮想通貨投資で利益が出ており、株やFXで損失が出ても課税対象額が減らせると考えるでしょう。しかし、実際には、損益通算が不可能で課税対象額は減少しないため、税金の支払いができず自己破産に至る場合があります。
そのため、仮想通貨のほかにも株やFXをされている方は損益通算の仕組みは必ず理解しておきましょう。株やFXでは申告分離課税、損益通算が認められているのに対し、仮想通貨投資では認められていない点は株、FXと比べ税金の徴収面に関して厳しい状態といえるでしょう。
仮想通貨で得た利益の所得区分は雑所得となり、雑所得欄に仮想通貨における利益を記載して申告を行います。雑所得の金額は給与所得など、ほかの所得と合算し、総合での所得金額を求め、その金額に応じた納付税額が決定します。ちなみに所得税に関しては、最低5%から最大45%まで7段階で区分されています。そのため、自分の総合所得に掛かる所得税を考慮しながら仮想通貨投資を行うようにしましょう。
仮想通貨が課税対象になるタイミング
例えば、仮想通貨を30万円分購入し、その後、価値が高騰し60万円になった時点で仮想通貨を売却した場合、価値が上昇している分の30万円は収益となり、課税対象としてカウントされます。
このように仮想通貨支払いに対応している店舗で商品を購入した場合、仮想通貨を売却して利益を得た場合、他の仮想通貨と交換して利益を得た場合などは全て課税対象となります。
また、1年間の中で得た全ての所得に関して税金が掛かります。そのため、取引記録に関して確定申告時に抜けがある場合、追徴課税が課される可能性があるため、毎年1月1日から12月31日までの使用場所や使用金額に関して細かく記録しておけば問題ありません。
ちなみに、アルバイトなども20万円を境に納税の必要があるかどうかが分かれる為、20万円という額は一種のボーダーであることを覚えておくと良いでしょう。
仮想通貨の確定申告方法
通常の確定申告であれば、副業に関する書類さえあれば納税は可能であり、税務署での書類作成を行うだけなので何も難しい事項はありません。
しかし、仮想通貨で20万円以上の利益が出た場合の確定申告では、確定申告書、源泉徴収票などの添付書類、各種控除を受ける際に必要な書類だけではなく、仮想通貨に売買に関する書類が必要です。仮想通貨に関する書類としては、取引履歴、ウォレット残高の証明に必要なスクリーンショット、入金・出金明細書などがあります。
企業に勤めている会社員であれば、会社で得た分の収入に関しては、会社が行ってくれるので、自分で処理する必要がないため、確定申告をしたことがない方は多いでしょう。
そのため、確定申告の方法が分からず不安であれば、その場で教えてもらいながら確定申告書を作成できる税務署の確定申告作成会場の利用をおすすめします。また、仮想通貨取引の取引量が多い場合は、税理士に依頼することで、計算の手間が省けるだけでなく、計算間違いへの不安が解消されます。
依頼料は掛かりますが、取引量が多い方は税理士への依頼を検討しましょう。法律を侵してしまった場合、高額の追加徴収が行われることになります。
仮想通貨取引所コインチェックによる日本円での返金補償
コインチェックは、自社で起こした事件であるネム流出に関して補填の方針を打ち出しています。それは、流出したNEMの保有者26万人に対し、日本円で総額約460億円を返金するという内容です。
しかし、ここで問題になってくるのが、返金された時点で利益が20万円以上の場合に確定申告が必要かどうかです。この問題に対して、国税庁の担当者は事実関係がまだ判明していないため、税法上の取り扱いについて具体的な事は発言できないとしています。
一方で、コインチェックの返金措置の発表は2018年内にあったことから、返金処理も2018年内に行われる可能性が高く、2018年内に返金された場合、返金分は2019年の確定申告の対象となります。
これは、自分の意志での利益確定ではないにも関わらず、確定申告が必要かどうかについても明確な方針が定まっていません。しかし、強制的に納税の義務が生じる可能性は非常に高いと言えます。