最近ニュースを賑わせた「580億円分の仮想通貨流出」事件。その業者である「コインチェック」を含め、7社に対して業務改善命令が出されたほか、みなし業者(登録申請中)2社に対して業務停止命令(1ヶ月)の行政処分が下されました。
その理由が個人情報の私的流用です。この事件も含めて、仮想通貨のこれからの取引について考えていきましょう。
コインチェックのネム流出事件
コインチェック事件とは、日本円にして580億円相当の仮想通貨ネムNEMが不正アクセスにより流出した事件です。
犯人の口座は発見されたものの、違う口座に送金しており他のコインや通貨に交換するなどしているため、取り戻すことはほぼ不可のであると言われています。
コインチェックはこの事件を受け対応に追われていますが、3月に入り2度目の業務改善命令を受けるなど、まだまだその余波は残っていると考えられます。
それでは、世間の仮想通貨に対する認識を見てみましょう。
【仮想通貨の取引人口は約3パーセント】
仮想通貨という言葉はよく聞くけど、実際に取引をしている人が身近にいないという人も多いでしょう。それもそのはず、日本国内において実際に仮想通貨の取引をしている人の割合は約3パーセントというデータが出ています。
仮想通貨を知らないという人の割合こそ少ないものの、興味がありいつか取引をしてみたいという人の割合を合算しても50パーセントに満たないというのが現状です。
【取引人口の少ない理由】
取引人口の割合が少ない理由として一番多いのは「仕組みがよくわからない」というものです。これは仮想通貨という言葉そのものは聞いたことはあっても、特に興味のないという方に多くみられる意見でした。
また、興味がある人に多かったのは、「信用ができない」、「信用面で不安がある」という、仮想通貨そのものへの不安感や不信感からくる意見が多いです。
以上のように世間の仮想通貨に対する認識はマイナスイメージが大きいという結果が出ており、そのことが取引人口の割合の少なさにダイレクトに影響しているのだと考えられます。
仮想通貨は本当に信用できないのか
それでは、仮想通貨は世間の認識の通り、本当に信用できないものなのかを考えてみましょう。そもそも仮想通貨への信用と言いますが、そもそも信用とは何なのでしょうか。
通貨に対する信用とは、通貨の役割からみると「いつでもどこでも欲しい物と交換可能」であることが必要です。通貨の起源を辿れば物々交換に遡れますので、通貨の信用というのは欲しい物との交換可能性であると言っていいと思います。
さらに、相手にとっても自分の支払う通貨が価値のあるものでなくてはいけません。このことを加味すると、仮想通貨への信用はまだまだ発展途上であると言えます。
もっと取引人口が増え、その通貨を欲している人が増えてくれば、それがイコール信用に繋がると考えられます。しかし現状、前述の通り日本では取引という観点でみれば仮想通貨を欲している人は3パーセントに過ぎないので、信用はそれだけ低いと言えるでしょう。
では、仮想通貨にはまだ信用がないので手を出さないほうがいいのか、という疑問が出てきますが、一概にそうではありません。「投資」という行為は本来余裕資金を投じて長くお金を世の中に回すことで成り立つものです。
しかし、仮想通貨に然り、FXに然り、余裕資金ではないものを投ずる上に、「投資」ではなく「投機」をする人が多いという実態もあります。投機とは、投資とは違いタイミングを重視するので長期的なものではなく非常に短いスパンでの取引が多く実行されるというものになります。
余裕資金でないお金をタイミング任せに投ずるのですから、これでは信用がないものに手を出さないほうがいいとなってしまいます。しかし、長い目で仮想通貨を育てたい、そのために今ある自分の余裕資金であれば投じてもいい、という投資の仕方であれば仮想通貨の現状での信用においても手を出していいと思います。
なぜなら、余裕資金ですのでなくなってしまっても生活には困りませんし、そのような人が増えてくることで徐々にではありますが仮想通貨への信用も高くなってくるからです。
仮想通貨への信用は、通貨そのものへの信用だけではなく取り扱っている業者への信用もまだまだ低いと言わざるを得ません。今回の行政処分のニュースや、コインチェック事件を受けて、ますます業者への信用はなくなってしまったでしょう。
これから仮想通貨の取引を始めようとする人は、仮想通貨そのものや仮想通貨の仕組みだけではなく、取り扱っている業者に対するアンテナも張り巡らし、勉強する必要があると言えます。仮に老舗の証券会社が仮想通貨の取り扱いを始めたら今よりも取引人口は増えるはずです。
仮想通貨業者の問題点
それでは、仮想通貨業者の何が問題なのでしょうか。コインチェック問題にしろ、今回行政処分を受けた業者にしろ、その問題の所在は「顧客のお金を預かっている」という意識の欠如であると考えられます。顧客の資産を預かる以上は、その管理体制やシステムは強固なものでなくてはいけません。
コインチェック事件のように不正アクセスによって顧客の資産が奪われるようなセキュリティでは、絶対にいけないのです。現在の登録業者の中にはその点しっかりとやっている業者も多いと思います。
しかし、登録業者やみなし業者の中にはシステムのセキュリティ上問題の残っている業者も多いはずです。また、システムの問題だけではなく、そもそもの意識の欠如もあります。冒頭の行政処分を受けた2社の他にも、顧客の資金を私的に流用していたという事例も、金融庁の立ち入り調査で明らかになっています。
業者側はこのような事案をなくす努力をし、信用を勝ち取って行く必要があります。安心して取引ができる環境づくりは、業者の意識改善が先決であると言えます。
仮想通貨取引の仕組みづくり
仮想通貨の業者はまずは意識改善が必要であると述べましたが、仕組みや規制、法整備がなされていないというのも問題です。消費者保護や適正な取引を促すという観点からも国は早急に仕組みづくりをすべきです。
現状では、コインチェック事件の被害者救済も、コインチェックからの損害補填に委ねられていますが、仕組みづくりをすることでその補填もコインチェック単独ではなく国からの補助もつけられるようになると思います。
また、税金の観点で言えば、コインチェック事件での失われた仮想通貨に利益が出ていたら納税義務が生じると麻生財務大臣は述べました。しかし、仕組みづくりもままならないうちから税金を取り立てるような発言ばかりでは、取引人口は増えず、仮想通貨への信用はなかなか上がりません。
国は、消費者保護や納税に関してしっかりとした規定を設け、その中で快適に取引できるような環境づくりを早急にすべきです。
仮想通貨取引をするなら知識を増やす
これまで、仮想通貨取引業社の行政処分に関するニュースからの、業者や国の取るべき対策と、考察を述べました。
実際に取引をしたいと思っている方は、このようなニュースを見るたび取引を躊躇してしまうと思います。
しかし、中には行政処分の対象にならない業者も多いわけですので、そのような業者を見分けられるよう知識を増やすことが必須であると言えます。
また、仮想通貨そのものへの知識を増やすことで、国や業者からの仕組みづくりが不完全な現状でも安全な取引を自分の判断でできるようになると思います。
このように知識を増やした上で、投資の基本である「余裕資金の長期的な投資」というスタンスで始めると、より安全に仮想通貨取引を行えるようになります。