アルトコインの「バイトコイン(Bytecoin)」は、現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていません。海外の取引所では、アメリカのPoloniex(ポロニエックス)、イギリスのHitBTCなどで取り扱っていますが、日本語対応ではなく、日本円からバイトコイン(Bytecoin)を直接交換することはできません。

バイトコインは「匿名性」を特徴とするアルトコインの元祖

仮想通貨バイトコイン(Bytecoin)の将来性Bytecoin(バイトコイン/単位:BCN)は2012年7月に誕生しました。まだ6年もたっていませんが、その歴史が10年にも満たない仮想通貨の世界では「古参」の部類に入ります。ビットコインの誕生年は2009年ですが、2014年のイーサリアムよりも前です。バイトコイン(Bytecoin)の発行上限は1844億7000BCNです。

バイトコイン(Bytecoin)の最大の特徴は「匿名性」で、それを売り物にした仮想通貨の中では元祖です。暗号化されるために外部の第三者には、送金を行った送り主のアドレスも、いくら送金したかという取引の履歴もわからず、送金や取引の秘密が守られます。バイトコイン(Bytecoin)の他に匿名性を売り物にするアルトコインとしては他にMonero(XMR)、Zcash(ジーキャッシュ/ZEC)、DASHなどがありますが、それぞれ匿名性を確保するための技術的なしくみが異なっています。

バイトコイン(Bytecoin)の場合、仮想通貨の基本中の基本のシステムであるブロックチェーンの「アルゴリズム(コンピュータで計算する方法)」として独自の「CryptoNote(クリプトノート)」があり、「リング署名」という方法によって匿名性を確保しています。リング署名は第三者が見たら雑踏にまぎれるような形で匿名性を確保できる技術です。「CryptNight(クリプトナイト)」というアルゴリズムでリング署名を行うMonero(XMR)のしくみがそれに似ていますが、原理的には似通っていても細かい点では違いがあります。なお、Zcash(ZEC)は「ゼロ知識証明」、DASHは「プライベートセンド」「インスタントセンド」という、バイトコイン(Bytecoin)とは全く異なる技術を利用して匿名性を確保しています。

バイトコインに使われている匿名性、安全性を確保するリング署名の原理

バイトコイン(Bytecoin)における匿名性、安全性を確保するための技術「リング署名」の原理は、わかりやすく単純化して言えば、次のようなものです。
住宅が100軒以上もある、とある街の大通りの壁に「何丁目何番地のAさんの家のカギ」と書かれて1本のカギが吊してあったとします。誰かがそれを取って持って行って、Aさんの家のドアのカギを開けて入るのはとても簡単です。泥棒のやり放題で、それでは匿名性はゼロで、安全性もゼロです。

では、街の大通りの壁に、そのまわりには何も書かれていなくて、カギがAさんの家のものも含めて20本まとめて吊してあったらどうでしょうか? 誰かがそれを取って持って行っても、Aさんの家のドアが開けられて泥棒に入られる確率は、限りなくゼロに近くなります。100軒以上ある住宅の一軒一軒をしらみつぶしに、ドアの鍵穴に20本のカギを次から次へと入れて開けようとするド根性のある泥棒は、まずいないでしょう。もしそれをやったとしたら、おそらく住人や通行人に怪しまれて、おまわりさんがやってきて、職務質問されて任意同行を求められるでしょう。

20本のカギにはAさんのカギも含まれていますが、全てどこの誰の家のカギなのかわからないので匿名性は確保されています。よほどの偶然でもなければAさんの家のドアを開けられる可能性はゼロに近いので、安全性も確保されています。しかしAさんは、20本のカギの中から自分の家のカギを見分けられます。自分にしかわからない印をつけているからです。自分の留守中、子どもが学校から帰宅してもカギを開けて家に入れるようにしたければ、「吊してある20本のカギの中で、ここにこんな印がついているカギは、うちのカギ。絶対に人に教えないように」と言えばいいのです。

Aさんとその子どもが、仮想通貨を使った取引の相手だとすれば、そうやって第三者に秘密を知られないまま取引ができます。匿名性が確保されています。
バイトコイン(Bytecoin)に使われている技術「リング署名」のリングとは、ビルの警備員さんが夜のパトロールの時に持つような「カギの束」の金属のリングのことです。もし個々のカギに何号室か書いていなければ、どれがどこのカギなのかわからなくなります(匿名性)。バイトコイン(Bytecoin)のアルゴリズムのCryptoNoteは取引のたびごとに「ワンタイムキー」を作成しますが、これが「自分にしかわからないカギの印」にあたります。取引の相手がそのワンタイムキーを受け取ると、カギの束の中から目当てのカギを選び出すように、取引を行えます。そうやって他の誰にも知られずに、秘密のうちに取引の詳細な内容を確認して、仮想通貨の取引を行えます(安全性)。ワンタイムキーは、1回使ったらそれで使い捨てです。

バイトコインがビットコインよりも〃速い〃理由

CryptoNote リング署名による「匿名性」「取引スピード」「手数料無料」でビットコインとの違いが鮮明な古参コインバイトコイン(Bytecoin)のもうひとつの特徴は〃速い〃ということです。アルトコインの中にはもっと速く取引できるものもありますが、仮想通貨の王者ビットコイン(BTC)に比べると取引スピードが5倍速くなっています。

取引のスピードの大部分は、ブロックチェーンの上にブロック(台帳)をつくってそれを承認する「ブロック生成時間」で決まりますが、ビットコインのそれが600秒(10分)なのに対して、バイトコイン(Bytecoin)のそれは120秒(2分)で、所要時間は5分の1です。バイトコイン(Bytecoin)は「PoW(Ploof of Work/プルーフ・オブ・ワーク)」という認証の技術を利用してそれを実現しました。ただしこの点は「ビットコインが遅すぎる」とも言えます。その原因の一つになっている、取引量に対してブロックサイズが小さすぎるためにブロック生成が順番待ちになる「スケーラビリティ問題」は、ビットコインの最大の欠点だとかねてから指摘されています。

その点、バイトコイン(Bytecoin)はビットコインに比べれば取引量がずっと少ないので、ブロック生成が順番待ちになることはありません。

バイトコイン(Bytecoin)の特徴としては、その他の仲介業者がいないので「手数料原則無料」になることもあります。ビットコインなどが「手数料が高い」と投資家のブーイングを浴びる中、世界のどこに送金しても無料なのはバイトコイン(Bytecoin)の利用上のメリットと言えます。また、アルゴリズムの「CryptoNote」は外部からのハッカーの攻撃に強くて安全性が高い点や、一般に市販されているパソコンでもマイニング(採掘)ができる点も、特徴と言えます。

バイトコインは匿名性ある後発との生存競争で生き残れるか

バイトコイン(Bytecoin)は、現在、日本の仮想通貨取引所では取り扱っていないので、円からの直接交換できません。日本の取引所でいったん円からビットコインなど別の仮想通貨に交換してから、海外の取引所に持ち込んで、改めてバイトコイン(Bytecoin)に交換することになります。

バイトコイン(Bytecoin)は誕生した2012年から2017年4月頃まで5年近く、交換レートは1BCN=0.01円以下でほぼ横ばいの値動きでした。それが翌5月になると0.6円付近まで60倍以上も急騰しました。いったん0.2円以下まで下がった後、11月から再び上昇して2017年12月末には1BCN=0.7円を超え、年が明けた2018年1月にはなんと2円に迫っています。9ヵ月でおよそ200倍です。しかし長続きはせず、すぐに0.6円付近まで急落しました。交換レートのアップダウンがかなり大きい仮想通貨です。

バイトコイン(Bytecoin)の最大の特徴の匿名性は大きなメリットですが、それゆえに世界の警察当局、税務当局にマークされるような問題もはらんでいます。外部の第三者には送金の送り主のアドレスも送金額も取引の履歴もわからず、仮想通貨の利用者のプライバシー、取引や決済の秘密が固く守られますが、仮想通貨が脱税や贈収賄、密輸、麻薬や武器の取引、違法な送金、資金洗浄(マネーロンダリング)などさまざまな悪事に利用されたとしても、匿名性のベールに包まれて外部からはわかりません。

もちろん、人が包丁で刺される事件が起きても包丁に罪はないように、悪いのは仮想通貨バイトコイン(Bytecoin)ではなく、それを悪事の道具に利用する悪党です。それでもバイトコイン(Bytecoin)は「不正を助長する」と当局からにらまれ、イメージが悪化するリスクを背負っています。

それとは別にバイトコイン(Bytecoin)の将来性に影を落とすのが「Moneroとの類似性」です。Monero(XMR)も匿名性が売り物で「リング署名」でそれを確保する点ではバイトコイン(Bytecoin)と同じです。Moneroはバイトコイン(Bytecoin)を手本に育ったいわば「弟分」ながら、知名度や時価総額はすでに「兄貴」を上回っていて、後発だけに技術的にはバイトコイン(Bytecoin)よりも進んでいる部分もあるため「最大のライバル」と言えます。さらに言えば、匿名性を売り物にしている仮想通貨は他にZcashやDASHなどもあります。

もしもこの先、匿名性が売り物の仮想通貨の間で「どこが生き残れるか」という生存競争が激化したら、目が回るほど変化が激しい仮想通貨の世界ですから、元祖にして最古参の「老兵」バイトコイン(Bytecoin)はただ消え去るのみ、になるかもしれません。