2017年においては、日本国内大手の仮想通貨取引所がTVCMを開始し、仮想通貨ビットコインの価値の変動は各種メディアで取り上げられるなど、飛躍的にその商品価値を多方面に知られることになりました。その為、2018年の現在でも認知度の向上により、仮想通貨に対する期待値は高いまま推移しています。また、世界中の方が仮想通貨に対しての投資を行っており、仮想通貨の市場規模は拡大を続けているため、各国の政府や金融機関、世界的なグローバル企業も仮想通貨の動向には目を光らせています。しかし、仮想通貨市場が盛り上がりを見せる中でハッキングのリスクが問題視されており、対策が追い付いていない状況です。また、仮想通貨は、電子上の存在であり、それらが大量に集まる取引所
では、保有する仮想通貨が盗難に遭う被害が多発しています。
仮想通貨取引所マウントゴックスの消失事件
日本で仮想通貨の知名度を上げた出来事の一つとして、仮想通貨取引所マウントゴックス社の事件は非常に有名です。この事件は、顧客が保有するビットコイン75万ビットコインと購入用の預かり金28億円、合計で470億円以上が消失したというものです。
2014年2月上旬にシステムの不具合を悪用した不正アクセスが発生し、この時点で売買が完了しない取引が急増したことから、バグの悪用により盗まれた可能性が高いと見られていました。しかし、不正アクセスによる消失事件というよりも、マウントゴックス社内部関係者の犯行という見方も浮上しています。
結果として、警視庁がマウントゴックス社や最高経営責任者であるカルプレス容疑者らのパソコンを解析したところ、現金の入金記録がないのに、カルプレス容疑者の口座残高が急激に増えていたことが発覚しています。そして、2015年8月1日、私電磁的記録不正作出・同供用容疑で、マウントゴックス社の最高経営責任者であるマルク・カルプレス容疑者が逮捕される事態になっています。
事件発覚後、マウントゴックス社は消失したビットコインや現金の補填を行うこともなく破綻し、顧客の資産は全て消失するという最悪の結末を迎えています。ちなみに、マウントゴックスは日本国内の取引所であったため、事件当時の12万7千人の顧客の内では日本人は約千人、大半は外国人でした。日本人の被害は少なかったものの、このマウントゴックス事件は各種メディアで報道された事で多くの人々は仮想通貨に対して悪い印象を持ったのは間違いありません。この事件は、仮想通貨の知名度を上げたものの不信感しか残らない事件でいえるでしょう。
イタリアの取引所BitGrailで仮想通貨流出
イタリアの仮想通貨取引所BitGrailは、2月8日時点の公式ツイッターで仮想通貨Nanoのマーケットが利用できないことを発表していましたが、その理由については言及していませんでした。結論すらすれば、BitGrailは2月10日の午前5時30分、仮想通貨Nanoで不正な取引があったことを認めています。不正流出によって消失したNanoは1700万、発行数量の13%に達しており、被害総額に関しては約220億円にも達します。そして、この事件の補填に関しては、BitGrail創業者のFrancesco firano氏からNano保有者に対して全ての補填は不可能であるとツイッターで明らかにされています。
現在、BitGrailでは仮想通貨の売買・入金。出金など全ての機能を停止したうえで、警察が調査を進めています。BitGrailはNano以外の仮想通貨に関しては、ハッキングによる影響はないとしていますが、全ての機能を停止していることから投資家にとってはかなり不安な状況と言えるでしょう。
韓国仮想通貨取引所で相次ぐハッキング被害
2017年4月には、韓国の仮想通貨取引所であるYapizonがハッキング被害を受け、約16億円が盗まれる事件が発生しました。6月には、韓国の大手仮想通貨取引所Bithumbがサイバー攻撃の標的となり会員情報3万6000人分が盗まれただけでなく、約7億円が奪われており、さらに9月には、仮想通貨取引所Coinisがハッキング被害を受け約2億円を盗まれるなど韓国の仮想通貨取引所は集中的なハッキングを受け続けています。
ハッキング被害の実情について韓国の国家情報院は、昨年の北朝鮮からのハッキング被害だけで約26億円の被害を受けている事を報告した上で、北朝鮮のハッキング方法についても言及しています。具体的なハッキング方法として、顧客や取引所にプログラムを仕掛けたメールを送付する、セキュリティを無力化する技術を用いて暗証番号を不正に入手する方法などの手口を明らかにしています。
韓国国内においては、仮想通貨取引所での被害を受け、韓国政府は仮想通貨の禁止を含めた厳しい対応を取ろうとしています。しかし、総じてハッキングはユーザーには非がない事件であり、国民の仮想通貨の規制に対する反発がかなり根強いため規制には発展していません。
アメリカの仮想通貨取引所ビットフロアでの事件
アメリカの仮想通貨取引所ビットフロアでは、2012年9月に2万4千ビットコイン金額に換算すると約150億円がハッキングによって消失する事件が発生しています。ビットフロアは仮想通貨を保存するウォレットキーのバックアップをオンラインで保管し、被害時にはウォレットキーが暗号化されていなかったことが要因で起きた事件です。
ビットフロア創設者のRoman Shtylman氏は暗号通貨フォーラムにてハッカーが取引所に侵入した事を公にした上で、取引所を復活させるための活動を続けていました。しかし、2013年4月17日にはアメリカの銀行規制措置により閉鎖せざるを得なくなりましたが、閉鎖前にはビットフロア利用者に資産の払い戻しを行っています。
現在であれば、仮想通貨取引所の対策としてオンライン上で管理を行うことはかなりのリスクであり、セキュリティ性の高さという意味ではオンライン上での管理はあり得ないといえるものです。しかし、現在でもセキュリティの甘い取引所は数多く存在しており、今後もビットフロアのようなセキュリティの欠点をハッカーに突かれ、仮想通貨を奪われる取引所はゼロにはならないでしょう。
日本の大手仮想通貨取引所も被害に
2018年1月26日、国内大手仮想通貨取引所Coincheckで仮想通貨ネムがハッキングにより不正送金されるという事件が起きています。被害に遭ったのはcoincheckに預けてあった5億2千3百万ネムで、被害額は500億円を超えています。
Coincheckでは仮想通貨の管理体制にバラツキがあり、ビットコインなどはオフラインで管理していたにも関わらず、ネムに関してはオンライン上で管理していました。そして、ネム財団の催告を無視し、セキュリティを高めるための技術も導入していなかった事が26日深夜に開催された記者会見で明らかになっています。この際のコインチェック側の会見の対応は、金銭を取り扱う業者としてはとても意識の低いものであり、何も知らない一般の方が見ても不快感を抱くほどのレベルです。
現在、Coincheckでは仮想通貨の売買などができない状態が続いており、被害に遭ったネム保有者に対する補償方針を打ち出していますが、具体的な時期については不明確です。日本円の出金は金融庁から許可された為、対応を開始していますがいずれにしても通常業務が行われない限り仮想通貨の価値にも影響を与え続けることになります。
2017年12月から有名人を起用したCMを放映するなど、会社として勢いに乗っていたCoincheckは今回の騒動で回復不能と呼べるほどの打撃を受けています。もっともその体制に問題が無くても、取引所が保有する仮想通貨はいつでも誰かに狙われていると思っていいでしょう。