無意味なフォークコインはネットワークやSegWitに悪影響

機会を見て仮想通貨のハードフォークについて記事をまとめるつもりでいましたが、昨年末から今年にかけ、業界では新しい事件やトピックが次々発生しており、ハードフォークのことなどすっかり失念していました。また失念するのに十分とも言える重大な事象も発生しています。

ビットコイン(BTC)にからんだハードフォークの大半は、本当に意味があった分裂か?疑問に思う方も多いでしょう。再び忘れてしまわないうちに、ビットコイン(BTC)に生じたハードフォークについての所感をまとめてみます。

フォークコインの発生は昨年末の予想から幾らか下回りそう

地味な話題とは言いましたが、ビットコイン(BTC)のハードフォークは、昨年末はわりと旬な話題でした。また、それなりに続くテーマだと予想していました。ところが、年も押し迫った12月30日、リップルが時価総額でイーサリアムを追い抜くという順位変動があり、また数日後にはイーサリアムが2位に再浮上します。そのまた数日後には、仮想通貨全体の相場が暴落するという予想外の展開があったところです。そしてつい先日には、まるでとどめを刺すように、コインチェックで5.23億のXEMがハッキングされました。その被害金額はあのマウント・ゴックス事件を超えるものです。

これで、ビットコイン(BTC)に関するハードフォークのことは、しばらく置いておこうと思ったほどです。しかしハードフォークのことで、どうしても触れておきたい話題もありました。そこで、敢えてこのテーマをもう一度引っ張り出すことにしました。

考えてみれば昨年末は、ビットコイン(BTC)以外にもフォークコインがたくさん出て来るとの予測もありましたし、現在もそこに期待をかけている人は少なからずいるでしょう。ただ今年は冒頭にも言いましたが、実にいろんな事件が起き、ICOにも逆風が吹くなどしたことで、新たなフォークコインが出て来る環境をある意味、奪ってしまったとも考えます。というわけで、今年のフォークコインの発生は、昨年末の予想から幾らか下回ると見ています。

フォークコインは投資家への分配が確約されている

取引所に上場したビットコイン(BTC)のフォークコインには、ビットコインキャッシュ(BCH)とビットコインゴールド(BTG)があります。また、このほかにもビットコインシルバー(BTSI)、ビットコインウラン(BUM)、ビットコインゴッド(GOD)、ビットコインプラチナム(BTP)、ライトニングビットコイン(LBTC)、ビットコインキャッシュプラス(BCP)、スーパービットコイン(SBTC)などがあるようです。ただ実際に、これらのハードフォークが現実化しているかどうかは定かではありません。

またこれだけ多くのビットコインから分裂したフォークコインを目のあたりにすると、単純に胡散臭さを感じます。またこれらのコインに、本気で投資してみようという気にもなりません。

ただ、大手取引所のCoinbassなどはフォークコインを投資家に分配しなければ取引所が訴えられます。これはCoinbassでなくても、米国の多くの取引所でも同じでしょうし、日本国内の取引所も同じような対応をしています。(たとえば、ビットコインキャッシュ(BCH)がそうでした)つまりビットコインのハードフォークコインなら、ユーザーに対するコインの分配・付与がある程度確約されています。次々と新たなフォークコインが出てくるのはこのためです。

しかし、フォークコインは常に出てくるものでもありません。はっきりいって今回のフォークコインはあきらかに出し過ぎです。多くのフォークコインの中に、マインドに響くユニークなコンセプトややむを得ず分裂に及んだ経緯を持つコインがどれだけあるでしょうか。少なくとも、ここに挙げたフォークコインはかなり怪しいでしょう。唯一あっても良いと思えるのは、ビットコインキャシュ(BCH)だけです。それ以外については、お金を出してまで購入はしないでしょう。

フォークコインは大手取引所に上場できる確率が高い

なぜ、これだけ無意味とも思われるフォークコインが生まれるのか?それは投資家にコインを簡単に分配できてしまうことにあります。これが、昨年末にかけてハードフォークコインが続出した理由のひとつです。そしてもうひとつ考えられる理由は、フォークコインなら大手取引所に簡単に上場できるからです。

たとえば昨年11月にビットコイン(BTC)からハードフォークしたコインにビットコインゴールド(BTG)があります。簡単にいうと、ビットコインゴールド(BTG)は、マイニングのやり方をASIC方式からGPU方式に変えただけのコインです。

ASICマイニングとは、ビットコイン専用につくられたマイニング専用機器「ASIC」によってマイニングを行い、演算速度が早く行えるメリットがあります。一方でGPUマイニングとは、ASICマイニングよりニ世代前のマイニング方式で、ASICマイニングと比較するとコストを抑えられること、それとデスクトップPCでもマイニングできるため、ASICより幅広い人がマイニングに参加できます。つまりビットコインゴールド(BTG)はマイニングのやり方を変えただけで、存在価値はそれほど高くはありません。

しかしビットコイン(BTC)からハードフォークしたコインということで、ビットコインゴールド(BTG)は大手取引所に簡単に上場できます。今でこそビットコインゴールド(BTG)は時価総額ランキングで少しずつ順位は下降していますが、当初は6位ぐらいにいました。これは普通のアルトコインではとても考えられないことです。ビットコインゴールド(BTG)に対して幾分失礼な言い方ですが、ビットコインゴールド(BTG)程度の仕組みでも簡単に上場でき、しかもランキング上位にも君臨できてしまう。これもフォークコインが無意味に増えてしまう理由でしょう。

トランザクションの問題を解決するSegwitにも根深い影響が

2017年にビットコイン(BTC)はSegWitを実装しています。SegWitとはビットコイン(BTC)のいくつかの問題を解決する技術(プロトコル)で、ビットコイン(BTC)以外の仮想通貨ではライトコインにも導入されています。何を解決するのか、端的に言うと、送金時間に関する問題です。ビットコイン(BTC)はユーザー数が格段に増えたことで、送金に時間がかかる通貨に変貌しました。これを解決すべくSegWitの導入が検討され、ついに導入に踏み切りました。

SegWitを実装したビットコイン(BTC)ですが、ユーザーや事業者がSegWitを使えるようにしなければ、送金手数料の問題は一向に解決しません。しかしSegWitを使えるようにしていないユーザーや取引所は意外に多いようです。その一因と考えられるのが、ビットコイン(BTC)のハードフォークコインの問題です。

仮想通貨の取引所であれば、SegWitの導入は真先にやらなければなりません。ところがこの準備を怠っているところは、ユーザー数が多い取引所に多いようです。特に昨年12月初旬の段階では、取引所の仕事はまだフォークコインの分配に費やされていたのではないでしょうか。

取引所だけではありません。ユーザーの関心もハードフォークコインに偏っていました。ユーザーもボーナスをきちんと受け取れるか心配だからです。ただ、取引所なのにSegWitへの対応が遅いところは、それ以外の対応も良くありません。取引所を選ぶ際は、SegWitの対応が早いところを選びたいものです。

意義なきハードフォークこそ控えるべき

またSegWitを用いた送金にも問題がありました。たとえば、SegWitに対応したビットコインアドレスに、誤ってビットコインキャッシュ(BCH)を送ってしまうケースです。この場合はSegWitに対応済みのアドレスから、ビットコインキャッシュ(BCH)が取り出せなくなる問題が発生しているようです。

この解決策として、ビットコインキャッシュ(BCH)側でアドレスフォーマットの変更を計画しているようです。ただ変更が整うのは数か月先とも言われており、それまでSegWitの利用は注意を払わなければなりません。

このようにハードフォークすること、またそこから生まれたフォークコインは、分裂元のコインに何かと影響を与えます。幸いビットコインキャッシュ(BCH)は、アドレスフォーマットの作成で協力していますが、その他のフォークコインが同じ対応をするかはわかりません。意義のないハードフォークは即刻止めてもらいたいものです。